6 青 タネビト
朝、あさ、心地良い目覚め。
隣で気持ち良さそうに寝ている黒髪の女の子が目を覚まさないよう気を付けながら、ベッドを降りて
軽く髪を整えて、自分と女の子の服を選ぶ、お揃いの緑にしよう。
わたしの服だからちょっとぶかぶかだけど、紐を絞ればそこまで変にはならないと思うし。
女の子に着せる服をベッドに置いてから、部屋を出る
一緒に起きようかな、とチラッと思ったけど、あまりに気持ち良さそうな寝顔に断念。
朝食はわたしとパパが交代で作る事にしていて、今日はパパの日
居間のテーブルでは、既に朝食を済ませたパパがコーヒーを飲んでいる。
「おあよう〜」
「ああ、おはよう。メシできてるから食べるといい、あの子の分もあるぞ」
うん、とうなづいてテーブルにつく。
うちではあまり食事を一緒に食べる習慣がない。
パパは食べるのがとても早いので、一緒に食べると間が持たないのだ。
今日のメニューは丸いやわらかパンに、焼いたお肉
……これ、クマ?
昨日激しい追跡劇を繰り広げたライバルの最期に、なんか朝から微妙な気分になりつつ
食事はあの子と一緒に食べようと思い、先にパパと一緒にコーヒーを飲む。
「ん?食わないのか?」
失敗したかな、と顔に書いてあるパパに
「うん、あの子と一緒に食べるの」
と、ナントモナイヨーって顔を返して、何か話したい事がありそうなので、じーっとパパの顔を見る。
ちょっと居辛そうな感じでモゾモゾしてから、ようやく話を切り出すパパ。
「あの子の事についてなんだが、お前はタネビトについてどれくらい知ってたかな?」
タネビト、しってますよ、うん。
タネビトというのは、木から産まれる人間の事で、木から産まれるという事以外は全く知られていない。
当たり前の事だけど、自分がどうやって産まれたか、とかは本人達もわからないらしいし、普通に自分は人間だと思って暮らしている。
見た目は完全に普通の人で、エルフやヒゲよりよっぽど人間ぽい。
見分ける方法は、木から産まれるんだからたぶん妊娠してる木をずっと見張ってればそのうち産まれるんじゃないかなぁ。
難点は、どの木が妊娠してるかなんて普通わかんない事。
そしてもうひとつの特徴、死んだ後に死体が残らない事。
泣いている娘の目の前で消えていくのだ。
……お墓すら作らせずに。
どよーん、と沈んでいくわたしを見て、辛そうな顔をするパパ。
わかってる。
パパの方が一緒に過ごした時間、長かったんだし。
わたしのママがタネビトだったとわかったのは、亡くなった時だ。
わたしがそんな事を、(ママの事を省いて)伝えると
「まぁ、そんなとこだろうな。えーと、妊娠した木なんてのは俺も、というか多分誰もわからんが、タネビトの見分け方についてはもうひとつある」
あっさり気を取り直し、もったいぶって人差し指を立てるパパ。
「状況だ。森の中で産まれたとしか思えないような。
あと、タネビトはある程度動ける年齢で産まれるとされている。 普通の赤子だと流石に親無しでは生き残れない筈だからな」
確かに、あの子はそんな感じだった。
あの子、6才くらいに見えるけど、いくらなんでもその年まで言葉を知らないなんてちょっと考えにくいとも思う。
つまり、あの子は……パパを見ると、うなづく。
「恐らくはタネビトで、天涯孤独の身、だろうな」
「じゃあ…」
「関わったからには止むを得ないだろ。娘の恩人を放り出す訳にもいかないさ」
わたしの言葉を待たず、結論を話すパパ。
「食事が済んだら、タネビトという事は一応伏せて村の奴に紹介しよう。別にタネビトだからと差別される訳でもないが、無駄に広めるような物でもないしな」
ガタンゴトン、バキッ
ガタンゴトン、ベキン
「最初に言葉を、と思っていたが……ついでにドアの開け方も教えてやってくれ」
わたしの部屋の見慣れたドアを破壊して、それを両手で抱えた女の子は
なぜか勝ち誇った顔をして、わたしの部屋から現れたのでしたーー全裸で。




