39 黒 赫いごはん
「覚悟はできましたか?シェフの全力焼きでーす」
さっきとは違う、厚くて茶色い布の服に着替えた尖がった人が持って来たのは、赤く光ってるジュウジュウだった。
すごく熱そう。
「とっても良い色に焼き上がりましたよ!会心の出来と言っても過言ではないです」
「ちょっと待て、これどう見ても焼けた鉄の塊なんだけど?」
うれしそうな尖がった人と、あわてたかんじのエントントン。
「このサイズのインゴットだとショートソードくらいは作れそうだな、随分奮発したな」
「ひさしぶりのお客様ですからね」
「えっと、どういう事なのかわかんない」
ふつうにしてるパパと、わからなそうにしてるお姉ちゃん。
お姉ちゃんもわからないのね、ワタシもわからない。エントントンのごはんは鉄なの?
「うちの炉で焼くと、どんな料理もなぜか消し炭さえ残らないので、料理できる物を探してたらこうなりました!」
「炉って聞こえた。いや料理できてないよな?」
「この辺がお肉で、この辺は付け合わせの焼きポテトです」
「更に押して来た!?いや食えないから!無理!無理!」
説明しながら少しずつ前に進む尖がった人と、尖がった人が前に進んだぶん後ろに下がるエントントン。
食べるとこ見てみたいなぁ、ほんとに食べれるのかな?
「いっき!いっき!」
「何でそんな事だけ知ってるのよ」
食べ物を食べさせたい時に言う言葉を使ってみるワタシに、お姉ちゃんが横から声をかけて来る、これで正しいのよね?
「あってる?」
「ああ……うん、だいたい合ってる。ただ食べ物じゃなくて飲み物を勧める時の言葉ね」
いっきはだいたい合ってた。
「とりあえずその辺にしといてやれ、使ってるのは剣みたいだからショートソードでいいと思うぞ」
「もうちょっといじりたいのに、ネタバラシしちゃ駄目ですよ〜」
横から声をかけたパパに文句を言ってる尖がった人
「つまり……どういう事なの?」
「こいつの『オイシイ』は、味じゃなく金銭的な美味しいなんだよ。相手を見て渡す物を変えるんだが、食う物の時は栄養価しか考えないし、鍛治品を渡す時は先ずこうやって遊ぶ。……まぁ、だから客が居ないんだがな」
そう言ってワタシ達の他に人が居ない部屋、食堂を見回すパパ。
「シェフの気まぐれ料理……というかもう全面的にただの気まぐれなのねぇ」
話を聞いてなかったみたいで、ひたすら逃げ回ってるエントントンを、尖がった人はとても楽しそうに追いかけ回していた。
エントントンで遊ぶのに飽きた尖がった人が、また奥の部屋に入って行ったのを見てワタシ達も自分の部屋に戻る事になった。
「アレが気を取り直す前に離れておきたいからな」
という事みたい。鼻のところのヒゲが焦げてチリチリになってぼーっと椅子に座ってるエントントン、ちょっと面白いのになぁ。
部屋に帰ったらする事がなくなったので明日の準備。本があったら良かったんだけど、なぜかぜんぶ置いて来たみたい。
お姉ちゃんと一緒に、袋からワタシの着替えとぬいぐるみを取り出したらする事がなくなったので、また袋から色々取り出 「だめよサクヤ」 だめみたい。
お姉ちゃんに袋を取り上げられてする事がなくなったワタシは、素直に眠る事にした。
……おやすみなさい。




