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Judge all  作者: 蒼猪
79/80

五三戒 丑と未①

 龍(りゅう)に後押しされ、虎閃(こせん)は見慣れた会議室へ向かう。帝の間へは会議室を経由しないと辿り着けないからだ。

「オラァ!!」

 覇気のある声が会議室の外まで聞こえる。虎閃(こせん)は勢いよく扉を蹴破ると、そこには二人の男がいた。

「おお、虎閃(こせん)じゃねぇか!」

 斧槍を振りましている牛騎(ぎゅうき)と、それをかすりながら躱す牛丸(うしまる)がいた。

「虎閃(こせん)だと!? あの日以来消えてしまったが、十二支になっていたのか!」

「よそ見すんなよ!」

牛騎(ぎゅうき)の手痛い一撃が牛丸(うしまる)にはいる。肩を深く斬られ、牛丸(うしまる)は地面に転がる。それでも、力なく立ち上がろうとする牛丸(うしまる)。

「じじぃはお呼びじゃないんだよ!」

 牛騎(ぎゅうき)は牛丸(うしまる)の傷口をつま先で蹴り上げる。牛丸(うしまる)は苦痛の声を上げ、抉られた肉からドロっとした血が地面に落ちる。

「早く行けよ。」

 虎閃(こせん)は静かに頷き、苦しむ牛丸(うしまる)を横目に帝の間へ続く扉まで歩く。

「行かせないわ!」

 虎閃(こせん)が扉に手をかけた時、蹴破った扉から女の叫び声が聞こえる。

「羊子(ようこ)さん……。」

 羊子(ようこ)はハープを握りしめ、震える体で男二人に立ち向かおうとしていた。それを見兼ねた牛騎(ぎゅうき)は羊子(ようこ)を睨みつけて言う。

「遊び場じゃねぇんだ。失せな。」

 羊子(ようこ)は怯えた表情を見せるも、それでも怯まずハープに手をかける。

「音色は癒しとなり、癒しは活力となる。」

 綺麗な手で音を奏で、透き通った歌声で辺りを包み込む。

「ぐっ……!」

 よろよろになっていた牛丸(うしまる)は力を振り絞って牛騎(ぎゅうき)に体当たりをする。よろけた牛騎(ぎゅうき)は武器を落とし、震える手で牛丸(うしまる)がそれを拾う。

「このままじゃワシは使えんな。」

 そう呟くと、牛丸(うしまる)は斧槍を縦に振る。すると、牛丸(うしまる)が握っていた斧槍がメイスに変わり、床には手斧が突き刺さっている。

「1本ずつならワシも使える。」

「チッ。」

 羊子(ようこ)の歌声を聞いた牛丸(うしまる)は、傷を気にせず武器を振る。味方に活力を与える羊子(ようこ)のハープは、いまの牛丸(うしまる)に効果てきめんだった。

「虎閃(こせん)…! もうやめて!」

 ハープを床に置き、羊子(ようこ)は虎閃(こせん)の袖を掴んでうつむく。虎閃(こせん)は腕を振り払おうとするも、羊子(ようこ)の消え入りそうな声を聞くと無理矢理引き剥がす事は出来なかった。

「お願い……。」

「あー羊子(ようこ)さん、ごめん。でも大切な事なんだ。何となく政府に従ってちゃ…――」

「知ってるの。」

 羊子(ようこ)は虎閃(こせん)の袖からゆっくりと手を離すと弱々しく言い始める。

「十二支が神から分かれたのも、政府が神を作って世界を壊そうとしてるのも、それをあなた達が止めようとしてくれてるのも。全部知ってるの。」

 羊子(ようこ)は泣き崩れる。その姿を見て、虎閃(こせん)はグッと拳を握る。

「ならなんで…――」

 

 グリッ―――


 羊子(ようこ)は小さなナイフで虎閃(こせん)の足を突き刺した。

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