三二戒 入れ替え
「簡単なコイントスだよ。なんか賭ける?」
女の人は俺にコインを渡してきた。表にはマリーゴールドっぽい花の模様、裏には時計のマークがある普通のコインだった。
「あー、じゃあ負けた方が飲み物奢る。」
「乗った、私は裏に賭けるよ。」
俺は親指でコインを弾き、台の上に落ちてきたコインを左手で覆う。
「残念、私の負けね。」
台の上のコインは花が上にきていた。女の人は違うコインを俺に渡してきた。
「ほら。あんた運がいいね。またやりたいよ。」
女の人と少し話をして、俺と闇犬は店を後にした。
「また来てね〜。」
「いい人だったでしょ?」
タバコ屋から離れ歩いていると闇犬が話しかけてきた。俺は頷くと、闇犬は自慢げに女の人について話し始めた。寂しい時一緒にいてくれたり、母親のように頼りになる人だと言っていた。
「あー、これからどうすんだ?」
「と、とりあえず白い家に行こう。こう見えて、あたし結構顔広いんだ。」
闇犬は、次は白い家という場所に連れて行ってくれるそうだ。歩いて向かっているあたり、そう遠くない所にあるらしい。道を歩いていると他の人からジロジロ見られている気配がした。
「あ、ごめんね。片腕無いと視線感じるよね。どこかでマントかなんか買おっか。」
俺達は近くの服屋に寄って片腕を隠せる物を探す事にした。入った店は少し古臭い店だったが品揃えが多く、俺が好きな紺色のマントがあった。
「ほ、他に欲しいものある?」
俺は、この際だから服を一新しようと思い、長く着ていた戒盾十三人の制服と別れを告げた。
黒いTシャツに白いコートを羽織り、黒の長いパンツと白いスニーカーを履き、腕には獣器『最後の楽園』をつけた。
「似合ってるよ。」
「あー、色々ありがとな。」
俺は紺色のマントを羽織って店から出た。
白い家への道すがら、脇道に人だかりを見つけた。覗いていると、大勢の男が1人の男に群がっていた。あまり良さそうな事をしてる雰囲気ではなく、俺が首を突っ込もうとすると闇犬が止めた。
「あれはマフィアだよ、関わったらダメ。というか早く行こ、見つからないうちに。」
闇犬はそそくさと道を歩いて行く。すると1人の男がこちらに近づいてくる。
「あの、あなたワンさんすか?」
「い、いや? 人違いです。」
闇犬は、ただでさえ顔が見えないフードを深々と被る。しかも裏声で話してるし、何か訳があるのかと勘ぐってしまう。
「おーい、何してんだよ!」
男に群がってた人がぞろぞろこちらに来た。輪の中にいた男は血まみれで倒れ、ピクリとも動いてなかった。
「あれ? ワンさんじゃないすか!」
「あれれぇ? なんでわかっちゃったのぉ?」
力の抜けた声で闇犬が男達に話しけた。
「ワンさんの太ももの銃見れば誰でも分かりますよ。久しぶりっすね。これからどこへ? てかこいつ誰すか?」
マフィアの男は俺をジロジロ見てくる。
「こ、この人は虎閃って言ってあたしの友達。これから白い家に行こうと思ってて……。」
マフィアの男達は盛り上がって、塊で道を占領し始めた。
「そうなんすね! ボスのところに行くなら俺達が送ります! てめぇら、足確保しろ。」
マフィアの男達を動かしている闇犬に少し興味が湧いた。俺にマフィアとの繋がりを知られたくなくて、足早に白い家に向かっていたという事だ。それに、今から向かう場所はそのマフィアのボスの所。何故だかどこかで見た事ある光景だった。




