二五戒 身体
彼は探していた。
何かって?
自分の身体だ。
上華下民共和国で自分の身体がある事を感じた彼は、本来の目的を後回しにして探し回っていた。彼が自身の身体を感知できる理由は至ってシンプル、使千器は元々1つの武器だったからだ。何故か意識のある使千器として生まれた使千は、自らの意思で失った片割れを探せる。
日が落ちた頃、使千はより強く片割れを感じられる場所に着いていた。そこは、とある博物館のような場所だった。彼は警備にバレないように博物館への侵入を試みた。
「擬装・鷹の目」
彼の腕から無数の眼が出てくる。彼は視界を増やし、2つの目では見れないような所まではっきり見えるようになった。
自分の片割れを1番強く感じる場所まで辿り着いた。博物館の地下の地下の更に地下にあった。厳重な警備とボロボロな設備、稼働していないエレベーターを見るに、ここは一般の立ち入りは出来なさそうな場所だった。
警備を一人一人締め、音もなく気絶させていき、ようやく片割れとご対面できる場所まで来た。目の前にある、棺のような形の箱を開き、中を見る。
「あった……。」
彼は自分の片割れに触る。
バチン――
触れた所が発火し衝撃が起きた。彼は少し身を引くと、棺の中の彼の片割れがひとりでに動き出した。
「君、だれ?」
動き出した彼の片割れが言葉を発した。彼は驚くが、至って冷静だった。
「俺はお前だ。」
「君は僕?」
片割れは当たり見回すと、倒れている人間に近寄る。人間を拾い上げると、自身に無い部分すなわち、右腕から右胸にかけてを引きちぎってはめ込む。
「何してんだよ。」
「君の真似。」
彼は怒り片割れの胸ぐらを掴もうとする。
バチン――
いくら彼が触っても、触れた部分からは衝撃と発火しか起こらない。彼は冷静さを欠き、片割れを殴る。
「何するんだ! 」
片割れは彼の拳を弾き、彼に殴り返す。彼は顔面に喰らい仰け反ってしまう。そこから片割れは容赦無く彼に拳を打付ける。頬、肩、胸、腹、腕、1点にとどまらず身体のどの部位にも拳は飛んできて、彼の息は上がっていった。
「僕が君を使ってあげるよ。」
片割れは彼の右腕に手を近づける。
「ッ! 触るなっ!!」
彼は大声で叫び、その威圧で片割れは更に感情的になる。
「僕は君なんだろ!? なら君が消えちゃえばいいんだ!」
片割れは彼の顔面に拳を連打する。片目が潰れ、頭蓋はボロボロ、喉も潰れて彼は声も出せなかった。撃沈した彼に片割れは囁く。
「今から君は僕だ。」
倒れている彼から使千器の部分である右腕を取り、片割れ自身の生身の右腕を外して、彼から取った右腕を付ける。
「僕は揃った。あはははは!!」
片割れは左肩から半透明の紅い翼を広げ、天井などお構い無しに地下から空高く飛び出た。片割れには向かうべきところなど無いが、とある場所まで一直線に向かった。




