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血の継承【改訂版】  作者: Salhi smail
第一章 アルマザ学院編

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14/24

班が聞き始めた時


イザンは灰色の旗の根元に倒れ込み、木の支柱へ指を絡ませていた。


肋骨を押す痛みは強く。


呼吸することさえ、戦いになっていた。


アナスが言う。


「長くは止められない」


イザンは顔を上げた。


視界が揺れている。


それでも、後ろから近づくマヤが見えた。


その後を追うアミールも。


アナスを長く止める必要はない。


あと一瞬。


それだけ遅らせればいい。


途切れる声で言った。


「長くは……要らない」


アナスの目が変わる。


意味を理解した。


手が旗の布へ向かう。


その瞬間。


イザンが叫んだ。


「右!」


誰に向けた警告なのか、説明する必要はなかった。


マヤには届いた。


イザンを振り返らない。


確かめるために迷うこともない。


示された方向へ手を伸ばした。


細い水の筋がアナスと旗の間へ飛び込む。


指が布へ届くより先に、手首へ巻きついた。


腕が横へ引かれる。


水の拘束は、長くアナスを止められるほど強くはない。


だが、旗へ触れる瞬間を壊すには十分だった。


マヤが到着する。


身体を回し、水をアナスの手首から足元の地面へ伸ばした。


完全に閉じられる前に、アナスは後ろへ退く。


次の瞬間。


アミールが追いついた。


手から火花が飛び、マヤの背中へ向かう。


イザンには見えた。


「後ろ!」


マヤは頭を下げた。


雷が肩の上を通り、木の障害物へ当たる。


アミールへ振り返ることなく。


後方へ短い水の波を放つ。


両脚へ当たり、後退させた。


アミールが苛立った声を上げる。


「そいつの命令を聞くようになったのか?」


マヤは旗とアナスの間へ立った。


「危険が見えている人の声を聞いているだけ」


アミールはイザンを見る。


まだ地面に倒れたまま。


誰かへ指示を出す権利などない者のように見えた。


鼻で笑う。


「こいつが?」


アナスが静かに言った。


「ああ」


アミールが振り向く。


だが、アナスは説明しなかった。


目はイザンへ向いている。


一度目。


自分が選んだ道を読んだ。


二度目。


マヤ自身より先に、背後から来る攻撃を見つけた。


戦ってはいない。


それでも、存在するだけで戦っている者たちの動きを変え始めていた。


     ◆


反対側では。


シグランの炎とライドの炎がぶつかっていた。


シグランの炎は激しい。


腕の周囲へ広がり、前方の空気まで押し出している。


ライドは炎を身体の近くへ保ち。


必要な場所へだけ動かした。


シグランが右の拳で踏み込む。


ライドは後ろ足を固定する。


攻撃が届く直前。


肩を回し、シグランの前腕を外側へ押した。


そのまま短い一撃を脇腹へ入れる。


シグランは後ろへ下がった。


強くは当たっていない。


だが、届いた。


ライドが言う。


「もう一度だ」


シグランの目が燃える。


「教えるような態度を取るな」


「教えてはいない」


ライドは拳を上げる。


「毎回、間違いを見せているだけだ」


シグランが再び飛び出す。


今度は途中で方向を変えた。


炎が脚の周囲へ回る。


横からライドを狙う。


ライドは腕を上げた。


炎が衝突する。


半歩下がる。


袖に焼け跡が残った。


シグランが笑う。


「見たか?」


ライドは跡を見る。


そして、目を上げた。


「一撃だけ変えたことは見た」


シグランの笑みが消える。


ライドが言った。


「考えるために、毎回侮辱される必要があるのか?」


炎がさらに強まる。


訓練場の外。


ラカンは目を細めた。


アルダが小さな声で言う。


「まだ安全範囲内だ」


ラカンが答える。


「分かっている」


だが、安心しているようには見えなかった。


     ◆


青い旗の前。


ワイルは、もう一度進もうとしていた。


アスマーはナダを相手にし、風でワイルの道から遠ざけようとしている。


「今よ、ワイル!」


走り出す。


旗は近い。


布の糸が風で動く様子まで見える距離。


だが、遠くにいたアミールが気づいた。


手を上げる。


長い火花が訓練場を横切った。


ワイルには近づいてくるのが見えた。


身体が固まる。


外から聞こえる生徒たちの叫び。


視界を満たす雷。


決断するより先に。


両手から氷が飛び出した。


厚い壁が目の前に立ち上がる。


雷がぶつかる。


表面へ亀裂が走った。


だが、火花は通らない。


ワイルは氷を見る。


先ほど作った壁より大きい。


さらに硬い。


アスマーが叫ぶ。


「止まらないで!」


壁の後ろで動く。


押しながら走った。


ナダが近づく姿を見る。


アスマーとの戦いを離れ、光の速さでワイルへ向かう。


横から風が遮る。


だが、一部を突き破って届いた。


足で氷の壁を蹴る。


端が砕けた。


ワイルは息を呑み、下がる。


ナダが言う。


「届かせない」


旗を見る。


あと二歩。


だが、ナダが前にいる。


両手が震えた。


「諦めて」


ワイルは唾を飲み込む。


そして両手を上げた。


ナダの足元に氷が現れる。


気づくのが遅れた。


地面が凍り、足が滑る。


倒れはしない。


だが、両腕を広げて均衡を戻すしかなかった。


ワイルが横を通り抜ける。


旗へ手を伸ばした。


最後の瞬間。


アミールが、もう一つ火花を放つ。


肩へ当たった。


身体が回り、円の境界近くへ倒れる。


指を伸ばす。


布まで、腕一本分もない。


だが、届かなかった。


審判が叫ぶ。


「ワイル・イヴェルセン、攻撃区域から退出!」


ワイルは地面を拳で叩いた。


顔にあったのは痛みではない。


自分への怒りだった。


最初の機会に、アスマーがそばへ来る。


「あと少しだった」


ワイルは息を切らしながら答えた。


「でも、届かなかった」


アスマーは、まだ地面へ残る氷を見る。


「今回は、恐怖で足が止まらなかった」


ワイルも、自分が作ったものを見る。


勇敢だったとは思えない。


それでも初めて。


恐怖は、ただの檻ではなかった。


力が通る道にもなっていた。


     ◆


灰色の旗の前。


アナスがマヤと向かい合う。


隣にはアミール。


マヤの後ろでは、イザンが旗の支柱へ手をつきながら、ゆっくり立ち上がっていた。


マヤは振り向かずに尋ねる。


「立てる?」


「うん」


声を聞けば、うまく立てていないことは分かった。


だが、問い詰めなかった。


アミールが言う。


「二対二になったな」


イザンを見る。


「いや。一人と半分に対して、二人か」


マヤの手が動く。


周囲へ水が立ち上がった。


「近づいて確かめれば?」


アミールが笑う。


雷が走る。


同時に、アナスが反対側へ動いた。


イザンは肩の傾きを見る。


旗へ真っすぐ向かっているのではない。


マヤを横へ動かす。


そして、アミールの道を開くつもりだ。


「マヤ、追わないで!」


マヤの足が止まった。


アナスが横を抜ける。


だが、マヤは振り返らない。


代わりに、アミールの前へ水の壁を上げる。


雷がぶつかる。


アナスが背中の隙を狙った瞬間。


水の壁の下から、別の細い流れが伸びた。


足首へ巻きつく。


アナスはイザンを見る。


仕掛けを読まれていた。


完全に固定される前に、素早く足を抜く。


だが、下がるしかない。


アミールが叫ぶ。


「そいつの言葉を聞くな!」


マヤが返す。


「なら、彼の言う通りに動くのをやめたら?」


アミールが怒って飛び込む。


マヤが迎え撃つ。


後方では、イザンがアナスを見続けていた。


アナスが左へ動く。


イザンも動く。


右へ戻る。


イザンは追いかけない。


旗へ続く道が、自分を通らなければならない位置へ残った。


アナスが止まる。


「俺を追っていないな」


イザンが答える。


「旗を追ってる」


強い言葉ではなかった。


だが、喉で引っかからずに言えた。


アナスの顔へ、かすかな変化が浮かぶ。


完全な笑みではない。


「いい」


そして飛び出した。


     ◆


今回は、目を向けた方向へは動かなかった。


肩を右へ落とす。


最後の瞬間に左へ回る。


イザンが気づいたのは遅かった。


遮ろうとする。


アナスは横を抜けた。


手を旗へ伸ばす。


マヤが叫ぶ。


「イザン!」


アナスへ追いつくことはできない。


だが、別のものが見えた。


旗を地面へ固定する縄。


マヤの足元近くを通り、根元へつながっている。


「縄!」


マヤが理解する。


地面へ水を放った。


流れが縄へ巻きつく。


強く引く。


旗全体が後ろへ傾いた。


アナスの手から遠ざかる。


指が布の前を通る。


触れない。


一瞬、アナスの均衡が崩れた。


イザンはその瞬間を使う。


横から身体をぶつけた。


二人が倒れる。


審判が叫ぶ。


「旗への接触なし!」


訓練場から声が上がった。


イザンへの歓声ではない。


作戦が成功したことへの驚きだった。


最初に立ち上がったのはアナス。


濡れた縄を見る。


次にマヤ。


そして、イザン。


「お前一人の考えではなかったな」


マヤが答える。


「彼が見つけなければ、できなかった」


アナスはイザンへ手を差し出した。


イザンはためらう。


それから手を取った。


アナスが引き上げる。


アミールが状況を理解するより先に。


審判が手を上げた。


「時間終了!」


攻撃が止まる。


火花が消える。


生徒たちが旗から離れる。


シグランだけは。


拳を下ろすまで、もう一瞬必要だった。


     ◆


審判は訓練場の中央へ立った。


「第一ラウンド終了!」


教師たちは三本の旗を見る。


一本も落ちていない。


審判が言う。


「旗の獲得点はなし」


そして、班ごとの得点を発表する。


「アルダ班は、自分たちの旗を守った防衛点が一点」


「ワイルが青い旗の攻撃区域へ到達したため、攻撃圧力点が一点」


ワイルは地面を見る。


旗へ届いた点ではない。


それでも、本当に近づいた証拠だった。


「アドナン班は、防衛点が一点」


「アナスが灰色の旗へ二度到達したため、攻撃圧力点が一点」


アミールが笑う。


「旗を取った扱いにするべきだろう」


審判が答える。


「誰も触れていない」


そして第三班を見る。


「ラカン班は防衛点が一点。灰色の旗は落ちなかった」


イザンは、まだ掲げられている布を見る。


あと少しで落ちていた。


だが。


落ちなかった。


審判が言う。


「短い休憩の後、第二ラウンドを開始する」


各班が自分たちの区域へ戻った。


     ◆


ラカン班は、灰色の旗の近くへ集まった。


シグランがすぐに言う。


「次のラウンドでは、俺とライドの間へ入るな」


マヤが見つめる。


「最初から入っていない」


「なら、そのままでいろ」


「あなたが離れたせいで、旗は二度も落ちかけた」


シグランは旗を見る。


「落ちなかった」


イザンが思わず言った。


「でも、落ちかけた」


シグランが振り向く。


イザンの声が、一瞬内側へ引いた。


だが、マヤが言う。


「その通りよ」


シグランが答える。


「二人の意見は聞いていない」


マヤが一歩前へ出た。


「それが問題なの」


表情が鋭くなる。


「問題は、お前たちがアナスとアミールを倒せなかったことだ」


マヤが言う。


「倒す必要はなかった。旗を守る必要があった。そして、守った」


「ぎりぎりでな」


「二人しかいなかったから」


シグランはライドのほうを見る。


マヤが言った。


「まだ、聞いていない」


視線を戻す。


指の周囲に弱い炎が現れ。


すぐ消えた。


「ラカンの言葉を俺へ使うな」


「なら、毎回証明しないで」


重い沈黙が落ちる。


イザンは二人の間に立ち。


何をすればいいのか分からなかった。


だが、言った。


「ライドは、君を自分のところへ残したいんだ」


シグランが見る。


イザンは、以前より少ない迷いで続けた。


「怒らせるたびに……旗から遠くなる」


シグランは答えない。


「止めてるだけじゃない。忘れさせてる」


シグランの顔で、何かが動いた。


否定したかった。


だが、ライドの言葉を思い出す。


忘れたのは、お前だ。


マヤが言う。


「次は、旗の近くに残ってとは言わない」


赤い道を指す。


「ライドへ行きたいなら行って。でも、私たちが呼んだ時は後ろを見て」


シグランが皮肉を浮かべる。


「それだけか?」


「今は、それだけ」


シグランはイザンを見る。


「お前は?」


「アナスを見る」


「止められない」


「分かってる」


今度は恥じることなく言った。


そして続ける。


「でも、どこから来るかをマヤへ伝えられる」


マヤはイザンを見る。


「私は信じる」


短い言葉だった。


だが、イザンは顔を上げた。


確かめるとは言わなかった。


たぶんとも。


信じる。


そう言った。


シグランは二人を見る。


自分が中心ではない合意が気に入らない。


だが、答える前に審判が白い旗を上げた。


「第二ラウンド、準備!」


     ◆


反対側。


最後の指示時間に、アルダが班の前へ立っていた。


ライドへ言う。


「また来る」


「分かっています」


「自分の目標にするな」


ライドは青い旗を見る。


「旗が先です」


アルダはワイルを見る。


「近づいた」


ワイルが答える。


「失敗しました」


「失敗しか見なければ、同じ道を進む方法も分からない」


次にアスマーを見る。


「もう一度、道を開け」


彼女は頷いた。


アドナン班では。


アミールが言う。


「同じ作戦で行く」


アナスが答える。


「違う」


アミールが振り向く。


「なぜ?」


アナスはイザンを見る。


「理解された」


「何も理解していない。動いたのはマヤだ」


アナスが遮る。


「どこへ動くべきか、彼が知らせた」


アミールは黙った。


アナスが続ける。


「今回は、動きの中で目標を変える」


「旗へ圧力をかけてから、反対側からナダを走らせる」


ナダが言う。


「でも、私は守りに残らないと」


「アスマーは右から来る。守るために戻ったと思わせて、訓練場を横切れ」


アドナンは彼らを見ていた。


意見は言わない。


指示時間は、すでに終わっていた。


     ◆


開始の合図が下りた。


各班が動く。


シグランは、再びライドへ向かう。


だが今回は。


遠く離れる前に、一度だけ後ろを見た。


旗のそばにマヤ。


石柱を見ているイザン。


そして、前へ戻る。


マヤは気づいた。


ラカンも。


誰も何も言わなかった。


赤い側で、ライドが言う。


「戻ったか」


シグランが答える。


「終わっていない」


「俺もだ」


再び、炎がぶつかる。


     ◆


アミールは第一ラウンドと同じように、マヤへ向かった。


だがアナスは、すぐには消えない。


後ろへ一瞬残り。


はっきり見えるように、右へ動いた。


イザンには見えた。


分かりやすすぎる。


「違う」


マヤは雷を迎える準備をしながら尋ねる。


「何が?」


イザンは目を動かす。


ナダは青い旗の近くでアスマーと向き合っている。


ワイルは障害物の後ろを進んでいる。


アナスは右側に姿を見せている。


なら。


旗へ来るのは誰だ?


ナダがシグランを見る。


次に、旗の間にある道。


ラカンの言葉を思い出す。


攻撃を見るな。


身体がそれを決めた瞬間を見ろ。


ナダの足は、アスマーへ向いている。


だが、体重は別の方向へ飛び出す準備をしていた。


「ナダ!」


マヤは説明を待たなかった。


手を地面へ下げる。


水が左の通路へ長く伸びた。


同時に。


ナダの足元へ光が爆発する。


アスマーを離れ、灰色の旗へ走る。


足が水へ入った。


滑る。


だが、倒れない。


光を使って濡れた場所を跳び越えた。


速い。


イザンでは追いつけない。


「二つ目の障害物!」


マヤが理解する。


近くの木製障害物へ水を動かす。


それを固定する縄を濡らした。


イザンは両手で縄をつかみ、引く。


障害物が動く。


ナダの前へ横向きに倒れた。


止まれない。


跳び越える。


だが足が端へ触れた。


進路が崩れる。


旗の境界へ着いた。


しかし、布へ手を伸ばす代わりに転がるしかなかった。


イザンが目の前へ立つ。


ナダが驚く。


「また、あなた?」


答える言葉はなかった。


ナダが飛び出す。


肩が動くのを見た。


「左!」


マヤ自身が動くより先に。


左側から水が飛んだ。


ナダへ当たり。


旗から外へ押し出す。


マヤは一歩下がった。


そして、イザンを見る。


動きが完成する前に、方向を言っていた。


攻撃を見たのではない。


決断を見た。


     ◆


反対側。


シグランの耳にマヤの声が届く。


「シグラン!」


第二ラウンドで、初めて自分を呼んだ。


ライドの前で拳を上げている。


攻撃を続けられる。


だが、約束を思い出した。


後ろを見る。


ナダが旗のそばにいる。


アミールとアナスが、二方向から圧力をかけている。


身体を半分だけ回した。


ライドが尋ねる。


「戻るのか?」


シグランは二つの道の間にいる。


手の周囲には炎。


後ろには旗。


ライドが言う。


「選べ」


シグランは歯を食いしばった。


そして、後ろへ跳んだ。


完全に戦いを捨てたわけではない。


だが、ライドから離れ。


班へ近づいた。


ライドが言う。


「ようやく聞こえたか」


シグランは怒って振り返る。


「勝ったように話すな」


「言っていない」


そしてライドは、青い旗へ向かって走った。


自分たちの本当の目標へ戻っていく。


シグランが止まる。


ライドは最初から、この戦いへ執着していなかった。


執着していたのは。


自分のほうだった。


拳の炎が強くなる。


だが、再びマヤの声が届く。


「シグラン、右!」


今度は。


動いた。


     ◆


指定された方向へ飛び込む。


障害物の後ろから、アナスが旗へ向かって現れた。


シグランが先へ着く。


前方へ炎の弧を作り、進路を変えさせる。


アナスは止まった。


シグランを見る。


次に、離れた場所にいるイザン。


「教えられたのか?」


シグランが答える。


「関係ない」


だが、本当は関係があると分かっていた。


イザンが道を見つけなければ。


マヤは呼ばなかった。


自分が聞かなければ。


アナスは着いていた。


アミールが正面から圧力をかける。


灰色の旗は、三人の攻撃者に囲まれた。


中央にマヤ。


旗の根元にイザン。


二人の前へシグラン。


大会が始まってから初めて。


三人が同じ空間へ立っていた。


アミールが言う。


「ようやく面白くなったな」


シグランが答える。


「まだ始まっていない」


マヤが素早く言った。


「アナスはあなたの後ろから抜ける。アミールが正面から止める。ナダは横から戻る」


シグランが言う。


「見えている」


イザンはアナスの足を見る。


「違う。アナスは動かない」


シグランが一瞬振り向く。


イザンが言った。


「通るのは、アミール」


どうして分かったのかは尋ねなかった。


第一ラウンドなら。


すぐにアナスへ攻撃していた。


だが今は。


その場を動かなかった。


アミールがシグランへ雷を放つ。


シグランは炎を上げる。


二つの力がぶつかった。


同時に。


アナスは動かなかった。


アミール自身が、炎の弧の周囲を回る。


爆発の光を使い、進路を隠した。


旗へ向かっている。


シグランが叫ぶ。


「マヤ!」


下から水が飛び。


アミールの足へ当たる。


均衡が崩れた。


イザンが縄へ飛びつく。


旗を後ろへ引く。


アミールの手が外れる。


シグランが前へ短い炎を放った。


アミールは防衛区域の外へ下がる。


動きが終わった。


旗は、まだ立っている。


三人の間に短い沈黙が落ちた。


シグランはイザンを見る。


次に、怒りながら立ち上がるアミール。


「動く前に見えたのか」


イザンは頷いた。


シグランは、それ以上何も言わなかった。


だが。


笑わなかった。


     ◆


第二ラウンドは続いた。


第三班が完璧になったわけではない。


シグランは、まだ必要以上に前へ出る。


マヤは、一度に多くの方向を見ようとする。


イザンは、相手が到達してしまえば一人では止められない。


それでも。


何かが変わっていた。


イザンが「右」と言えば、マヤが動いた。


マヤが呼べば、シグランが振り返った。


シグランが開いた道を見つけても。


一度だけ旗を確認してから進むようになった。


完全に理解し合ってはいない。


だが。


違う時間に話す三つの声ではなくなっていた。


審判が手を上げた。


「第二ラウンド終了!」


各班が止まる。


三本の旗は、まだすべて立っていた。


だが、訓練場には大会の痕が残っている。


青い旗の近くに、ひび割れた氷。


灰色の区域には、倒れた障害物。


赤い旗の周囲には、散らばる焼け跡。


生徒たちは立ったまま息を整えていた。


審判が言う。


「残るのは最終ラウンドだ」


シグランはライドを見る。


ライドは自分の班の近くへ立っている。


シグランのそばではない。


嘲笑されるよりも、それが気に入らなかった。


灰色の旗を見る。


マヤは水を壺へ戻している。


イザンは痛む脇腹を押さえていた。


シグランが言う。


「最終ラウンドでは、アルダ班の旗を落とす」


マヤが答える。


「私たちで落とす」


シグランは彼女を見る。


次に、イザン。


反論することはできた。


二人など要らないと言うことも。


だが、口にしたのは別の言葉だった。


「遅れるな」


完全な協力の言葉ではない。


それでも。


二人が本当に後ろから動くことを前提に話したのは、初めてだった。


訓練場の外から、ラカンは三人を見ていた。


アルダが言う。


「まだ班と呼ぶには遠い」


ラカンが答える。


「分かっている」


シグランが、開始位置へ戻る前にマヤとイザンを待つ姿を見る。


「だが、聞き始めた」


白い旗が、再び上がった。


三班が最終ラウンドへ備える。


三本の旗は、まだすべて立っていた。


それでも。


訓練場の中では。


小さな何かが、元の場所から動き始めていた。

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