二六戒 片割れ
片割れは不思議だった。初めて見た景色、初めて聞いた音、初めて感じる風、全てが新鮮で、全てが初めてのはずなのに、片割れはまるで関心が無い。そう、好奇心が無いのだ。彼には興味を持ち、自ら話しかけたりしたのに他のことには無関心だった。
だがそんな片割れが今、上華下民共和国から東にあるとある場所まで一直線に向かっている。片割れには翼が片方しかないから、『飛ぶ』と言うよりは『浮く』に近い状態で向かっている。片割れが何者で、何故東へ向かって空を移動しているかは分からない。
それは片割れも同じだった。彼を前にし、彼と同じ部位を持つ片割れは、自分は何なのかが分からなかった。彼を自分と一体化させ、翼を開き東へ向かっている理由も分からない。しかし、そんな片割れは1つ確信している事があった。
「あそこに向かわなきゃ。」
ガチャガチャ――
鎧で動き回ると、やはり人目に着く。すれ違う人間からは奇人変人を疑われたり、何かの撮影? などの声もかけられる。
そんな声や視線をすべて気にとめずひとつの場所へ向かっていた。ビル街を通り、大きな道路をそって、脇道逸れたり住宅街を歩いたり。
「ここだ。」
片割れはとあるビルに入った。片割れは何も聞かされていない。だが階段を登って5個目の階に正確に辿り着いた。
ガチャ――
片割れはドアをひねる。扉は空いていて、人が複数人いた。
「おぉ、そろそろ来ると思ってたぜ。ま、上がりな。」
片割れは話しかけてきたオッサンの言うことを聞いた。普通なら警戒する所だが、片割れは不思議と信じられるように感じたみたいだ。
「俺と牛騎、虎二は死んで、月兎と龍と栄蛇、それから馬将……は居なくて、羊香と言見猿、今来た使千と闇犬。全員いるな。」
サングラスのようなものをかけ、黒ずくめのスーツを身にまとった男はそこにいる9人を客間に連れていった。
「さて、作戦会議と行こうか。」
男は淡々と語る。途中途中確認や質問を挟みながらも、作戦会議はスムーズに進んで行った。作戦を全員が理解し、全員が同意して一時解散になった。片割れは気になって話をしていた男に近づいていき尋ねた。
「僕って何?作戦には出ないけど、何してればいいの?」
男は少し考えた。
「お前は使千という名前だ。そのうち馴染むさ。変な声が聞こえてくる時があると思うが、お前を強く持てよ。作戦中はこの客間に居てくれ。事務所には出てくるなよ。」
男はそう言ってなにかの準備を始めた。
他の人も続々と帰っていき、片割れは客間に1人になった。
「僕は……。」




