一八戒 虎と閃光
親父はようやく攻撃をしてくるようになる。俺よりも速い拳や蹴り、俺の攻撃を受け流しながらのカウンターなど、多彩な技で俺は成す術がなかった。
「判虎」
「判虎の弱点はこれだ。」
親父は俺の掌底を躱し、少しだけ横から力を加える。腕が曲がって、衝撃波だけが虚空に消える。
「羅刹星」
「それはこれに弱い。」
猛スピードで動く前に脚を蹴られて体制が崩れる。そのまま親父は俺をぶん殴る。
「これはどう避ける? 桃源撃」
キレの増した拳が何度も飛んでくる。この技は、歯を食いしばって地面を踏み込み、死ぬ気で目、鼻、顎、喉、肩をぶん殴り続ける技だ。受けることで精一杯になり他の事に気が向けられなかった。
「これ覚えてるか!? 虎牙! 」
親父は、俺の左側に左脚を出してきた。やばい、来る!
パン――
親父は俺の頭目掛けて右脚で後ろ回し蹴り、そして直ぐに脚を切り替えて左脚で回し蹴りをしてきた。1回の音で2回の蹴り技をする速さは俺にはまだ無かった。
頭の両方から蹴りを喰らってめちゃくちゃ痛かった。痛かったけど、俺は攻撃を続けた。
「なんか違和感あるんだよなぁ。」
親父は攻撃を一旦やめた。
「なんか隠してるだろ。」
「ってぇなぁ。分かったよ。」
ぶん殴る、ぶっ飛ばす、これ程良く表現出来る言葉が無いぐらい、虎流神討は豪快でパワーのある流派だ。相手をぶっ飛ばす『判虎』や『飛射蹴り』、大地を揺らす『地壊破』など力強い技がある。
だがこの十数年、親父から習った流派しか使わなかった。これを使える相手がいないからだ。
「あー親父? 」
「おー、なんだ虎閃。」
「本気出すね。」
俺は少し引き呼吸を整える。
少しワクワクしていた。俺の考えた、俺だけが出来る、俺のための技。虎流神討を改良し、より対人向けに、より殺人向けにしたこれを親父にぶつける。
片手で拳を握り、もう片手でそれを押さえる。古い伝承にある抱拳礼という仕草を真似て2秒間静止する。静止後、親指で喉をかっ切る動作をして、そのまま親指を下に向ける。
「おーおー、大層な舞だな。」
「滅神閃光って名付けてる我流の型だ。」
「おー、かっくいいねぇ! 行くぜ。」
親父は目にも止まらぬ速さで俺に殴りかかってくる。
「あー俺、超速いから。」
俺は親父が殴るより速く数十発殴り、親父の拳を避ける。
バチン――
「痛! 」
殴ってから遅れて音が鳴り響き、拳に青い閃光が纏わり付いてバチバチ鳴っている。
「死ぬまで付き合ってもらうぜ親父。神鳴」
親父は防御姿勢を取る。しかし親父も人の形をしているため、必ず死角が存在する。神鳴は、人間の目では決して捉えることが出来ない速さで動けるようになる。上下左右どこでも縦横無尽に動き、必ず相手の死角から攻撃を加える。
ズドン――
ゴロゴロゴロ――
激しい轟音が鳴り響く。地面を蹴る音が、まるで雷のような音になり、それと同時に青い閃光が迸ることから『神鳴』という名前を光狼に付けてもらった。名前負けしない威力で、防いでも防いでも、必ず見えない所から飛んでくる拳に、親父は片膝を付きこの技に対抗できる技を繰り出した。
「痛ぇなこんちくしょう! 嵐旋! 」
デタラメに拳を打つこの技は、防御兼攻撃の技だが欠点が1つある。目を瞑り相手を見ずに一定時間殴り続けてしまう。槍の雨や火炎放射、銃弾の嵐を凌ぐための技だ。ありがとう親父、それをしてくれると思ってた。
「くたばってくれ親父! 神雷槍! 」
虎流神討の構えをして、右手だけを握り、左手を水平にして親父の胴体を狙う。
グチ――




