三四戒 交差
俺は戦う構えをとると、使千は叫びながら突っ込んできた。的確に人体の弱点を狙って攻撃し、俺は躱すので精一杯だった。腕が1本無い事が、これ程デメリットになるなんて思ってもみなかった。
「ねぇ! 僕って何なのさ!」
使千の狙っている場所は分かってても、反撃をするのが難しいぐらい猛攻は続いた。俺は、思いついた事を実行できるまで隙を待った。
「2人とも! やめてよ!」
闇犬が叫ぶと、使千が一瞬動くのをやめた。
ここしかないと思い、俺は使千の右腕に飛びついてねじり切る。
「あー、しんど。でもこれで…。」
俺は使千からもぎ取った右腕を肩に当てると、何も施してないのにがっちりと固定された。そして、それまで感じていた右腕の痛みが消え、紅い鎧の腕が、まるで自分の腕かのように動く。
ガクッ――
突然目眩がし片膝をついてしまった。使千はこちらに振り向き、再び攻撃をしてきた。だが、さっきまでとは違い、身体が思うように動かなかった。使千の拳が俺に当たるその時だった。
「やっと自由になれた。」
動かしてない右腕が勝手に動いて、使千の拳を止めた。それに、俺は今喋ってないのに勝手に口が動いた。
「なかなか良いこと思いついたな虎閃。助かった。」
俺はただ単純に、右腕を使千からもぎ取ったら戦いやすいだろうと思ってやってみただけだったが、どうやら使千が俺に憑依したようだ。
恐らく、使千本来の人格が右腕に宿っていたため、動かせる身体を手に入れた事で使千の意識が俺に宿ったのだろう。
「え、虎閃、何その髪型は……。」
俺はツーブロックアシメのようになり、所々金色のメッシュが入った。
「あー! なんじゃこりゃ!」
「おい、髪型気にする暇があったら目の前の木偶の坊に集中しろ。」
使千に言われた通り、目の前の使千? に意識を向けた。使千? の攻撃は右腕を失ったことで更に激化し、激しい怒りと殺意の乗った拳や蹴りが飛んでくる。俺はその攻撃を躱そうとするが、身体が上手く動かない。
「おい使千! 避けるんだよ!」
「何言ってんだ、流して反撃だろうが!」
お互いの意見が合わず、俺はまたしても使千? にぶっ飛ばされる。
「あのー、虎閃さん? 何をさっきから独り言を……?」
クロートーが変な物を見るような目で見てきた。違う、誤解しないでくれ。そんな目で見ないでくれ。
そんなことを考えていると、間髪入れずに使千? がドロップキックを繰り出してくる。俺は使千? の身体を横から蹴り飛ばそうとしたが、またしても身体が言う事を聞かずに喰らってしまった。
「おい! いい加減にしろよ!」
「今のは飛び上がる所だろうが!」
戦いの時に、こんなに人と食い違う事が恐ろしい事だと身に染みてわかった。
「あー、わかった、お前に任せる。」
俺は使千に身体を預けてみようと思い、身体の力を抜いた。すると、今までに無いぐらい身体の重みが消え、五感と意識だけがある状態になった。
「こんな木偶、すぐに片付ける。」
使千は右腕を広げると、俺の背中から青い半透明の翼が出てきた。




