25 青 ぐーぱんカタパルト
きれいな満月の月明かりに照らされて、夜なのにけっこう明るい、屋根の上。
サクヤがじっと見ている方を見ると、走っていく人影が2つ、たぶんパパ達なんだろうと思うけど、パパともう1人は誰だろ。
スズメさんかなぁ?モズさんはどうしたのかな。
パパ達の動きが変わった事で、戦闘が始まったんだなって分かった。
でも合図がないよ、パパ。
パパが合図を出すって言ったからには、絶対これが合図だとわかる感じで出して来る筈なんだけどなぁ。
サクヤもなんか首を傾げてる。
右に傾げて、左に傾げて、また右に、ユラユラ揺れてる。
この子なりにすごい難問に直面してるのかも知れない
もしかして、パパは合図を出すような余裕がないのかな?
だとしたら早くみんなを起こさないと!
武器庫から持ち出した鉄の盾と、修理用の鉄のハンマーを打ち鳴らして叫ぶ、みんな起きて!パパ達を助けて!
その直後だった。
右腕に激しい痛みが走って、その場に倒れ込む。
イタイ、イタイ、イタイ
心臓が脈打つたびに繰り返す痛み。
痛みの元に生えている矢を見て痛い、矢で射られたんだと痛い、理解した痛い。
どうしよう、痛みで身体が動かないよ。
「ふゃぁー!ふゃぁー!」
自分が射られたみたいに痛みの声を上げてるサクヤがわたしを引っ張って窓の中にいたいいたいいたい。
月明かりの射し込む屋根裏部屋で、全泣きのサクヤが覚悟を決めた表情になって涙を拭きながらこちらを見る
えっと、サクヤさん何の覚悟を決めましたかぎゃぁーーー!!!
わたしに刺さってた矢を一気に引き抜くサクヤさん。
傷口から一気に血が出る、やばいわたしこれで死ぬかも。
でも、なんかもう吹っ切れた気がする、矢が抜けた事で痛みが多少マシになったのかもしれない、そうにちがいない。
血止めの薬草は、パパの装備と一緒にすぐそこに置いてあるから、それを使えばいいよね。
サクヤはどうやら薬草の事も覚えたみたいで、迷わず薬草袋を持って来て1番傷にしみる薬草を選ぼうとしてるサクヤさん、まってちょっとまって、自分でやる、自分でやるから!
うなづいて、窓から屋根の上に登って行くサクヤ。
何するつもり?と思いながらも、自分の手当てはちゃんとやらないと、ほんとに死んじゃいそう。
傷口にしみない薬草を押し付けて血止めをしながら包帯を、巻きたい、巻きたいけど手が足りないのであきらめてタオルで強めに押さえてみると、これならすぐに血は止まってくれそうかな。
そう思った時、聞こえてきたのは叫び声と大きな金属音
「てきしゅ!てきしゅ!みんなおきて!」
鉄の盾をハンマーで打ち鳴らして、わたしの真似をしている!なにやってるのサクヤ!
立ち上がろうとして、足がもつれる。
だめ!サクヤ!だめ!
ガッ、と小さな音がして、どうやらサクヤが盾で矢を防いだと分かった。
安心で倒れそうになる心と身体、安心するのはまだです、まだ倒れちゃだめ、わたし。
サクヤを見ると、なにかをにらみつけてるみたい、チラッとハンマーを見て、また遠くをにらむ。
「いたみよ!」
何かの魔法を使っている?
「いたみよ、いたみよ、いたみよ、いたみよ……」
なにその呪文こわい。
右手を掲げたサクヤの、その手のひらの上に集まって行くナニカ。
そのカタチは……というか痛みってそれですかサクヤさん。
サクヤの手のひらの上にあるモノは、黒い大きな、右手のグーパンチでした。
ああ、狙ってる狙ってる、というかそれカタパルトで飛ばすサイズだと思うなあ。
まあ、今更だけど。
パパパパパンッパパパパパパパパパパ
ここまでひびいて来る音、あれ花火だったのね。
当たったのかそうじゃないのか、わたしには見えないけど
ふふん、って表情のサクヤを見ると当たったんだと思う。
やりとげた顔でこちらに飛び込んまってちょっとまっtいたいいたいいたいいたい!
サクヤに抱きつかれて、一緒に倒れ込んだわたしは、気が抜けたのかな〜
起き上がれないまま、周りが真っ暗になっていくのを感じた。




