番外01 神話の時代の出来事
数えきれない程の後悔があった。
並べ立てきれないほどの悲劇があった。
目の前に倒れている亡骸の数は一夜明けても、数えきれない。
それは、彼女の妹が殺した人間の数だった。
妹を討った姉には、助けられた人たちの手からたくさんの宝が贈られたが、姉がそれらを喜べなかった。
なぜ、こんな事になってしまったのかと思うばかりだった。
あるところに、互いを思いやる姉妹がいた。
一人は愛らしく無邪気な妹。
もう一人はしっかり者のかしこい姉だ。
二人はどんな事があっても、支えあって生きてきた。
数えるのも億劫になるほどの昔の時代。
夢のように争いなどなく、平和ばかりの日々。
そこに膝をくっするような悲劇など、存在しなかった。
しかし、どんな平穏にも多少の問題は起こる。
意思あるものが複数いれば、互いの違いをめぐって諍いがおこるのは必定だった。
ーーどちらがより素晴らしい女神になるだろう?
ある日、一番の美女を決める催しがあった。
姉妹もそれに出て、多くの票を集めたが、数は同じで決着がつかなかった。
二人はその催しが終わった後は、確かに笑い、思い出になったと言いあえる関係だったのだが、それは変わってしまう。
ーーこの世で一番すばらしい美女が、国の王子の妻に。
小さな国にいる誰もが見惚れる芸術品のような王子。
そんな王子に、姉妹は二人同時に恋に落ちた。
一方は王子を得るために、様々な手段を使い競争相手を蹴落とした。
もう一方は、王子の心を射止めるために己を高めた。
その結果が、多数の死者と宝の山。
死者の山の上で血の海に溺れながら怨嗟の言葉を吐く妹は、姉を憎む。
支えあってきた家族であったものを。
ーー所詮、家族であっても本当に欲しい物の前ではただの敵よ
ーーただの姉妹に戻ろうだなんて言葉で私を騙して、仲間に矢を射させるなんて
ーーお姉さまでも姑息な手を使うのね。まんまと騙されたわ。
それがただの誤解であったと、明らかになる事なく二人の道は分かれる。
憎悪の中で事切れた妹のその思いは、何年経っても、晴れる事はない。
その先の遥か、何千年先の未来でも。
妹は自分の記憶を守り、最初の人生の延長線上として、それ以降も生き続ける。
姉は自分の記憶を手放し、何度も本来の自分の姿を忘れ、いくつもの人生をその時代の人間として生き続けながら。




