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ぐーぱんカタパルト  作者: 焼きモンブラン
一章 ヒトになる
3/46

3 パパとソリ

「パパ」

 クマの反対側に、頭から茶色い毛を生やしている、青い毛の生き物に似た感じの大きめの生き物が居た。


 青い毛の生き物とひっついて、お互いに安堵の感情を発しながら何か音を出しているのだが、

「コノハ」という音以外は長くて良く分からない。

 うずうずする。

 さっき覚えたばかりの遊び(モノマネ)をやりたいのだが、青い毛の生き物はずっと茶色い毛の生き物の方を見ていてこっちを向かない。

ーーやがて2匹がこちらに顔を向けて来た。

 手を振り回しながら、またこちらに向けて何か音を出して来る青い毛の生き物。

 つぎはこれをするんですね、わかります。


 そうしている間に、その辺にある枝を集めて何かしている茶色い毛の生き物。

 集めた枝を、なにか背中の方から出した物で絡めて平たくしている。


「デキタゾ」


 茶色い毛の生き物が青い毛の生き物の方を見て音を出し、枝のカタマリの上に自分が

とどめさす。 をした大きな黒っぽい獣を乗せている。


「ハーイ」


 こちらにくっついて来る青い毛の生き物

真似をしてくっつき返してみたら、持ち上げられた。


 持ち上げられた所を更に、茶色い毛の生き物からまとめて持ち上げられ、枝のカタマリの上に乗せた獣の上に乗せられて、一息つく暇もなく青い毛の生き物がくっつく力を強めて来た。


「シュッパーツ」


 青い毛の生き物が音を出して、真似した所で足元が揺れる。

 茶色い毛の生き物が、獣を引っ張って運んでいるらしい。

 流れる景色、揺れる足元、さわぐ青い毛、そうしてワタシは森を出た。



side:コノハ


「パパ!」

 モノマネ女の子と遊んでいたら、パパが迎えに来てくれた。

 村の誰かから、森でクマを見かけた事とわたしが森に入ったという連絡を受けて、探しに来たらクマが走ったらしい痕跡を見付けて追って来たそうだ。


「ほんとに……心配したんだぞ、コノハ」

 普段の皮のジャケットと手斧ではなく、鉄の胸当てと剣を身につけているパパ。

 マジメ装備という事は本当に危なかったんだよねー、と改めて実感する。


「この子が助けてくれたからどうもないって〜」


  黒髪の女の子を軽く紹介する。


「そうか。コノハが世話になった、感謝する……ん?この子がこのクマを?この子の親が居る訳じゃないのか?」


 軽く混乱してるパパ。

 直接見てなかったら信じられないのはわからなくもない。

 5メートルくらいあるクマだし、わたしより小さい女の子、わたしも今だに夢みたいだ。

 でも一々パパの混乱ごときに付き合っては居られない。


「そうだ!ねえパパ、この子うちに連れてってもいい?」

「そだ、ねぱぱのこれててもいー」


 女の子の方を向いたまま、背中越しにわたしの中で既に決定していた事項をパパに話し掛けると、女の子が待ってました、とばかりに真似を始める。

 言葉が少し長くなると難しいようで、真似できてないのだけど可愛いから問題ない。

「いや、よその子を勝手に連れて行く訳にも行かないだろう。

というかその子は言葉が分からないのか?」


 パパが考え込む。


「確かに知った以上このまま森に放置もできないか」

 1人で何かうなづいて


「わかった、後の事は後で考えるとして、一先ず連れて行こう。

ついでにこのクマも運び出してしまった方が良さそうだし、ソリを作るからしばらくその子と遊んでてくれ」

 と言うと、背負い袋からロープを取り出し、その辺の木の枝を組み合わせて即席の荷運びソリを作り始める。


 任せてくださいませお父様。

 村にはわたし以外に子供が居ないから、こうして遊ぶという事が滅多にできなくて、小さい子と遊べるのは嬉しかったり。


 荒ぶる鷹のポーズを取り、2人で羽ばたく。

 1人ではやれない事でも、2人ならやれるんです。


「出来たぞ〜」

 女の子と遊んでる間に、木の枝を組み合わせた上にクマを乗せてロープでぐるぐる巻きにしたソリが完成した。

 普段は丸太とかを運ぶ時に作るソリで、これを1人で運べるのは村ではパパぐらい。


「はーい」

 女の子を抱えてクマの上に登ろうとすると女の子もぎゅーっと抱き付いて来た。

 そうかそうか、やっぱりあなたもうちに来たいのね!


 それはそれとして、手が塞がってて登りにくいなぁ、と思った直後にパパが手伝ってくれて、クマ(シート)に登る。


「しっかり掴まれよー」

 と注意してくるパパの背中。

 荷運びソリには何度か乗った事があるから大丈夫。


「しゅっぱ〜つ!」

「しゅぱーつ」


 森の中を、わたしと女の子を乗せてパパゾリが走る。

 わたしの前に突然現れた死の影は、ちいさな女の子(非日常)へと姿を変えて、わたしの日常の一部として

 あたたかいぬくもりと共にわたしの家にやって来る事になったのでした。

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