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ぐーぱんカタパルト  作者: 焼きモンブラン
一章 ヒトになる
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26 青 みのむしと投げ縄

 目が覚めると、自分のベッドだった。

 誰がやってくれたのか、薬草とタオルで押さえていた傷口はきちんと手当てされて、包帯が巻かれている。


 泣き腫らした顔でハム王(ぬいぐるみ)を抱えて眠っているサクヤを起こさないようにして飲み物を取りに行くと、パパがテーブルで目を擦っていた。


「起きたか、コノハ」

「うん、おはよ?」

「おはよう」


 立ち上がったパパに、抱きしめられた。


「無事で良かった」


 昨日の襲撃で、襲って来たのはオオカミの群れと狩人2人だったそうだ。

 狩人、弓使いが居るのに気付いて合図を出さなかったらしい。

 わたしの暴走だったのねぇ。

 まぁ暴走の代償としてはとても痛い代償でした、とっても。


 獣が凶暴化する薬を獣の好むエサに混ぜ混んで、少しずつ村の方に誘導するという手口だったみたいです。


「みんなも心配していたし、具合が良いなら顔を見せに行こうかと思うがどうする?」

「うん、わたしはだいじょうぶかな、もうそんなには痛くないし」


 うそですまだ超痛いです。でも昨日よりはマシだし、あんまり心配かけたくない。


「じゃあサクヤが起きたら出掛けるか」

「はーい、じゃあサクヤ見てくる」


 起こしてくる、じゃないですよ、無理に起こすの可哀想だし。

 でも顔を見に行ったらもう起きて……るのかな?これは?

 ぼーっとベッドに座ってるサクヤ、抱き締めてるハム王(ぬいぐるみ)の、ウエストのくびれがすごいことになってたり


 わたしの顔を見ると明るい表情になって、やばい!あれはジャンプ攻撃の構えだ!

 慌てて近寄ってこちらから抱き上げると、首に手を回して抱き付いて来るサクヤ。

 さっき見たハム王(ぬいぐるみ)の惨状が、一瞬頭をよぎったんだけど、もちろんだいじょうぶでした。


「て、いたい?」

「だいじょうぶだよ〜」

 痛くないよ、もう全く問題ありませんよ、今だけは。



 パパとサクヤと一緒に手を繋いで、みんなが集まってるらしい集会所に行って見ると、スズメさんとイワさんと、お医者さんのイジュさん、あと兵士の3人が居て


「みのむし」


 つぶやくサクヤ。


 部屋の真ん中あたりに、みのむしが2匹ぶら下がってました。

 ロープでぐるぐる巻きになって逆さ吊りになってるみのむしは、ボコボコの顔で鼻に棒が刺してあったり、顔中のいたるところに洗濯バサミが大量に挟んであったり

 何というか、一貫性がないボコられ方というやつでしょうか、若干引くというか怪我してる女の子に見せる物じゃありませんよね?これ。


「大丈夫だよ、絶対に簡単には死なせないから」


 なにがどう大丈夫なのかはわからないしわかりたくないけど、歯とメガネをキラリと光らせながら優しそうな顔でサラリと鬼の宣告をするイジュさん。

 銀髪と緑の瞳の、穏やかな青年って感じの人なんだけどね。



「この小さな女の子が、お前らが殺そうとした子だ」


 スズメさん素敵な紹介ありがとう、狩られたみのむしに、わたしを紹介してくれるスズメさん、流石にちょっと、かなり、ものすごく、居辛いんですけど。


 最後の頼みの綱のイワさんは、なんか無言で刃物研いでるよ目がヒゲで隠れてて見えないよ。


「どうしてもお前の意見が必要だと押し通されてな」


 申し訳なさそうなパパ。


「俺としては、もうこのまま止めを刺してやるのが慈悲だと考えてるんだが」


 それをわたしに決めさせようとかあんたほんとに親ですか。


「さすがに、人を殺すのはちょっと、その」

「金のために村を襲う奴らだ、俺達だからどうにかなったが、普通の村なら危なかっただろう」


 うなづくスズメさんとイジュさん、イワさんはひたすらナイフを研いでます

 だめだ、この人達殺る気満々ですよ?


 やだよ処刑のゴーサインなんて出したくないよ、最後に残った兵士の3人にすがる目を向けると、目を逸らされた。


 もう逃げ出していいかなぁ、と泣きたくなった時に、集会所の外に馬車が着く音がした。

 ナイスタイミング!


「ば、ばしゃ来たね、なんだろう〜」


 とりあえずこの場から逃げ出せれば何でもいいや、入り口のドアを開けると、前に村に来た事のある商人のエゼンさんだった。


「いらっしゃい、エゼンさん」

「ああ、コノハちゃんだったね、おはよう。何か物々しい様子だがどうかしたのかな?」


 おっきい馬車だなぁと思いながら、降りてきたエゼンさんに答えようとすると、パパが引き継いでくれた。


「ちょっと賊の襲撃があって、返り討ちにしたんですよ なかなかしぶとくて背後関係までは洗えてませんが」


「おお、流石は竜狩りのマツリチームですなぁ、お見事です」

「昔の話です」


 うちの村の人達は、わたしが生まれる前に竜を狩ったという噂があったりします。

 噂が、というのは、本人達に聞いても今みたいに昔のことだから、って言って肯定も否定もしてくれないのです。

 武勇伝とか、あったら聞いてみたいんだけど、やんわりとだったり強引にだったり、会話を続けてくれなくなるのよね。


 マツリチーム、チームマツリ、マツリ組、とかいろいろ呼び名がある、という事は知ってるんだけど、ガードが硬くて。


「ところで、サクヤちゃんでしたか、もう一人の子はどちらに?」


 あれ?そういえばサクヤが居ない、エゼンさんの事嫌ってたみたいだから会いたくないのかな?

 探して見ると、どうやって登ったのやら天井の梁に足を引っ掛けて、逆さまにぶらさがってました。

 居ないと思ったら何やってるんだかこの子は。

 余ったロープで何か遊んでるみたいだし、なんか楽しそうだからほっとこう。


「楽しそうで結構ですな」


 わたしの視線でサクヤに気付いたみたいで、やさしい表情で微笑むエゼンさん、子供好きなのね。


 話していると、サクヤが今度は手に持ってたロープをわたしにペチペチぶつけてくる、いたい!そこ傷口!傷口!

 なんか、先を輪っかにしたロープでわたしを釣り上げようとしてるみたい。いま人と話してるとこなんだけどなあ。


「おや、その怪我は、矢傷はきちんと処理しておかないと毒でも塗ってあったら大変ですよ」

「そうですね〜、わたしなんだか気絶しちゃってたみたいで、手当てしてるとこ見てないからちょっと気になってて〜」


 サクヤはわたしを釣り上げるのはあきらめたみたいだけど、横に垂れてるロープがチラチラとすごい邪魔だなあ。


「コノハ、サクヤが退屈してるみたいだし、ちょっとモズのとこにでも遊びに行ってくるといい」


 パパが苦笑いしながら追い出しにかかってきた。

 はぁ〜い、サクヤが邪魔してごめんなさ〜い。

 ……サクヤは、呼んだらすぐに降りて来てくれました

 登らなくて済んでよかった。

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