43 黒 痛いと甘い、おべんきょう
「もう1度言っておくが、お前を養う気は無いからな?」
「はい!仲間にして貰って嬉しいっす!」
「通じる気がしないよねぇ」
ごはんを食べ終わった後、指を立てて話すパパに嬉しそうに答えるエントントン。
お姉ちゃんは何か面白そうにしてる、エントントンが珍しいのが面白いみたい。
とどめささない、おんなじじゃない生き物、近付いてよく見てみる。
耳が頭の上にある、白い毛が生えたいぬの顔。
手の外側には毛が生えてるけど手のなかには毛が生えてない、にくきゅうは無いなぁ。
「あの、親分?」
じーっと見ているワタシを見下ろしながら、声をかけて来るエントントン。
ひげひげ、引っ張りやすいかんじ。
「痛い!?」
引っ張ったら簡単に抜けたエントントンのひげを、とりあえず戦利品としてお姉ちゃんの所に走って行って渡す。
「そんな笑顔で渡されても困るけど、動物のヒゲって普通こんな簡単に抜ける物じゃないよね……」
またエントントンの所に戻って、みみみみ……引っ張りやすいかんじ。
「痛い痛い痛い痛いキャイン!やめて耳チギレル!」
みみは引っ張りやすいのに取れないみたい、ざんねん。
しっぽは……。
「なるほど、ああやって扱うんだな」
ワタシの手が届かないところまで走っていったエントントンを見て、パパはわかった、って顔をしていた。
「サクヤ、そろそろテントに入る時間だよ〜」
まだエントントンいじり足りないんだけど、お姉ちゃんから呼ばれて布の四角い三角のテントへと入ると、中は少しあったかい感じで、ワタシとお姉ちゃんとパパの荷物の袋が置いてあった。
袋から出した布を頭の下に置いて寝転がるお姉ちゃんの隣に、ぬいぐるみを抱いて寝転がる。
「じゃあオレも」「お前は外だ」
エントントンとパパの声が聞こえた後、パパがミュスに何かを言ってミュスの鳴き声といつものキャインが聞こえてくる中、何かを袋から取り出しているお姉ちゃん。
「まだ眠くならないし、お勉強しよっか?」
「お勉強、する」
小さい丸い、甘くてちょっと硬い物をハンカチの布の上に取り出したお姉ちゃん。
「即食べたわね……まぁいいけど。さてサクヤ、ここにキャンディはいくつある〜?」
丸い甘い物はキャンディというらしい。
物を数えるお勉強を始めるお姉ちゃん、ワタシちゃんと数えられるのになぁ。
えっと……指を曲げて数える。
「はち」
「別な意味で惜しい、18でした〜」
おしかった。
「じゃあ今度は?」
キャンディをいくつかしまって、また聞いてくるお姉ちゃん。
「はち」
「あんまり惜しくないけどさっきより近いね、12でした〜」
さっきより近かった。
「指を使うとこまでは大丈夫になったかな、今日はここまでにしよっか」
お勉強を続けて、指で数えるとこまではたぶん大丈夫になったけど
「まだ、お勉強する」
「もう眠くなっちゃったからまた明日、ね?」
まだぜんぶ覚えられてない気がする。お勉強したいワタシを、もう眠くなったらしいお姉ちゃんが眠らせようとする。
頭がちょっとボンヤリしてるだけでまだ眠くはないのになぁ。あくびが出るだけでまだ眠くはないのに。
……ちょっと目をつぶるだけだよ?すぐまたお勉強するよ?
ワタシがちょっとだけ目をつぶった後目を開けると、目をつぶっていたちょっとの間でお姉ちゃんは眠ってしまっていたみたい。
周りの、虫や獣の鳴き声や感情も、いっぱい変わってて……へんな感じがする、敵じゃないんだけど、こっちに向かってる感情がある。好奇心?ちょっとちがうかなぁ。
確かめておく必要はあると思う、完全に眠ってしまっているお姉ちゃんを起こさないようにテントを出ると、たき火の横で座ってるパパの横でエントントンが丸くなって眠っていた。
「ん?どうかしたのか?」
火を棒でかき混ぜながら、あまり眠くなさそうに話しかけてくるパパ。
「なにか、いる、こっちくる」
「何か感じたのか、敵か?」
「てき、ない。ん〜……へん?」
「敵意ではないけど変な気配がする、って事か」
ワタシにいろいろ聞いてきたあと、ちょっとだけ警戒を強めて、少し座りかたを変えるパパ。
エントントンは眠ったままフスピー、フスピー、って音を鼻から出してる。
それからすぐにガサガサ、と草むらが音を立てて、そこに何かが居る事を知らせて来た。
音と一緒に伝わって来る、敵じゃないよ、攻撃しちゃだめだよ、という感情。なんだか、わざと音を立てているみたい。
何秒かそうして音を立てた後、草むらをかき分けてワタシ達の前にゆっくりと姿を現したその生き物達は……頭に袋をかぶっていた。




