二一戒 嗚呼
ビチャ――
グチャ――
生暖かい血肉が弾ける。硬い骨が折れる。臓腑が飛び散る。
ニチャ――
ブチ――
目玉が視神経を剥き出しにして転がる。頭蓋が割れ脳が溶けだす。
ガチ――
ガチ――
地面を殴る。血溜まりを殴る。ああ! なんて楽s……
「もうやめな。」
「っ! 」
蒼猪さんの一言で我に返る。親父は跡形も無くなった。人間の約60パーセントが水分である、ということが良く分かるぐらい、辺りは血に溢れている。剥き出しの臓腑や脳、人体模型でしか見た事ない骨など、普段は見れないような物までしっかりと見える。
「ハァ……、ハァ……、親父は死んだのか?」
「それで死んでなかったら逆に怖ぇよ。」
殺した。親父を。
俺は、達成感とは違うがとても似たような感覚が身体を巡った。
「腹痛ぇー。おい虎閃、病院行こうぜ病院。」
「あー、親父はどうすればいいかな。」
「好きにすればいいんじゃねぇの。」
蒼猪さんは颯爽と歩き出した。
「なぁ虎閃。」
蒼猪さんは俺を元気づけようとしてくれているのかもしれない。いつもより声色が優しく、病院に行く途中や帰りの今も会話を絶やしていない。
「あー、何。」
「あたし、十二支になったかも。」
蒼猪さんは笑いながらそう言った。
「なんか気絶してる時に夢見たんだ。気持ちわりぃ天使みたいなやつが現れて、俺に殺されるか契約するか選べって。もちろん死にたくないから後者を選んだ。」
俺と同じだ。蒼猪さんには文字の輪の段々とか、光る結晶とか出てなかったのに。
「そしたらよ、『お前で契約者は揃った。終わりが出来たな。』って言っててよ。訳わかん無くね。」
そうか、そういう事だったのか。だから親父を殺せたのか。
「あー、そうだね。」
「なんだよ素っ気ねぇなー。てか、使千いなくね?」
確かに見てない。結構歩いているのに、噂のひとつもしない。
「あー、先帰ったかも。」
「そうだな。あたし達も帰ろう。」
戒盾十三人をやめた人が政府庁に帰ろうって言うのはギャグ? と言おうとしたけど、さすがに殴られるかと思ってやめた。




