29 黒 旅立ち
モズさんの家に着いたので、当然本を読む事にした。
青毛は、丸いキラキラをモズさんと二人で見ながら仲良く話してるから、ほっといて良さそう。
そのまま本を読んでいると、パパが入って来た。
モズさんに何か渡している、あれは知ってる気がする、前に読んだ本に書いてあった物かな?
えっと……たしか操人の像
蛇に絡まれてる物がヒトならヒト、ケモノならケモノを操る像、操る相手に似てれば似てる程効果が高い物。
じゃほうのじゅぐ?で、持ってちゃいけない物だったと思うけどなぁ。
もうひとつは丸いもの、青毛達が見てたキラキラよりちょっと小さめ、きれいだけど流石に丸いだけじゃ何なのかはわからない。
それに興味を惹かれて本を置いたワタシに気付いたモズさんが、ワタシに説明してくれた。
「これは読心の水晶玉じゃな。 他人の心が読める品じゃ、これで心の弱った相手を探して、こっちの操人の像で操る。 おぬしが狙われた様子じゃったが、全く似てはおらんから、余程弱ってなければ効果なんぞないだろうな。 体はどうもなかったかの?」
「しゅうかいじょ、おこりいっぱいこわかった。 くろぼうしおバカだった」
「通訳を呼べ!……おや?コノハがおらんのう」
「ああ、王都に行くと言ったら、準備して来ると言って物凄い勢いで走って行ったよ」
「やはりあの年頃の娘は王都とか憧れるのじゃろうな」
質問に答えたらこの扱いである。
モズさんの説明を聞いてる時に、パパと何か話した後に変な走り方で走って行った青毛は、まあ嬉しそうだったし放っといても大丈夫だと思う。
「所で、コレの出処はあの狩人の関係かの?」
本を読む気がなくなって、する事がなくなったワタシを膝の上に抱きかかえながら、お茶を注ぎ直して、話し込む準備に入るモズさん。
「ああ、エゼンがコノハの怪我が矢傷だと知っていた。 突いて見たら、メルシュで樹皇が代替わりしたらしくてな、何が何でもタネビトを欲しているらしい」
樹皇、名前が長い隣の国にある、神樹教団のえらいひとだったかな?
本ではだいたい悪役だったから、たぶん悪い奴。
「隣国のタネビトを狙うか、メは相変わらずじゃのう。 ハーフが欲しいという事は確実にタネビトの血がなければならんのじゃろうな、神子にでも据えるのかのう?」
「タネビトってのは自称になるから不確実ってのはあるしな、アイツと俺の娘でハーフなのは確実、年の頃も何か教え込むには丁度良さそうとなれば目をつけられても仕方ないが」
言葉を止めてお茶を飲んで、勿体ぶるパパ
「それでいきなり狼をけしかけたりして生死を問わないというのは、いくらなんでもおかしい。 恐らくだが反対勢力のような物があるんじゃないかと睨んでる」
「それがエゼン達かの?」
「断定はできないがな。 で、いつまで続くか分からないが、少なくともコノハ達がこれ以上危険になるような事は避けたい」
「じゃが、王都に行けば別の意味でも危険は避けられんぞ?」
えーと、えーと。……お茶にがい。
「ああ、だがこのまま手をこまねいて居ては、人数で押して来られた時に対処できない、詰みが見えている」
「確かに、多数でよその国の村を攻めるとかもはや戦争じゃが、少数でとは言え一度仕掛けて来た事じゃし、いつかやるじゃろうな」
「そう思う。 当面は王都あたりで様子を見て、長引きそうなら王に村の防衛の強化を頼むつもりだ、コノハとサクヤの安全さえ確保出来ていれば幾らでも手はあるからな」
「つまりしばらくはコノハやサクヤと会えなくなるんじゃな〜」
ほっぺたをくっつけてグリグリして来るモズさん、つまり……どういう事?
長くて難しい話で、付いて行けない。
「おぬしらは王都に遊びに行く、という事じゃよ、楽しんで来るがよいぞ」
なるほど! 最初からそう言ってくれれば良かったのに、回りくどい話である。
名残りを惜しんだモズさんに抱かれて、パパと一緒に青毛の家に帰ると
テーブルの部屋にあふれる袋の山があった。
「これとこれとこれは着替え、これはお風呂セット、これは……」
それぞれの袋を説明してる青毛、これだけあれば準備は万全だと思う、ワタシだとこんなに思い浮かばないし。
でも、パパとモズさんはちょっと気に入らなかったみたいで、足りない物を……あれ?減らすの?
結局、えっと、いち、に、さん、三ふくろを、パパが二ふくろ、青毛とワタシが一ふくろずつ持って行く事になった。
何が入ってるのかな〜。
「着替えだけでいいと言っただろう」
「準備してたら持って行きたい物が増えちゃったんだもん〜」
開ける前に中身を言われてしまった。
まあ開けるんだけどね。
「待ってサクヤまだ開けちゃダメ〜」
袋をひっくり返そうとしたワタシをなぜか止める青毛、だって袋から出さないと中身わかんないよ?
……とりあげられました。
「向こうが動く前に動いておきたいから、早めに出よう。 また帰って来るんだから、要らない物は置いて行っていい」
仕方ないなぁ、と歩き出そうとした時にふと別の袋に見えたぬいぐるみを袋から引きずり出して準備完了。
パパも何も言わなかったからたぶん要らなくない筈である。
ワタシと青毛とパパ、あと見たことある人とミノムシを乗せて、馬車は旅立つ
ここに居たい、と思った優しい村を出て、ワタシは何処に向かうんだろう
王都ってどんな所なんだろう
先に聞かないほうが、きっと面白い。
そう思ったワタシは、町の事をパパに色々聞いている青毛達の会話に耳を塞いで、ぬいぐるみに顔をうずめた。




