34 黒 いにしえの末裔
「トンデン側の門って知ってる?」
町に出た所で、お姉ちゃんがワタシとお姉ちゃんのみゅすに道を尋ねてみている。
「ポァ?」
変な返事をしてるみゅす、わかってなさそうな気がするけど、ほんとに言葉がわかるのかな?
「あなた達に乗る練習をしたいから、町の外に出たいの」
お姉ちゃんは、全く気にせずに質問を続けてる。
「ポー」
うなずいて歩き出すみゅす、あれ?ほんとにわかるのかな?
ワタシの考えとは関係なく歩いていくみゅすは、ちゃんと門に連れてきてくれた。
ほんとにかしこいのね、ちょっとみゅすの事がわかった気がする。
門を通る時、門の所の兵士の人がこっちを見て優しそうな顔をして、あっと気付いた顔になって話しかけて来た。
「今はゴブリンの群れが居るから、あんまり遠くには行かない方がいいぞ?」
「ミュスに乗る練習するだけだから大丈夫〜」「だいじょうぶー」「ポー」
忠告してくれる門の兵士の人に、みんなで答えて、ワタシ達はヤドリの町の門を出た。
「オイ、そこの子供!」
町の外の草原は、遠くに森が見えたり、ところどころに岩場がある他はけっこう見晴らしが良くて、かいじゅうとか黒いのとかが居たらすぐに分かりそうだった。
でも旅してた人が襲われてるんだからやっぱりなにか居るのかなあ。
「オイ!聞こえてるんだろ!」
たとえば、さっきからみゅすの後ろを走ってついて来てる、いぬにんげんとか。
お姉ちゃんはあんまり気にしてなさそうだし、いぬにんげんが持ってる武器は腰に着けてる剣だけみたいだから、みゅすに乗ってればもんだいなさそう。
というかこのいぬにんげん、走り過ぎてそろそろ倒れるんじゃないかな。
「そろそろ襲われても平気そうな感じになったかな?」
つぶやいてるお姉ちゃん。
どうやらお姉ちゃんは気がついてほっといたみたい。
お姉ちゃんのみゅすが止まったので、ワタシもみゅすを止めて隣に並んで、いぬにんげんがよろけながら走って来るのを待ってみた。
白い犬の顔、体は人間っぽい、背の高さはお姉ちゃんとおなじくらいかな?
皮のよろいと布のズボンと、腰に剣を身につけてる。
わーうるふ?かな?月をみたら犬になるって本に書いてあったけど、月みえない。
ベロを出してゼーゼーと息をしてから、話し出すわーうるふ。
「お、おまえら、オレ、子分に、してやるから」
「いこ、サクヤ」「うん」
襲って来たんじゃなかったみたいだけど、大した用事でもなかったみたい。
みゅすをまた走らせて、練習練習。
ワタシの黒いみゅすは、ワタシが揺れないように気を使ってくれてるみたいで、走っててもいすはあんまり揺れない。
けっこう早く走らせても、お姉ちゃんの抱っこより揺れないなあ。
お姉ちゃんのみゅすの方は、お姉ちゃんの青い毛がピョンピョン跳ねてるから結構揺れてそうかな。
……あっちもたのしそう、あとで乗せてもらおう。
危なくないのはわかったので、走り回ってる途中でたまにわーうるふの近くを通ったりもしていたら、3回目くらいに通った時にまた手を大きく振って話しかけてきた。
「頼む!手を貸して欲しいんだ!」
なんだか必死そうな感じはする。
「最初からそう言えばいいのに」
と言いながら、またわーうるふのそばでみゅすを止めるお姉ちゃん。
ほっといてみゅすに乗る練習したいのになあ。
お姉ちゃんが話を聞く感じになったのを見て、わーうるふはひと息ついてから話し始めた。
「オレは白い閃光のカミツキ、エンシェントコボルドだ。 因みにエンシェントコボルドというのは古代のコボルドの血を引く高貴な種族だぞ」
「ふーん。 わたしはコノハ、こっちの子はサクヤよ」
おお、わーうるふじゃなかったのね。
「近くでゴブリンが出たという話を聞いてな、エンシェントコボルドたるオレが退治してやろうと思ったんだが、歩いていくと結構遠い……いやもちろん自分で走って行っても何の問題も無いのだが、いくらオレといえど戦地に着くまでにスタミナを消耗してしまっては苦戦する可能性が出て来てしまうのだ」
話が長い。ねえお姉ちゃんまだ聞くのー?
「で?」
機嫌が悪そうな顔になって、一言で返事するお姉ちゃん。
お姉ちゃんも話が長いって思ってるのかな。
「お前のミュスを貸してくれ」
「いこ、サクヤ」「うん」
「ちちちょっとまて、礼はするぞ!」
「いらない、というかミュスが欲しいのなら馬屋さんで買えばいいじゃない」
「気軽にそう言える懐がうらめしい!普通そんな気軽に買えねえよ」
「ポ!クァカカカカ」
「ミュスにも笑われてるし」
「みゅすわらってないよ」
「え?」「え?」
冷めた声でまじめに話してるワタシに、仲良く同時に返事するお姉ちゃんとエントントンボルト。
エントントンは知らないけど、お姉ちゃんはあぶないの意識が足りないと思う。
足りないはワタシがどうにかするんだけどね。
みゅすはまだ岩場の方を見て、なんか変な声を出してる。
鳥がこういう声を出すのは……
「ゴブ!」「ゴブ!」
だいたいこういうとき。
岩場に隠れてたのか、それとも見えないように近付いて来てたのか、すぐそこの岩場のかげから2匹のゴブリンが走り出て来た。
剣と盾を持っているのが2匹と、棒を持っているのが1匹
えっと、えっと……4匹のゴブリンが走り出て来た。
「逃げて!」
もう遅くなった指示を出すお姉ちゃん、お姉ちゃんのみゅすはその指示に従ってあわてて振り向いて
「ひょあ!?」
お姉ちゃんをおっことした。
チョコボいいですよね、チョコボ。
いやミュスですが。




