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血の継承【改訂版】  作者: Salhi smail
第三章 任務始動編

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33/47

騎士庁

朝、騎士庁へと続く道は、アルマザのどこにでもある通りにしか見えなかった。


街はいつもの喧騒とともに目を覚ましていく。


扉が開き、荷車が石畳を鳴らし、兵士たちが小隊を組んで行き交う。学院の生徒たちも、まるで何事もなかったかのように訓練へ向かっていた。


だが、アルマザは試験で起きたことを忘れてはいなかった。


交差路を巡回する兵は増え、軍事施設の周囲には新たな衛兵が配置されている。公的施設へ入る者は、身分証と徽章を厳しく確認されるようになっていた。


それでも、ラカンが警戒しているものは、街の表面には見えなかった。


変わったのは、彼があらゆる角を見つめる目だ。


路地のひとつひとつが、何かの可能性に見える。


通り過ぎる顔のひとつひとつが、こちらを窺う目かもしれない。


そして、頭の奥にはシャミルの警告が残っていた。


「誰にでも開かれているからといって、道を信用するな」


ラカンは班に割り当てられた宿舎の門前で、生徒たちを待っていた。


最初に現れたのは、いつもどおりマヤだった。


訓練着ではなく任務用の服を身につけ、肩には小さな鞄を掛けている。足取りには期待が表れていたが、その目はすぐに宿舎の扉へ向いた。


ヤザンを待っているのだ。


次にシグランが来た。


両手を上着の懐に入れ、何もかも退屈だと言いたげな顔をしている。それは、彼があらゆるものから自分を守るためにまとう鎧のようなものだった。


ラカンの前で足を止める。


「今度こそ、本物の任務なんだろうな。歩くだけの訓練はもうごめんだ」


「正式な任務だ」


シグランは片眉を上げた。


「肝心なところに答えてない」


ラカンが返すより先に、扉が開いた。


ヤザンが姿を見せる。


数日前より歩き方は安定していた。だが、その足取りにはまだわずかな遅さが残っている。


胸元には、見習い騎士の徽章が丁寧に留められていた。部屋に置いてきたら、自分がそれを手にしたことまで世界に忘れられてしまう――そんなふうにも見えた。


ヤザンは静かに言った。


「準備できました」


ラカンはしばらく彼を見つめた。


「準備ができたことと、治ったことは別だ」


ヤザンはわずかに目を伏せる。


「分かっています」


ラカンは懐から、折り畳まれた書類を取り出した。


「非戦闘任務で、俺の監督下にいることを条件に、医師から許可が出た。無理はするな。閉じた経路を、自分から無理に開こうともするな。痛みや身体の重さを感じたら、すぐに言え」


ヤザンはうなずいた。


「はい」


シグランが冷ややかに言う。


「なるほど。初任務は手紙の配達と、自分自身から守らなきゃならない奴の護衛か」


マヤが振り向いた。


「シグラン!」


「何だ。正確に言っただけだ」


ヤザンは何も返さなかった。


ただ、鞄の紐を握る指に一瞬だけ力が入り、すぐに緩んだ。


ラカンはその動きを見た。


マヤも見ていた。


シグランは通りへ顔を背ける。


「ヤザンは足手まといじゃない」


ラカンが言うと、シグランは短く返した。


「そんなことは言ってない」


「だが、そう聞こえる言い方をした」


シグランは黙った。


ヤザンが小さく言う。


「大丈夫です」


ラカンの視線が、まっすぐ彼に向けられた。


「何もかも大丈夫なことにしなくていい」


ヤザンは顔を上げた。


だが、返す言葉は見つからなかった。


重くなりかけた空気を変えるように、マヤが尋ねる。


「それで……まずはどこへ行くんですか?」


ラカンは大通りを示した。


「騎士庁だ」


ヤザンが顔を上げる。


その名を聞いただけで、胸の奥が動いた。


騎士庁。


今度は試験を待つ生徒としてでも、群衆に紛れた見物人としてでもない。


見習い騎士として、初めての任務を受け取りに行くのだ。


たとえ、それが一通の手紙を届けるだけの任務だとしても。


「行くぞ」


ラカンの言葉とともに、四人は歩き出した。


          ◇


騎士庁は、ヤザンが想像していたよりもはるかに大きかった。


高い柱が並ぶ巨大な石造りの建物。その正面にはアルマザ帝国の紋章が刻まれ、その下には各氏族を表す小さな紋章が並んでいる。


外門には金属製の照合板を持った衛兵が立ち、周囲の露台や屋根にも兵士が配置されていた。


一行が到着すると、衛兵のひとりが前へ出た。


「入庁書類を」


ラカンは召集状とヤザンの医師許可証を差し出した。


衛兵は二枚の書類に目を通し、それから班員をひとりずつ確認する。ヤザンの前で視線を止めると、徽章に刻まれた識別印と本人の顔を照合した。


やがて、書類をラカンへ返す。


「本人の外出は、あなたの直接監督下に限り許可されています。容体に変化があった場合は、帰還報告書への記載を」


「了解した」


衛兵は書類に確認印を押し、脇へ退いた。


「お通りください」


建物の中では、大勢の騎士が絶え間なく行き交っていた。


封印された書状を抱える者。


重い鎧に身を包んだ者。


そして、外套を砂埃で汚したまま帰還する者。


まるで、歩いてきた道そのものを背負って戻ってきたようだった。


壁には大きな木製の掲示板が並び、任務命令書や街道図、監視拠点の名称、隊商や国境地帯に関する簡潔な報告が貼り出されている。


ヤザンは入口で足を止めた。


インクと革、鉄と砂埃の匂いが混ざり合っている。


建物全体が、ひとつの言葉を告げているようだった。


ここから、道が始まる。


「皇帝の宮殿にでも入ったような顔で立ち止まるな」


振り向きもせず、シグランが言った。


ヤザンは一歩踏み出す。


「そんな顔してない」


周囲を見回していたマヤが言う。


「でも、気持ちは分かる。すごい場所だもの」


ラカンは受付へ歩きながら答えた。


「ここは、紙に書かれた言葉が、騎士の歩く道に変わる場所だ」


そのとき、背後から聞き覚えのある声が飛んできた。


「最悪の偶然だな」


ヤザンは振り返らなくても、誰なのか分かった。


アミール・サーラン。


アドナン班と一緒に立っている。


隣にはナダ。その少し後ろには、いつものように影のような静けさをまとったアナスがいた。アドナン教官は別の受付で、職員から封印された書類を受け取っている。


アミールはヤザンの徽章を見て笑った。


「お前まで外に出してもらえたのか。次の任務は寝台の警備だと思ってたよ」


マヤの目が鋭くなる。


「同じことばかり言って、飽きないの?」


「こいつが変わったら、俺も言うことを変えるさ」


ヤザンは答えなかった。


ただ顔を上げ、アミールを見る。


その目に怒りはなかった。


アミールにとっては、怒鳴り返されるよりも、そのことのほうが気に障った。


シグランが冷たい声で言う。


「教官が近くにいないときに、もう一度言ってみろ」


アミールの表情が一瞬だけ変わった。


「脅してるのか?」


「違う。お前が黙るまでの最短経路を教えてやっただけだ」


ナダが二人の間へ出た。


「アミール、もうやめて」


「仲間に挨拶しただけだろ」


「あなたの挨拶は石を投げるのと変わらないわ」


その後ろで、アナスはヤザンを見ていた。


シグランでもなければ、腹を立てたアミールでもない。


ヤザンの目に残る、疲れたような忍耐を見ていた。


完全な弱さには見えない。


だが、はっきりとした強さとも呼べない。


二人の視線が重なった。


ヤザンは、気まずそうに小さく笑った。


自分が原因ではないのに、重くなった空気を詫びるような笑みだった。


アナスは目を伏せる。


なぜか、その笑顔は沈黙よりも彼を戸惑わせた。


そこへアドナン教官が戻ってきた。


アミールを見るなり、その後頭部を軽く叩く。


「ここは騎士庁だ。子供の遊び場じゃない」


アミールは頭を押さえた。


「先生!」


「もう一言しゃべったら、北の監視所で馬小屋掃除から始めさせる」


アミールはすぐに口を閉じた。


そこへ、アルダ教官の班が近くを通った。


ライド・オラセンは、いつもの自信に満ちた静けさを保っている。ラカンとアルダは、短く目礼を交わした。


アルダが言う。


「今日は全班が呼ばれているようだな」


「試験場の外で、どう動くかを見たいらしい」


アルダの目が一瞬だけヤザンに止まり、それから自分の班へ戻った。


何も言わなかった。


だが、事情は察したようだった。


そのとき、受付の職員がよく通る声で呼び上げた。


「アルマザ第三班」


ラカンが前へ進み、ヤザン、マヤ、シグランがその後ろに並んだ。


職員は封印された書状を机に置き、任務命令書をラカンの前へ差し出す。


「東槍駐屯地への封書輸送任務です」


書状の端に施された赤い封印を示す。


「宛先は駐屯地司令、ラシード・ガスカン隊長。通常の状況であれば、行程はおよそ四日。非戦闘任務であり、教官の直接監督下で実施されます。封印を解くことが許されるのは、受取人本人のみです」


ラカンは書状を受け取り、封印を丁寧に確認した。


東槍駐屯地。


四日間。


非戦闘任務。


すべてが、あまりにも都合よく整って見えた。


職員が尋ねる。


「任務を受諾しますか?」


ラカンは答えた。


「受諾する」


職員は班の記録簿に小さな印を押した。


「ラシード隊長から到着証明印を受け、騎士庁へ持ち帰ってください。街道には定期巡回隊が配置されていますが、不審な活動を確認した場合は帰還報告書への記載をお願いします」


「了解した」


ラカンは書状を胸元の鞄へ収め、その場を離れた。


最初に口を開いたのはマヤだった。


「先生、手紙を届けるのも騎士の任務なんですか?」


シグランが横から言う。


「そうなら、帝国にはもっと勇敢な伝書鳩が必要だな」


ラカンは彼を見る。


「見習い騎士が、いきなり戦場の指揮を任されることはない。最初は書状の輸送、小規模な隊商の護衛、近隣の巡回、それに危険が少ないと判断された拠点の警備だ」


そして、続けた。


「単純な任務だからこそ、戦いでは見えないものが分かる」


シグランが尋ねる。


「例えば?」


「規律。忍耐。警戒心。それから――誰にも称賛されない場所で、騎士がどう振る舞うかだ」


シグランの顔から、わずかに皮肉が消えた。


ラカンは三人を見渡す。


「任務は書状だけじゃない。封印を守り、互いを守り、正確な報告を持ち帰る。お前たちの階級に許されているのは、この任務までだ。勝手な冒険は含まれていない」


「はい、先生」


ヤザンが答えた。


マヤは少しためらってから尋ねる。


「私たちが見習い騎士なら……先生は、どの階級なんですか?」


ヤザンが興味深そうに顔を上げる。


退屈そうにしていたシグランまで、ラカンへ目を向けた。


ラカンの口元に、かすかな笑みが浮かぶ。


「いい質問だ」


マヤは答えを待った。


「それで?」


「必要になったときに教える」


マヤの肩が、分かりやすく落ちた。


そこへ、班を連れたアドナンが近づいてきた。


「俺たちは北の監視所へ向かう。アルダの班は西の街道だ。どうやら今日は、全員が歩くことを学ぶ日らしい」


ラカンが答える。


「歩くことは、嘘をつかない最初の訓練だ」


アドナンはヤザンを見て、遠回しな優しさを含んだ声で言った。


「長い道は、身体が自分を取り戻す時間にもなる」


その言葉が自分へ向けられたものだと気づき、ヤザンは敬意を込めて頭を下げた。


「できることをやります」


アドナンは笑みを見せた。


「それで十分だ」


アドナン班が歩き出す。


アナスは黙ったままだった。


だが、立ち去る直前に、もう一度ヤザンを見た。


今度はすぐに目を逸らさない。


「東の道は長い」


ヤザンは彼を見返した。


ただの言葉なのか、警告なのか分からなかった。


「分かってる」


アナスは一瞬ためらい、それから静かに言った。


「道端の石にまで、自分を証明しようとするな」


不思議な言葉だった。


だが、嘘はなかった。


アナスは口にしたことを後悔したように、仲間の後を追っていった。


ヤザンはしばらく、その背中を見つめた。


シグランが言う。


「あの無口まで、お前に忠告するようになったか」


「たぶん、いい忠告だよ」


マヤもうなずく。


「いい忠告よ」


そして、ラカンの後を追って物資支給所へ向かった。


班に支給されたのは、縄、火起こしの道具、包帯、水筒、保存食、そして正式な任務中であることを証明する小さな印章だった。


ラカンは封書を胸元の鞄に収め、誰にも預けなかった。


騎士庁の広場を出る前に、彼は足を止めて三人を振り返る。


「簡単に見える任務だ。だからといって、軽く扱うな」


マヤが答えた。


「はい」


シグランが尋ねる。


「何か起きると思ってるのか?」


ラカンは騎士庁の門へ目を向けた。


衛兵たちは、出入りする者を一人ずつ調べている。


「何も起きないときでも、騎士として行動しろ。そう言っている」


シグランは答えに納得していない様子だったが、それ以上は聞かなかった。


一行は東門へと続く道を進んだ。


城壁に近づくにつれて道幅は広がり、市場の喧騒が遠ざかっていく。


やがて、二基の石塔に挟まれた巨大な門が姿を現した。上部には弓兵と衛兵が配置されている。


検問所には、木箱を積んだ荷車が止められていた。


兵士たちは荷を一部降ろし、中身を確認してから通行を許可する。別の士官は、旅人たちの顔と名簿をひとつずつ照らし合わせていた。


ラカンたちの番になると、彼は任務命令書を差し出した。


衛兵は封印を確認し、その上に小さな金属片をかざす。


アルマザの紋章が淡い青色に光り、書類が本物であることを示した。


衛兵が顔を上げる。


「東槍駐屯地ですね?」


「ああ」


「夜明けに街道巡回隊が帰還しています。異常の報告はありません。次の検問所までは半日ほどです」


衛兵は書類を返し、通路を開けるよう合図した。


最初に門を出たのはラカンだった。


次にマヤ。


その後をヤザンが続く。


ヤザンは門の境目で、ふと足を止めた。


振り返る。


高くそびえる塔。


建物の向こうに、わずかに一部だけ見える学院。


それから、前方へ向き直った。


朝の光を浴びた街道が、遠くまで伸びている。


行き交うものは、彼方に見える数台の荷車だけだった。


隣を通り過ぎながら、シグランが言う。


「任務のたびにそんなふうに街へ別れを告げていたら、到着が一日遅れるぞ」


ヤザンはすぐに歩き出した。


「見てただけだよ」


前方からマヤの声が飛ぶ。


「二人とも、早く!」


ヤザンは思わず笑みを浮かべ、二人の後を追った。


先頭を歩くラカンの目は、街道から離れない。


不安を抱くようなものは、何ひとつ見当たらなかった。


だが、それだけでは彼を安心させるには足りなかった。


          ◇


騎士庁に近い建物の屋根で、騎士庁の整備係の服を着た男が煙突のそばに身を屈めていた。


胸元には、整備係の印が刻まれた本物の銅製徽章がある。


夜明けの身分確認を通り、正式な入口から入った男を疑う者はいなかった。


彼は道具箱を開いた。


だが、手に取ったのは道具ではない。


高い場所から、アルマザ第三班が東門を出るのを見ていた。


ラカン。


マヤ。


シグラン。


そして三人目の生徒――他の二人よりわずかに遅れながらも、一定の歩みを保つヤザン。


男は道具箱の底から小さな紙片を取り出し、短い一文を書いた。


『アルマザ第三班、東門より出発』


紙を折り畳み、箱の覆いの下に隠していた小さな黒い鳥の脚へ結びつける。


男は囁いた。


「任務が始まったと伝えろ」


鳥を放つ。


黒い翼は、毎朝騎士庁から飛び立つ伝書鳥の群れに紛れ、すぐに見分けがつかなくなった。


男は道具箱を閉じた。


そして、どの扉なら呼び止められないかを知る者の足取りで、屋根を後にした。


          ◇


アルマザから遠く離れた、昼の光さえ届かない部屋。


ライは片膝をついていた。


身体の一部は包帯で覆われている。


だが、その声を重くしていたのは、傷だけではなかった。


彼の前には、ひとりの男が立っていた。


闇に隠れた顔から見えるのは、静かな笑みの端だけ。


ライが低い声で言う。


「失敗しました」


男は動かなかった。


「安い言葉だ。もっと価値のあるものを話せ」


ライは膝の上で拳を握り締めた。


「ティルマラの名を使って侵入しました。アルマザ第三班まで到達し、標的もそこにいました」


「ザランの少年か?」


「はい。シグランです」


短い沈黙が落ちた。


男が尋ねる。


「なぜ連れ帰れなかった?」


ライは答えるまでに間を置いた。


あの瞬間を思い出したくはなかった。


「理解できないものがありました」


闇の中で、男の目がわずかに上がる。


ライは続けた。


「戻ったとき、ハルとキョウは倒れていました。シグランも、あの少女も……弱い少年も、その場にいました」


一度、言葉を切る。


「最初は、シグランが二人を倒したのだと思いました」


「それから?」


ライの声が低くなる。


「あの少年のいた方向から、何かを感じました。炎でも、水でもない。俺の知るどの経路とも違う。オーラは見えなかったのに、空気だけが急に重くなった」


一度、呼吸を止める。


「少年自身から出たのか、それとも近くに別の何かがいたのか……分かりません。ただ、もう一歩踏み出せば、それが最後になると感じました」


男は闇の中からライを見下ろした。


「少年が力を使うところを見たのか?」


「いいえ」


「お前に向かって動いたか?」


「いいえ」


「なら、お前はまだ何も知らない」


ライは頭を下げた。


「はい」


男は静かに言った。


「だが、問いを持ち帰った。それは、何も持たずに戻るより価値がある」


そのとき、壁の高い位置にある細い隙間から、黒い鳥が入ってきた。


扉のそばに控えていた別の男の腕へ止まる。


男は鳥の脚から紙片を外し、主人へ差し出した。


アズロンはそれを開いた。


短い一文へ目を通す。


『アルマザ第三班、東門より出発』


ライが尋ねる。


「あなた自身が動くのですか?」


アズロンは紙をゆっくりと折り畳んだ。


「試験場は狭すぎた。壁が多く、目はそれ以上に多い」


そして、ライの背後に広がる闇へ視線を向ける。


「だが道に出れば、人は自分が自由になったと思い込む」


わずかな間を置き、告げた。


「シグランが標的だ。それは変わらない」


ライはためらった後、尋ねる。


「もうひとりの少年は?」


「監視する」


「それだけですか?」


アズロンの顔に冷たい笑みが浮かんだ。


「感覚は事実じゃない。疑いは答えにもならない。お前が理解できないものを恐れたというだけで、弱い少年を脅威に仕立てるつもりはない」


ライは頭を下げた。


「承知しました」


アズロンはもう一度、紙片へ目を落とす。


「今回は、何かを奪う前に確かめる。標的の隣を歩いているものが、何なのかをな」


彼が背を向ける。


外套の端が闇の中で揺れ、まるで〈黒の帳〉そのものが彼に付き従っているように見えた。


その頃、アルマザ第三班は日の光の下を歩き続けていた。


彼らの初任務は、すでに始まっている。


そして、その背後では――危険もまた動き始めていた。

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