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ぐーぱんカタパルト  作者: 焼きモンブラン
二章 タビにでる
30/46

30 黒 ひまつぶし

 黒帽子が乗ってきた馬車で、王都への道、ヤドリの町へと向かう。

「人間縛って転がして運ぶのにずいぶん向いた馬車だな。

用意周到な事で、お陰でこっちも遠慮する気失せるよ」

 パパがミノムシの黒帽子の馬車をほめてた。

 黒帽子なんてほめなくてもいいのになぁ。


 ワタシの思いとは関係なく、進んでいく馬車。


 ゆれるゆれる馬車

 ゆれるゆれるワタシ

 ゆれてゆれて……きもちわるい。


 馬車で揺られてるうちに気分が悪くなったワタシは、なにか気を紛らわしたくて馬車の中を探索することにした。


 馬車は、うまと、パパと青毛とワタシが居るぎょしゃだいと、しってるしらない人のケンセンさんとクモキリさんが乗ってる客席、あと兵士の人二人とミノムシ3匹が乗ってる荷台に分かれてる。


 青毛とパパは楽しそうに話してるから、先ずはうまと遊んでみようかな、と思って話し掛けてみても、うまは返事してくれないなあ。

 なんか『邪魔』って感情を発してる。

 前に会ったうまはやさしい感じだったのに、黒帽子の馬車のうまはいじわる。


 仕方ないから、うしろの客席の方にいってみよう。

 ケンセンさんとクモキリさん、名前はさっき聞いたけど、あんまりしらない人だし興味はあるのよね。

 ケンセンさんは赤い髪の、なんとなくパパに似てる感じの人で、クモキリさんはソラ色の髪の穏やかな感じの人。


「おいおい、なんか顔色悪いけど大丈夫か?」

「きもちわるいだいじょうぶない」

「馬車に酔ったのかな、この薬を飲むといいよ」

「うん、のむ」

 ケンセンさんはきもちわるい時にしゃべらせる空気よめない人、クモキリさんはお薬とお水くれたいい人。


「サクヤ、お薬もらったらちゃんとお礼言わなきゃ」

 顔だけ出してきた青毛が教えてくれた。

 おれい?


「おれい」

「ああ、うん、それでいいよ」

「いやなんか微妙におかしい気がするんだが、こういうのはちゃんとしといた方がいいと思うぞ?」

「馬車酔いしてる時に無理させちゃ可哀想だろ」


 ちゃんと、おれいって言ったのにまだ何か喋らせたそうな空気よめない人と、やっぱりいいひとのクモキリさん。

 空気よめない人がうるさいからもっと後ろに行こう。



 兵士の人二人がミノムシを見張ってる荷台は、馬車の後ろの方の景色が見えた。

 青毛の家、みえない。モズさんの家もスズメさんの家も、お風呂小屋も集会所も、もうみえない。

 ワタシは新しい知らない場所に行くんだなあ、って改めて思って、その後に気付いた事。



 ひまつぶし、みつけた。

 馬車酔いは一気に気にならなくなった。



 なんかモゴゴモゴゴ言ってるけど、どれが黒帽子なのかはよくわからない。


「くろぼうし、どれ?」


 兵士の人に聞いてみたけど、わからないみたい。

 やっぱり兵士の人も帽子かぶってないとわからないのね。

 モゴゴうるさい。


 とりあえず黒帽子はどうでもいいや、今やりたい事はこげこげチリチリ、ワタシはまだこいつを許してない、後悔しながら後悔するべき。

 それに、青毛につかう魔法の練習だからこいつで試すのはちょうどいいと思うし。


「馬車酔いよ、馬車酔いよ、馬車酔いよ、馬車酔いよ」


 どんどん顔色が悪くなっていくこげこげ。

 ごめんなさい、の感情があふれてくる。

 モゴゴモゴゴ言ってても、ちゃんと言ってくれないとわかりませーん。


 魔法の中の、相手の身体に直接影響を与える魔法を試してみたかったのだ。

 相手よりかなり魔法の力が強くないとかからないみたいだけど、ワタシだからだいじょうぶ。

 慣れると、怪我を治す魔法なんかも使えるようになるらしいから、練習したかったのよね。


 怪我を治す魔法というのはそこそこ珍しいらしくて、普通の町とかでは魔法での治療は急には受けられないみたいだし。

 もう怪我して泣いてる青毛なんて見たくないから練習にも気合いが入る。


「偏頭痛よ、偏頭痛よ」


 本に載ってたいろんな痛み、覚えてるのは全部試しちゃおう、つぎはゾンビ襲来の本のやつにしようかな〜。


「なにこれ拷問?」


 空気よめない人が荷台まで見物に来た、ほんとうに空気よめない人だなぁ。


「かいふくまほう、れんしゅう」

「そ、それは痛め付けて回復させるとかそういう感じのアレか……何と言うか、最悪の相手に喧嘩売っちまったみたいだな、お前等」

「かいふくまほう、青毛につかう。こいつらはつかわない」

「もはや全面的に殴られ損かよ。というか、コノハのこと青毛って呼んでんのか?」


 んーと、青毛のコノハの事は……呼んだ事あったかなぁ?

 んーと……えっと……んー……。


「なんかすまん、そんな難問だとは思わなかった」


 ワタシが首をひねっていると、なぜか謝って来る空気よめない人。

 空気がよめないんだから変なこと言うのは仕方ないよね。ワタシはその辺はちゃんとわかるよ。


「まぁとにかく、青毛なんぞと呼ぶのはやめといてやってくれ。回復魔法はコノハに、って位だから仲は良いんだろうけど、そのうち泣くかも知れん」

「んー……わかった?」


 首を傾げながらうなづく。

 青毛を青毛って呼んだら泣くの?

 よくわからない。でも青毛、コノハを泣かせるのはイヤ。


「呼びたくなさそうだな? なんか、代わりの呼び名が要りそうな感じか?」


 うん、とうなづく。

 青毛にはコノハって呼んでって言われてない。

 他の色々な物の名前は教えてくれたけど、自分の名前は教えてくれなかった。


「じゃあ、お姉ちゃんって呼んでやりな、大喜びすると思うぞ」


 年上の女の人全般の呼び方だけど、それでほんとに喜ぶのかな?空気よめない人の言うことだしアテにはしないけど、まぁ別にいいや。


「うん」


 青毛がお姉ちゃんの青毛になった所で、馬車が止まった。

 どうやら町に着いたらしい、お姉ちゃんの青毛が迎えに来てくれたので、手を繋いでついていく。


「ああ、やっぱちゃんと仲は良いんだな」


 背中に届く声。

 空気よめない人はやっぱり空気よめない人だった。

 2章開始です。

 2章からの変更点として、かなり迷ったんですがコノハ視点を無くす事にしました。

 いつかコノハ視点も書きたいなーとは思ってるので、とりあえず各話タイトルの表記は変更しない方向で行きます。

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