最初の狩り
森は、一部の生徒たちが想像していたほど騒がしくなかった。
それよりも、さらに悪かった。
静かだった。
死が許されている試験で、静けさは安全を意味しない。
高い木々の間では、どんな小さな音も脅威へ変わった。
葉の上へ落ちる雫。
遠くで折れる枝。
見えない足の下で擦れる草。
そして――叫び声が響いた。
短く。
遠く。
痛みだったのか。
恐怖だったのか。
それとも、死ぬ直前の最後の声だったのか。
誰にも分からない。
だが、複数の隊を足止めするには十分だった。
止まった隊もあった。
逆に速度を上げた隊もあった。
だが六番隊――カスナラは、その場から動かなかった。
三つの大岩の間。
カシム、マリアム、ヤーメンは、一番隊――アルマザを迎えるために用意した罠の中で待っていた。
中央にカシム。
右にマリアム。
左にヤーメン。
彼らは一番を追ってはいない。
場所を選び、相手をそこへ来させることを決めていた。
ヤーメンが道を見張りながら言う。
「進路を変えられれば、ここは通らない」
カシムが答えた。
「変える」
ヤーメンが彼を見る。
「なぜ分かる?」
マリアムは背後の岩へ手を置いた。
「正面の道を、分かりやすすぎるほど残したから」
カシムは二つの岩の間にある細い隙間へ目を向けた。
「最初の罠に気づけば、次は目立たない道を探す」
ヤーメンが言う。
「その道が、ここへ続く」
カシムは笑わなかった。
「その通りだ」
土へ足を固定する。
三人は同じリズムで呼吸を整え始めた。
吸う。
止める。
吐く。
呼吸を重ねるたび、岩の間の空気が重くなっていく。
地のケメンが薄い層となり、土の下へ広がっていた。
見えない。
動かない。
ただ、踏むべき足を待っている。
マリアムが言う。
「一番が近づいている」
カシムは動かなかった。
「入った瞬間には仕掛けるな」
道を見つめる。
「罠を全部見抜いたと思わせろ」
四番隊は、叫び声など聞こえなかったかのように歩いていた。
エヴリン・ストロムは静かな足取りを崩さない。
クララ・テフィールドは時折屈み、地面へ触れる。
ルーカス・ヴァイルは、退屈を感じる無言の壁のように二人の後ろを歩いていた。
ルーカスが言う。
「塔には近づいたか?」
クララは木の幹へ掌を当て、目を閉じた。
「ええ」
「なら、そっちへ行こう」
エヴリンは答えなかった。
クララがゆっくり目を開く。
「三人がここを通った」
ルーカスが眉を上げた。
「一隊か?」
「違う」
幹に残る傷へ、もう一度指を置く。
「足跡同士の距離が、普通の動きでは届かないほど離れている」
ルーカスが言う。
「改造経路か」
クララは頷いた。
「でも不安定」
エヴリンが跡へ近づく。
一つ目の足跡。
長い空白。
そして、遠い幹の向こうに現れる次の足跡。
エヴリンが言った。
「塔へ向かっていない」
ルーカスが反対方向を見る。
「公式の相手へも向かっていない」
クララが続ける。
「札を追っていない」
短い沈黙が落ちた。
ハガリスは、最短の道を選ぶことができた。
先に塔へ到着し、四番を守り、任務を終えることもできた。
だがエヴリンは進路を変えた。
ルーカスが言う。
「塔は逆だ」
「知っている」
「制限時間は?」
「足りる」
ルーカスは彼女の背中を見る。
「今度は何を追う?」
エヴリンは振り返らずに答えた。
「番号を追わない者」
クララが後ろへ続く。
ルーカスはため息をついた。
それから二人を追った。
ハガリスには対戦相手が与えられなかった。
だが森の中で、正式な対戦よりも危険なものを見つけた。
一番隊は慎重に進んでいた。
先頭にラーイド。
後ろにアスマー。
ワーイルは二人の間で、空よりも道を注意深く見ている。
ラーイドが言う。
「跡はここから曲がっている」
アスマーが答える。
「ええ。でも風はそちらから来ていない」
ワーイルが突然止まった。
正面の木を見ているのではない。
根の下にある地面を見ていた。
小さな声で言う。
「そこを踏まないで」
ラーイドが見る。
「何を見た?」
ワーイルは落ち葉を指した。
「多すぎる」
アスマーが屈む。
上の葉を手で退ける。
丁寧に隠された浅い穴が現れた。
致命的ではない。
だが体勢を崩し、背中を晒すには十分だった。
アスマーが言う。
「罠」
ラーイドはワーイルを見る。
褒めなかった。
ただ言う。
「俺より先に見つけたな」
ワーイルが顔を上げる。
「気のせいかと思った」
ラーイドが答える。
「この試験では、命を救う思い違いのほうが、死なせる自信よりましだ」
脇道を見る。
目立たない。
一見すれば、より安全に見えた。
ラーイドが一歩向かう。
だが、ワーイルが再び止まった。
ラーイドが聞く。
「今度は何だ?」
ワーイルは土を指した。
「こっちも、俺たちのために選ばれている」
アスマーが近づく。
一度目を閉じる。
岩の間を弱い風が通り、再び彼女の顔へ戻った。
「空気が反対側へ抜けていない」
ラーイドは正面の細い隙間を見る。
道に見えた。
だが、三つの岩の間で終わっている。
ラーイドが言う。
「カスナラは、そこで待っている」
ワーイルが唾を飲む。
「どうする?」
ラーイドは岩の斜面へ顔を上げた。
「開けてもらった扉からは入らない」
横へ動く。
「自分たちで扉を作る」
アルダ隊は、まだ札を手に入れていなかった。
だが狩りが閉じる前に、その場所を見抜いていた。
ジャラルは、もう少しで我慢を失いそうだった。
「跡は目の前だ。なぜ止まる?」
サーレムは答えなかった。
湿った土に残る、薄い足跡の前へ立っていた。
美しく。
規則的で。
追う者へ、はっきり伝えている。
ここを通った。
ヌーリヤが地面へ屈む。
「五番は正確に動いている」
指で足跡をなぞる。
「でも、正確すぎる」
ジャラルが顔をしかめる。
「手練れなのが悪いのか?」
サーレムが言った。
「難しい土地にある簡単な道は、すぐには進まない」
足跡を見る。
「調べる」
ヌーリヤが道の横の草を指す。
「足は、ここを通ったと言っている」
次に、高く盛り上がった根へ手を動かす。
「でも身体は、別のことを言っている」
サーレムが近づく。
ヌーリヤは落ち葉を少し退けた。
近くの幹に細い傷。
根の上には、小さな圧力の跡。
サーレムが言う。
「曲がったな」
ジャラルが拳を握る。
「俺たちを騙したのか?」
サーレムが答えた。
「騙す者は、普通なら自分から遠ざけたい」
偽の跡を見る。
「こいつらは、俺たちを遅らせたかった」
短い沈黙。
そして言う。
「用意された道は追わない」
森の奥へ顔を上げる。
「なぜ、この跡を残したかを探す」
ビスカラは札を得ていない。
だが疑うことを得た。
根に覆われた斜面の上で、七番隊が足を止めた。
右には二番の跡。
左には、同じ異様な跡。
セイラは木の上の小さな傷を調べていた。
後ろにマシン。
ユーバは二つの道を見ている。
ユーバが言う。
「二番は右だ」
マシンが続ける。
「改造経路は左」
セイラが傷を指でなぞった。
「同じ使い方」
ユーバが聞く。
「ティゾラの技術か?」
「ええ」
地面の一点を指す。
「ここで、関節の中へケメンを押し込んだ」
次に、根の上の跡。
「そして、自然な経路へ戻る前に切った」
マシンが言う。
「身体を傷つける」
セイラが答えた。
「それ以上よ」
ゆっくり立ち上がる。
「痛みを、動きの一部として身体へ覚えさせる」
ユーバは黙った。
改造経路はティゾラの力の基礎だった。
だがセイラが見たものは、統制された訓練ではない。
もっと苛烈な何かだった。
マシンが聞く。
「二番を捨てるか?」
ユーバはアミールたちの跡を見る。
はっきりしている。
偶然にしては、はっきりしすぎている。
「いや」
マシンが眉を上げる。
ユーバは二つの道を指した。
「二番はここを通った」
次に改造経路の跡。
「こいつらは、その後ろを通った」
セイラが言う。
「会ったのかも」
ユーバが答える。
「あるいは、これから会う」
右へ進む。
「標的の近くにいる」
そして付け加える。
「標的を追う者も見る」
ティゾラ隊は走り出した。
任務を捨てたわけではない。
だが、まだ知らない何かへ近づいていた。
アミールは、地面そのものを壊したいかのように歩いていた。
ナダは負傷した肩を押さえている。
アナスは、ハルの手が赤い跡を残した首へ指を滑らせていた。
アミールが突然言う。
「追いつく」
ナダが聞く。
「ティルマラに?」
「奴らが何者でもだ」
アナスが言う。
「今追えば、二度目の勝利を与えることになる」
アミールが止まる。
「何だと?」
アナスは目を上げた。
「お前を倒した」
一度言葉を切る。
「そして残した」
「七番を捨てて奴らを追えば、二度負けたことになる」
アミールの指へ弱い雷が瞬いた。
すぐに消える。
ナダが疲れた声で言う。
「札はまだ私たちにある」
森を見る。
「ティゾラも、まだ私たちを追っている」
アミールは胸の二番へ目を下げた。
拳を握りしめる。
「分かった」
アナスが言う。
「最初と同じように突っ込むな」
アミールが鋭く顔を上げる。
「俺に戦い方を教えるのか?」
「相手がお前をどう見ているかを使う」
アミールが答える前に、アナスが手を上げた。
三人が黙る。
道の左側で影が動いた。
アナスが低く言う。
「来た」
最初にセイラが高い根の上へ現れた。
隣にマシン。
ユーバは二本の木の間から出た。
胸には七番。
彼らを見ても驚いてはいなかった。
ユーバが言う。
「もっと速く動き続けると思っていた」
アミールは痛みの中で笑った。
「もっと隠れると思っていた」
セイラは三人の身体に残る打撃の跡を見ていた。
「別の隊と戦った」
ナダが答える。
「正式な相手ではない」
ユーバの目が二番へ動く。
「だが、札は残した」
アミールが言う。
「期待外れだったんだろう」
アナスが小さく言う。
「アミール」
合図を理解した。
アミールが手を上げる。
腕の周りに雷が一気に燃え上がった。
ユーバへ突進する。
均衡の取れた攻撃ではない。
速く。
騒がしく。
真っすぐ。
ティゾラが予想した通りに。
セイラが言う。
「今」
マシンが横から動く。
ユーバは雷を避け、アミールの胸へ入った。
狙いは札。
ナダが後ろへ下がる。
肩の痛みに耐えながら、手を上げた。
弱い光が放たれる。
誰かの目を潰すほどではない。
だが、セイラはその後ろにあるものを見た。
ナダの影が地面へ伸びる。
素早く叫ぶ。
「影!」
半瞬遅かった。
アナスがナダの影から現れる。
ユーバの後ろではない。
ユーバとアミールの間。
手には影の剣。
今度は短く。
より濃く。
より正確だった。
刃をユーバの身体へ向けない。
札の帯を切る。
マシンが振り向いた。
だが、その手が届く前にアナスは消えた。
ナダの後ろへ現れる。
拳には七番。
全員が止まった。
ユーバは空になった胸を見る。
それからアミール。
アミールの顔へ、疲れた笑みが浮かぶ。
「俺は餌だった」
ユーバが静かに答えた。
「分かっていた」
アミールの表情が変わる。
「何?」
ユーバはアナスを見る。
「だが、気づくのが遅かった」
マシンが腕を下げた。
セイラは、アナスの首に残る跡を見続けていた。
「あなたたちを襲った者は……」
アナスは黙る。
セイラが続ける。
「一人が、ティゾラの改造経路を使っていた」
アミールが言う。
「話している場合じゃない」
アナスの手の札を強く見る。
「お前たちは負けた」
ユーバは反論しなかった。
七番を見る。
そして、自分たちが来た道へ目を向ける。
「そうだ」
正式には敗北だった。
だが、彼の関心は札だけにはなかった。
アナスへ言う。
「三番の近くにいれば、また奴らと会う」
アナスの目がわずかに固まる。
「なぜ三番だ?」
セイラが答えた。
「跡が向かっている」
ナダが聞く。
「何者なの?」
ユーバは背を向けた。
「俺たちの技術を、任務が終われば捨てる道具のように身体へ使う者たちだ」
ティゾラ隊が離れ始める。
アミールが言う。
「どこへ行く? もう終わっただろ」
ユーバが半歩だけ止まる。
「俺たちの試験は終わった」
奥を見る。
「中で起きていることは終わっていない」
そして歩き続けた。
二番隊はその場に残った。
札はアナスの手にある。
正式には成功した。
だが勝利の味は完全ではなかった。
アミールが言う。
「取ったのに……勝った気がしない」
アナスは三番へ続く道を見る。
「俺たちを倒した者は、俺たちと戦っていなかったからだ」
三番隊はサティランの跡を追っていた。
だがイザンには、その跡が逃げているようには感じられなかった。
導いていた。
地面を見ながら言う。
「分かりやすすぎる」
シグランが答えた。
「いい。近い証拠だ」
イザンは顔を上げる。
「近いと、思わせたいのかもしれない」
マヤが止まった。
正面には、木々の間を抜ける細い道。
高く盛り上がった根。
小さな岩。
その先を隠す多くの角度。
マヤが言う。
「餌ね」
シグランが眉を上げる。
「なら捨てるか?」
イザンが答える。
「捨てれば、跡を失う」
シグランが皮肉る。
「餌だと分かった上で入るのか」
二人を見る。
「見事な作戦だ」
マヤが言う。
「違う」
目を道へ固定する。
「なぜ置いたかを理解して入る」
シグランが一歩前へ出る。
「出てきたら、俺が相手をする」
マヤが言った。
「それが問題」
彼が振り向く。
「何だと?」
「あなたは、正面に出てきた者しか見ない」
短い沈黙。
シグランは笑いそうになった。
だが笑わない。
苛立って言う。
「早く話せ」
マヤが道を指す。
「一人が正面から入る」
次に右側。
「一人が回り込む」
そしてイザンを見る。
「あなたは、全体が見える場所へ残る」
シグランが言う。
「俺を餌にするのか?」
イザンが答えた。
「演技は、あまり必要ないと思う」
シグランが鋭く睨む。
マヤがすぐ言った。
「あなたの突進が役立つのは初めてよ」
片眉を上げる。
「台無しにしないで」
シグランは顎を固くした。
「侮辱なら下手だな」
「作戦よ」
シグランが道へ入る。
怒りを演じなかった。
自信も演じなかった。
そのままのシグランだった。
だから餌は成功した。
左側からリアンが閃光のように飛び出し、退路を断つ。
正面からファリス。
胸には八番。
ムラドは反対側から現れ、シグランとマヤの間を閉じた。
ファリスが言う。
「入るのが早かったな」
シグランが笑う。
「出てくるのが遅かった」
手から炎が爆発する。
ファリスは届く前に動いた。
大きな一歩。
地面を蹴る。
短い回避。
炎が肩のそばを通り過ぎる。
同時に、リアンがシグランの札へ突進した。
「シグラン!」
マヤが手を上げる。
土の中の水分を引き出し、リアンの足元の根へ薄く広げた。
転びはしない。
だが速度が一瞬崩れる。
シグランが手から離れた。
リアンは体勢を戻す。
「賢いね」
マヤが答える。
「あなたは速すぎる」
ムラドがマヤの前へ入った。
水が彼女の腕の周りへ集まる。
そのまま防御へ打ちつけた。
ムラドは半歩下がる。
それでも動かなかった。
ケメンでは、彼女より強いわけではない。
だが身体と立ち位置だけで道を塞いでいた。
ラカン隊は罠の中にいた。
シグランはファリスとリアンに拘束されている。
マヤはムラドの前から動けない。
イザンは後ろで、止められる以上のものを見ていた。
ファリスが動きながら言う。
「お前たちは、隊として動いていない」
シグランは答えない。
攻撃した。
ファリスが下がる。
そして再び踏み込む。
毎回、最初の一歩で札を守る。
だが二歩目の直後。
方向を変える前のほんの一瞬だけ、胸が開いた。
イザンは見た。
一度。
そして二度。
叫ぶ。
「最初じゃない!」
戦いの音が声を飲んだ。
さらに大きく言う。
「二歩目! 二歩目の後だ!」
マヤには聞こえた。
すべては理解できない。
だが、十分だった。
ムラドを直接攻撃する代わりに、足元へ水を押し込む。
倒せない。
だが、体重を固定させた。
同時にファリスが踏み込む。
一歩目。
二歩目。
イザンが叫ぶ。
「今!」
長い作戦ではなかった。
一つの言葉。
濡れた地面。
そして、正しい瞬間を得た怒り。
ファリスが踏み込んだ瞬間、シグランが身体を回す。
殴らない。
防御が開いた胸へ手を伸ばした。
帯を引き裂く。
八番を奪い取った。
全員が止まった。
リアンは根の上で動きを止める。
ムラドが腕を下ろす。
ファリスは空になった胸を見る。
そして、シグランの手の札。
少しして言う。
「お前たちは、噛み合っていなかった」
シグランが眉を上げる。
「それがサティランの負け惜しみか?」
ファリスは首を振った。
「違う」
三人を見る。
「だが最後の瞬間だけは、互いの声を聞いた」
シグランは黙った。
マヤは荒く呼吸していた。
イザンは二人の後ろに立ち、緊張で胸を上下させている。
綺麗な勝利ではない。
完全でもない。
だが三人の勝利だった。
イザンが型を見つけた。
マヤが瞬間を作った。
シグランが実行した。
マヤが小さく言う。
「よくやったわ」
シグランが素早く振り向く。
「子供みたいに言うな」
「なら、褒められて驚いた顔をしないことね」
イザンは、もう少しで笑いそうになった。
森へ入って初めて。
三人の間で何かが、正しい方向へ動いた気がした。
その時、声がした。
「見事だ」
全員が振り向く。
木々の間にライが立っていた。
後ろではハルが笑っている。
キオは退屈そうに指を鳴らしていた。
九番の札は持っていない。
偶然ここへ来たようにも見えなかった。
ライが言う。
「欠けた隊でも、成功することはあるらしい」
シグランが札を強く握る。
「ティルマラか」
ハルが笑う。
「今日だけな」
マヤが手を上げた。
指の周りへ水が集まる。
「近づかないで」
キオがシグランを見る。
「始めるか?」
ライは答えなかった。
見ているのはシグラン。
八番の札ではない。
シグランが言う。
「番号が欲しいなら、遅かったな」
ハルが首を傾げた。
「番号?」
キオが言う。
「俺たちが取るのは金属じゃない」
イザンは、空気が重くなるのを感じた。
ビスカラを探さなかったナドラン。
追跡に見えなかった跡。
倒されたのに、札を残されたアミール隊。
イザンが言う。
「お前たちは……勝つつもりがない」
ライの目が彼へ移る。
「よく見ている」
褒め言葉ではない。
脅しだった。
ファリスが一歩下がる。
逃げるためではない。
隊形を戻すため。
リアンが隣へ移り、ムラドが二人の前へ出た。
サティランも理解した。
これは、もう試験の一部ではない。
シグランが聞く。
「何者だ?」
ライは名乗らなかった。
黒の帳の名も出さない。
わずかに手を上げる。
そして言った。
「ザランの少年を、生きたまま確保しろ」
その瞬間、八番の札は何の意味も持たなくなった。
成功こそが罠だった。
本当の狩りが始まった。




