5 青 おふろ
パパゾリに揺られて、というか振り回されながら、わたしと女の子が落ちないようにクマにしっかりしがみつき、たまに堪え切れずにウヒャーとかトリャーとか声が出る。
きっちり真似をしている女の子、本当にモノマネが気に入ったらしい。
もしかしたら他の遊びを知らないのかな?
後で他の遊びを教えてあげよう、着せ替え人形ごっことか。
森の中の道に入り余裕ができた所で これからの生活を考えてニマニマしていると、ついに森を抜けた。
森と草原を繋ぐ道は、そのままわたし達のマツリ村へと続いている。
目の前にある柵を抜けると、10軒の家と、みんなが食べていけるぶんの畑、小川が流れ魚も採れて、とても快適な村なのです。
昼間なら色々と作業してる人が居るんだけど、そろそろ日が沈む時間だからもうみんな家に帰ってるみたい。
「ただいま!」
わたしとパパの声が唱和して、女の子が真似をする。
「俺は先に村のみんなに報告と、ついでにこのクマの処理をして来るから お前はその子の世話を頼む。風呂使っていいぞ。」
きっちりと仕事を振り分けてくるパパ、もちろん異論なし。
興味深そうにキョロキョロした後に、お風呂小屋の水車を見て目を真ん丸にしている女の子。
◻︎ちなみにお風呂小屋というのは、うちの隣に建てられている水車のついた小屋で
水車で屋外の大水桶に貯めた水を、炎の小魔石で温める事でいつでもお風呂に入れるという素敵な小屋なのです。
5人くらいはいっぺんに入れるように設計してあり、この規模の村にお風呂があるのは珍しいみたいです。
村を作る時に、女性陣の強い要望で造られたとか◻︎
女の子を抱っこすると、こちらにぎゅーっと抱き付いて来る。
いきなり環境が変わって心細いのかも知れないなぁ、なんて思いながらお風呂小屋へ入ろうとドアを開けた瞬間、女の子が反応した
こちらの手を振り払い、軽く後ろにジャンプして小さな唸り声を上げる。
ドアに威嚇してる〜!
なにこの可愛い生物!
「ドアは敵じゃないよ〜、怖くないから大丈夫ですよ〜」
怖がらないように、ゆっくり抱き付いて話し掛けると
「どあわじゃいよーこわうじゃいじゃいよー」
頑張って真似して来た。君は頑張ったよ、うん。
どうやらドアが怖くない事は納得してくれたようなので、再度抱き上げて気を散らすために 犬、ネコ、小鳥、大鳥、馬、色々な生き物の鳴き声の真似をしながらドアをくぐる。
真似の真似をしながらも、ドアをくぐる時にはちょっとビクッとし、それでも好奇心には勝てないらしくキョロキョロしている女の子を一旦下ろす。
「ちゃんと真似できるかな〜?」
お風呂に入れるので服を脱がせて洗わないといけない。
きちんと真似してくれますように、と思いながらゆっくり服を脱いでみせる。
「ちゃんとまねきるかなー」
だいたいオッケーな発音をしながら、身に着けてた服を脱ぐ女の子。
なぜか女の子の脱いだ服が一枚の布になったけど、この子が畳むならこの方が楽そうだし別にいいや。
脱いだ服を畳み、端っこに置いてから手桶に水を汲み入れて椅子に座る。
真似をする女の子が椅子に座った所で、手桶からやさしくお湯をかけた。
なんかビックリしたらしい女の子が固まったので、動かないうちにサッサと洗い布でやさしく洗ってあげた。
お風呂嫌いになっちゃったら可哀想だからあくまでやさしくね。
ブラシで髪を梳いてあげると、すごいサラサラヘアーじゃないですかお嬢さん。
癖毛に悩むわたしにはちょっとうらやましい。
体を洗った後は、湯船に浸かる。
暴れないでね〜と祈りつつ、念のため抱っこして一緒に風呂桶に入ると、やはり気持ち良いみたいで暴れたりはしなかった。
最初はキョロキョロしていた女の子は、だんだん目がトローンとして来て、ウトウトし始める。
首がカクンと後ろに倒れて、髪がお湯の中にサーッと糸のように広がって、なんか綺麗
ちょっと見入っている間に女の子が完全に眠ってしまったので、お風呂から上げてタオルで身体を拭いて、ちょっとぷにぷにと色々といじって……
ここに置いてある一番大きいタオルで身体を包んであげてから、自分もタオルを纏って家に帰った。
村のみんなにはパパが話しててくれるって言ってたから、任せておいて大丈夫なはず。
覗きには死の制裁、というのは暗黙の了解なので、特に邪魔される事もなく帰宅。
そのまま自分の部屋に直行して、女の子はわたしのベッドのぬいぐるみポジションに寝かせる。
湯上りでちょっとピンクがかった白い肌、サラサラの黒い髪、こうして静かに眠っていると、本当にお人形みたいだ。
時々ピクンって動いてる。夢でも見てるのかな?。
夢の中でもモノマネしてたりして。
至福の時の中、控え目に自己主張してくるお腹の虫と、かなり激しく暴れまわる眠気
ベッドに座って、軽い夕食でも食べるべきか少し迷っていたら
気持ち良さそうに眠る女の子のねむねむビームの直撃を受けてしまいました。
もう全部明日でいいや、おやすみなさーい
お気に入りの白いぬいぐるみ、ハムスターのハム王をマクラにして眠る。
あたたかい温もりを感じながら眠ったその日の夢は、もう会えない 懐かしいママの夢だった。
本編で細かく触れてない用語に関して少し補足をしておきます。
細かい設定の説明ですが、知らなくても別に問題はないので、興味なければ以下の文は無視しちゃって下さい。
ミュス(大鳥)は、まぁ基本茶色いチョ○ボですね。
基本羽毛が逆立ってませんが、逆立ってる個体も居ます
他の色、ブチやミケも居て、カラーバリエーションは夜店のヒヨコより豊富
よくある乗り物として馬と大鳥の両方が居て、それなりに使い分けされています。
馬は持久力が高く大鳥は小回りが効く、的な。
あと、チップ(小魔石)
簡単な加工と操作で周囲に魔力を放出する黒い宝石で
そのうち小さい物はチップ、ある程度大きい物はジェム(魔石)、更に大きい物はオーブ(魔珠)と呼ばれ
込めた魔力の属性により炎のチップ、氷のチップ、といった風に呼ばれます。
炎のチップなら熱、氷のチップなら冷気を込められた魔力を放出し切るまで発し続ける感じで、カイロやドライヤー、冷蔵庫等、なにかを放出する器具として利用されます。
本文中では湯沸かし器として使われていますが、込める魔力を変えれば冷蔵庫に転用とかもできます。
魔力放出中に素手で触るのはちょっぴり危険ですが、棒とかを使って専用の容器にしまう事で無害化できます。
再利用可
チップは、コノハたちの国ではそこそこポピュラーに出回っていて、個人で持つには若干高級かな、程度ですが
技術がないと魔力を込める際に失敗して、壊れて消滅したりもします。
村にあるのはお風呂のチップのみ、管理はパパができます。
ジェムやオーブになると、込められる力が大きいので専用の容器で保存されますが、兵器としても使えるようになるため基本国の管理となり、値段は大きさにより乗算で跳ね上がります。




