番外02 王座
多くの人達は王座にロマンを求める。
けれど王座に惹かれて、その地位にある権力に取りつかれてしまうものがいる。
俺は、そんな者達を人より知っていた。
小さい頃から、本を読むのが好きだったから、その影響だろう。
偉人の成功よりも失敗の話を読むのが好きだったから。
だから俺は、王座なんてものには、これっぽっちも引かれなかった。
ある日、お忍びで王都を歩いていた時、子供がつくったような椅子が露店で売られていた。
こわれそうで、哀れみを抱いて俺は、それを買って、その場で修理した。
それをどうしようかと思っていたら、確かその時に知り合った女の子がいたので、あげたのだったか。
こんな小さな椅子を欲しがる、変わった女の子だった。
自分の部屋の家具がぼろいから、と言っていた。
どこかで会ったような顔のその少女とは、お忍びの旅にたまにあった。
当時護衛だった俺の幼馴染の女の子と一緒に過ごす時間は、かけがえのないものだ。
あの時の時間があったから、俺は傲慢な権力者にならなかったのかもしれない。
けれど、そんな時間はすぐに終わってしまう。
王座の力に取りつかれたものが、王になるべきものをかつぎあげるために、俺達王族を害そうとしていた。
それで、俺の身の回りの人間は減り、お忍びで王都を回る事はすくなくなったのだった。
今、俺は処刑されたアリルに振り回されて、ぬけがらのようになった王族や要人たちを見て、ため息を吐くしかない。
王座を嫌い、避けていた俺は、自分に課せられた責務から逃げていただけなのかもしれない。
俺は嫌だから俺以外の誰かが、王座に着けばいいと思って。
けれど、もうそんな事は言っていられない。
彼女の生きる世界を守るためにも。




