二四戒 帰路
結果は目に見えていた。俺の打った極限駆動は、通常の平拳を何倍もの力と速さで打つ打撃に近しい斬撃技だ。反対に、相手が打ってきた判虎は腕を突っ張って掌底を放つ技で、相手の腕は一直線になっていた。まるで薪割りのように、俺の平拳は相手の腕を2つに裂いていった。
「あああああぁぁぁ!!!」
もう片方の手で脇腹を狙った拳が飛んでくる。俺はすぐさま一回転し肘打ちを顔面に入れる。
グチャ――
相手の左目は潰れ、脇腹を狙ってた拳を開いて目に当てた。
「ぐっ…、ああぁぁ!!」
それでも男は諦めず立ち向かってきた。男は捨て身のドロップキックを放ってくる。俺は男のふくらはぎを蹴りあげると、つま先がふくらはぎにめり込んで突き刺さった。
「ああぁぁ……。」
片手片足を失い、膝立ちのような状態になってようやく止まった。
「あー、お前は強かった。」
「バカ言え、何も出来なかった。」
男は電池の無くなったおもちゃのように弱々しくなっていく。
「俺の負けだ。もう好きにしてくれ。」
親父の死を聞き、俺に負け、もう何も考えたくないのだろう。信仰してた人物が、死んだり虚構だったりするのは、信者にとってどれ程の損失かは分からない。
「虎閃、終わったなら帰ろうぜ。」
俺は男に言葉をかける事も、トドメを指すこともせずに蒼猪さんと政府庁へ向かった。
「っと、ちょっと待っててくれ。」
蒼猪さんは少し離れて携帯を取り出して誰かと話していた。興味が無かったから、会話の内容は聞いてなかった。
「おかえりなさい。……って、使千さんは一緒じゃないんですか?」
鼠乃が迎えてくれた。上華下民共和国で親父と戦った事、変な宗教団体に絡まれた事、使千が失踪した事を報告した。
「そうだったんですか。お疲れ様です。使千さんはしばらくすれば帰ってくるでしょう。」
俺と蒼猪さんは飯を食ってからリオンを呼んだ。
「はいは〜い。……って、虎閃くんの使千器ってそんなんだったっけ?」
俺は親父の使千器を奪ったら合体して変形したことを伝えた。
「ふーん、そっか、何ともないの?」
「あー、何が?」
「何でもないよ〜ん。とにかく、使千器を渡してくれる?」
そういえば、どうやってこれ戻すのだろう。ずっと付けてても違和感無かったから気に止めてなかったけど、言われてみれば戻し方が分からない。
「は〜や〜く〜。」
ウザイなこいつは。
「皆さん大変です! 外で騒ぎがあるみたいなんですが、騒ぎの渦中に十二支がいるみたいなんです!」
鼠乃が慌てた声で入ってきた。
「あー、蒼猪さん行こうぜ!」
「えー、あたし関係ないじゃん〜。」
このアマ、この期に及んで知らんぷりかよ……。
ズウゥゥン――
パリン――
結構やばそうな音がしてきた。
「虎閃、僕は偉い人を避難させてくるよ。あとは任せたよ。」
「あーい。」
俺は襲ってきた十二支を迎え撃ちに行った。ここが俺の運命の分かれ目だったんだと思う。




