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森の魔女の灯火  作者: lled
喪失の夜
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11/18

喪失

古い火が灯されてから、村の空気は少し変わっていた。

閉ざされていた窓が開く。

夜になっても、家々の灯りは消えない。

怯えた顔にも、わずかに安堵が戻っていた。


火は、確かに人々を守っていた。

ベルネルは広場の端で、その光景を見ていた。

ガウルたちは酒を飲み始めている。

ノイルは村人たちに囲まれ、ぎこちなく笑っていた。


皆、少しだけ肩の力を抜いている。

その時、小さな女の子が、人混みの間を歩いていくのが見えた。幼い。

不安そうに、何度も周囲を見回している。


「……お母さん?」


小さな声。

返事はない。

少女は灯火の周りを歩く。

人々の顔を見る。

また呼ぶ。


「お母さん?」


ベルネルの呼吸が、少しだけ止まる。

近くの女が、困ったようにしゃがみ込む。

何かを言おうとして、言葉が出ない。

少女はまだ分かっていない。

火を灯せば、戻ってくると思っている。

やがて少女は、誰もいない暗がりへ目を向けた。


ぱっと顔を明るくする。


「あっ」


駆け出す。

だが、そこには誰もいなかった。

少女は立ち止まる。

ゆっくり周囲を見回す。


その小さな背中から、期待だけが消えていく。

広場は静かだった。

誰も声を掛けられない。


ベルネルは、ただそれを見ていた。

火は灯した。

夜は止めた。

それでも、戻らないものがある。


剣を握る手へ、少しだけ力が入る。

けれど、どうすればよかったのか分からない。


灯火が揺れる


暖かな橙色


それは確かに、誰かを救っていた。


だが同時に。間に合わなかったものまで、照らしていた。


ベルネルは、しばらく動けなかった。


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