二二戒 戦闘教
上華下民共和国から去ろうと思った矢先、半裸の集団が俺と蒼猪さんの周りを囲む。
「お前達はこの国のものでは無いな。」
「あー、だったらなんだ。」
頭にハチマキを巻いている男が前に出てきた。
「この国は武の国だ。大半の人間が『戦闘教』に所属している。」
「はぇ? 誰の教えだよ。」
「もちろん、この国を腕っ節で昇りつめた虎二様だ。」
親父は宗教が作られるほど有名なのか。それとも、親父が狙って宗教じみたことを始めたのか?
「戦闘教の教えはシンプルに3つ。1つは、修行を欠くことなかれ。2つは、愛する者のために拳を取れ。3つは、目的のためなら拳を握れ。だ。」
分かりやすい脳筋狂戦士だな。戦闘教なんて、一歩間違えたら戦闘狂じゃねぇか。
「その戦闘教徒があたしらに何の用? 」
ハチマキの男は拳を打ちつける。
「過激な信者は周りに危害を及ぼす。私達はその類なので、あなた達を私達の目的のためにボコります。」
マジで戦闘狂の狂戦士じゃねーか。
「あー、俺たち一応人間より遥かにつよいんだけど……。」
囲ってきた信者達は一斉に、型に入るための構えを始める。よく見た、よくやった、あの型を、虎流神討を。
「我ら戦闘教徒第3世代、参る! 」
全方向から信者は襲いかかってくる。俺は蒼猪さんと背中合わせにしてお互いの死角を無くし、信者との戦闘に入った。
一人一人が鋭い拳や足を持っており、集団戦闘慣れもしている。互いの動きを理解して、邪魔にならない攻撃を俺達に仕向けてくる。
「虎閃伏せな! 」
蒼猪さんは紅剣と黒銃を抜き、回転しながら斬って撃つ。コマとコマのぶつかり合いのように、蒼猪さんと信者は弾ける。合計で信者は40人いて、そのうちのよろめいた5人の頭を吹き飛ばした。
「あー、蒼猪さん、信者を一直線に集めてから蒼猪さんぶっ飛ばすのはどう? 」
「お、いいねぇ。ならちょっと走るか! 」
俺と蒼猪さんは並列して走る。追いかけてきた信者達は、まるで蜂の群れのように塊で追いかけてきた。
「あー、狙いやすいぜ。」
俺は滅神閃光の構えをして、もも上げをする。蒼猪さんは軽く飛んで地面と平行になる。
「雷電飛射蹴り・猪」
蒼猪さんなら耐えられると思い、脚に青い閃光を纏わせながら蹴り飛ばす。蒼猪さんは刀を腰に持っていき目を瞑った。
「斬鉄之剣」
蒼猪さんの開いた眼は赤く光っていた。
ヒュッ――
蒼猪さんは一瞬で信者の群れを通過し右脚で減速する。完全に止まると、刀を鞘に収めようとしていた。
チン――
次々と信者達の首が落ちていく。転がった首をよく見ると、目玉がバラバラに切り刻まれていた。
「あー、芸が細かいな。」
「ゲームで画面が砕ける演出あるじゃん? あれのつもりだったんだけど、どう見えてたのかな? 」
戦闘に関係ない話をしていると、群れに加わっていなかったハチマキの男が近づいてきた。
「こんなのは勝負では無い! 男が闘う時は一対一だろうが! 」
ハチマキの男は虎流神討の構えをとる。
「あー、まぁ付き合ってやるか。蒼猪さん、手ェ出さないでね。」
「へい。」
親父から習ったかどうかも分からない構えを平然としているのが、何故だかムカついた。虎二の息子であり一番弟子である俺は、本気で構えをした。滑らかに、激しく、そして優雅に、腕を回して大地を踏む。獣のような手の形をとり、左手を前に出し、右手を顔の横に持って両拳を握る。
「死ぬまで付き合ってもらうぜ。」




