三八戒 行為
休憩を挟み、その日は5回した。彼女もとても喜んでいて、色っぽい唇としっとりとした肌が今でも忘れられない。
俺の意識は眠り、次起きた時は身体が動いていた。
「やるじゃねぇか。」
急に喋った使千の声でハッとする。
「あぁ。なんか複雑だな。」
他人に行為を見られていたと考えると少し気恥ずかしくなる。だがそれに関して、これ以上使千からの言及は無かった。
「それより、蒼猪の事だよな。何だったんだ?」
闇犬と蒼猪さんの顔は瓜二つ、と言うより全く同じだった。というか、今更考え直してみれば、蒼猪さんは両腕とも義手で、闇犬も両腕とも義手だった。その時点で違和感に気づけてればショックは少なかっただろう。
「あー、時間があれば聞いてみる。」
しかし俺は闇犬の事よりも、使千について考えたかった。約束の時から時間が経ち、刻々と決戦が迫っている。
「あー、少し試していいか?」
「何を?」
俺は右肩を思い切り引っ張る。引っ張るというより、引き離すという方が正しいかもしれない。使千は俺の右腕にがっちり固定されていて、外そうと思って外せるものじゃないんだと分かった。
「何しやがる!?」
「あー悪い、外れるか試した。」
「俺の意思で付け外しできるから、外したいなら言ってくれ。びっくりしたじゃねぇか。」
固定されていた右腕は、使千の意思で付け外しができるらしい。意外と言えば意外だが、納得と言えば納得だった。
「あーなら、あっちに無理やり取られるって事は無いわけか。」
「そういう事だ。」
そこから俺と使千は、生活リズムや呼吸、意識を合わせる事に注力した。ある日は数分やって大喧嘩、ある日は一日中やっていたりと、かなりムラがあり付け焼き刃だが、それでも使千との仲もそれなりに深まっていった。
そんな時、俺はひとつ使千にどうしても許せない行為をされた。
「あー、おい。」
「ん?」
「お前、俺が食おうとしたアイス食ったな?」
「お前の体なんだからいつ食ってもいいだろ。アイスも美味いしな。」
使千が五感を感じにくい事は100も承知だが、それでも許せなかった。
「てめぇこの野郎!」
俺は右腕を殴った。
「痛てぇな!」
俺は顔面を殴られた。自分の左腕で。同じ身体だと言うのが本当に嫌だ。殴り合う喧嘩だって、俺の身体が一方的に怪我を負うだけだからだ。
しばらく罵声と暴力で1人芝居のような喧嘩をしていると、どこかから帰ってきた闇犬が止めに入ってくれた。
「も、もう! 何やってるの!」
「だって虎閃が殴ってきた。」
「はぁー? お前が俺のアイス食ったからだろ!」
闇犬は呆れて、右腕と頭をポカッと殴る。ポカッと軽い音を表現しているが、こいつは人間より強烈な攻撃力がある。めっちゃ痛い。
「お、落ち着いて2人とも。使千は勝手に食べた事謝って、虎閃は殴ったこと謝って。」
俺と使千はしばらくの沈黙の後、同時に一言だけ謝った。その様子を見て、闇犬は笑う。
「仲直りしたところで、今日はご飯でも食べに行こー! どこに行こうかな。」
闇犬は俺の手を引いて、泊まっているホテルから出た。




