一六戒 武の本場"上華下民共和国"
政府庁に戻り、次の目的地に行くための準備をしていた。金、着替え、水、絆創膏。普段のように軽装で行きたいため、持ち物は最小限に留めている。
「うし。あー、蒼猪さん、俺の支地干天居ないみたいだから蒼猪さんの猛猪に乗せてくれない? 」
「しゃーねぇな、金出しな。」
蒼猪さんに乗車賃を渡し、政府庁から出た。外では既に使千が雲雀とスタンバイして待っていた。
「しゅっぱーつ! 」
蒼猪さんの号令で、雲雀と猛猪は空を飛んだ。雲雀が飛ぶのはわかる、鳥だから。でもなんでイノシシも飛ぶんだ?
「もしもし? 今からそっちにお前の息子が行くらしいぞ。」
「おーやっとか、待ちくたびれちまったぜ。もしかしたら一番最初に来るって言ってのによ。」
「悪い悪い、いつもならそうだったからな。今回は違ったみたいだ。」
「おーおー、また始まったぜ、お前の訳の分からない過去回想。何なんだよそれ。」
「気にすんな、ま、今回は死ぬんじゃねぇぞ。」
「はっ、倅に殺されるほど俺は弱ぇのか? おーん? 」
「ハイハイ強い強い。」
「おーおー、ナメてんのk――」
ピッ―――
「あー着いた! ここが上華下民共和国か! 」
目的の国に着くなり、周りは人で溢れ返っていた。視界にびっしりと人、人、人。もはや人が見えないのは上を向いた時だけだ。
「ほんじゃ使千、探し物探しな。」
今回は上に登らず、その場でまた祈りのポーズをとった。
「っ!? 感じる。あるぞこの国に。」
「あーまじか! この国の使千器って使千の片割れなのか。そう考えると、探しやすいかもな。」
「にしても、周りにいる人やばいな。どこもかしこも、カラテの練習みたいな事してるぞ。」
よく見たら、あちこちで拳を突き出したり、脚を回したりと、俺がやっていた闘術の修練のような事をしていた。正拳、掌底、連撃、回し蹴りやかかと落としなどの技の練習や、形意拳や太極拳、八卦掌などの門派の練習をとっている人までいる。
「あー、すごいな。」
「ハッハッハっ、おー凄いだろう? 俺がこの国に武術を広めたんだ。」
見知らぬ男が急に声をかけてきて、俺達は大きく飛び退いた。ビーサンにハーフパンツ、Tシャツにグラサンと、チャラそうな男だ。
「おー、久しぶり……つっても、見た事ねぇか。」
「あんた虎だな?」
蒼猪さんがガン飛ばして見ていた。虎ってまさか……。
「おー、凄いじゃないかそこのかわい子ちゃん。その通り、この俺が上華下民共和国の首相であり十二支の虎、そして虎閃、お前の父親の虎二だ。よろしくな! 」




