四一戒 酉朱雀と寅白虎
「オラオラァァ!」
スザクを一方的に殴り続けているが、一向に反撃してくる気配が無い。嫌な不安はあったが、それでも叩き込めるなら殴り続けるしかないと思い、俺は攻撃をやめなかった。
「まったく、どうして虎はどの代も乱暴なんでしょう。」
今まで黙って殴られていたスザクは急に翼を広げる。沢山の羽根が辺りに舞い、羽根の触れたアスファルトが軽く弾ける。
「やばくね?」
触ったら爆発する羽根が視界に埋め尽くされていく。距離を詰めても離しても爆弾の雨。
「あ、そうだ。」
俺は地面に脚をめり込ませ、テコの原理を使ってアスファルトを起こす。起こした平たいアスファルトを盾代わりにしてスザクに近づき、十分な距離になったらアスファルトをスザクへ投げつけた。
「くっ……。」
スザクは翼でアスファルトが当たった腹を押え、もう片方の翼で盾が無くなった俺に向けて羽根を飛ばす。
「やべっ……!?」
俺は腕を前でクロスさせて羽根をガードする。しかし、羽根の1枚1枚がアスファルトを弾けさせる程の威力がある。右腕と獣器が覆ってくれている左手は無事だが、胴体や足などガードしきれなかった所が多少抉れる。
「あー、いでぇ……。」
それでもスザクは羽根を飛ばしてくる。脚に力が入らず、避けるのが間に合わなかった。
その時、俺の胸辺りから例の輪が連なって出てくる。赤い羽に混じって、青い稲妻も降り注いできた。
「あー、やっとか。」
猛々しい獣の咆哮がし、一際大きな雷が近くに落ちる。凄まじい轟音と共に大きな白い虎が現れた。
「よう酉朱雀!」
白い虎はスザクに気さくに話しかける。
「はぁ、何しに来たんですか、寅白虎。」
「やだなぁ、言わなくてもわかるでしょ。」
虎は振り返ってこちらに近づいてきた。
「よく呼べたね。」
四聖獣の朱雀と白虎が同時に現れる混沌とした景色に、俺も使千も驚きはなかった。だが、確実に絶望はした。
「あー、もしかして、お前とも戦わなきゃいけない?」
「いや、そんな事ないよ。君は何の目的で僕を呼んだんだい?」
そうだ、俺にはこいつが居ないと出来ないことがあった。
「武器……。」
「ん?」
「俺は強くならなきゃいけないんだっ! そのために、お前の力が必要なんだ!」
俺は消え入りそうな声で白虎に叫ぶ。
「やだ!」
俺は白虎に叩き飛ばされた。満身創痍の体に、巨体の猫パンチは十分すぎるほど効いた。
「だいたいさ、明確な目的も意志もないのに何? 僕を倒すんだか従わすんだか知らないけどさ、君じゃ無理だよ。」
ぐうの音も出なかった。俺は戒盾にいる時からそうだった。やるべき事もやりたい事も無く、ただ淡々と政府から言われた任務をこなして、報酬を貰って食って寝る。そんな循環を何も考えずに繰り返していたせいで、本来自分が持つはずの目的や意志が俺には無かった。
「どうする? このまま死んどく?」
使千が前に言ってたやりたい事を見つける、それが今やっと心に響いてきた。
「へっ、あるぜ、やりたい事。」




