24 黒 ワタシの魔法
月明かりの中、登った屋根の上から、森に走っていくパパとスズメさんが見える。
走り行く先に敵が居た、オオカミの群れみたいだ。
でもおかしい、パパ達は何も合図を出そうとしない、なんか様子がへん。
何もないとこでいきなり剣を振ってたりする、あれは合図とは思えないんだけどなあ。
あ、こっちを見た、なんか首を横に振ってる。
あれは「ダメ」の合図だったと思うけど、青毛は見えてるのかな?
えっと、ダメの合図は合図?合図じゃない?
合図じゃないは合図でえっとえっと……?
どうしていいのかわからなくなったワタシの横で、青毛が手に持って準備していたアイアンシールドとアイアンハンマーを打ち鳴らして叫ぶ。
「敵襲!敵襲!みんな起きてー!」
ああ、やっぱりあれは合図だったんだ、さすが青毛、ちゃんと見分けがつくのね。
感心したワタシの隣で、青毛が倒れた。
え?
青毛の手になにか生えてる、木の棒?
これは、矢だ!弓で飛ばすやつ!
動かなくなった青毛を、屋根の窓から家の天井裏の部屋の中へ引きずり込む。
えっと、えっと、えっと、えっと……
考えがまとまらない、おちつけ、おちつけ青毛はまだ死んでない。
矢が刺さったらえっと、矢を抜いて血を止める!
矢を引き抜くと、悲鳴を上げて飛び起きる青毛、よかった、ちゃんと生きてた。
矢尻までちゃんと抜けてるからだいじょうぶだと思う
つぎは血を止める、と思ったら青毛が
「自分でやるから」
と言い出したから任せることにした。
ワタシにはやる事があるから。
アイアンシールドとアイアンハンマーを持って、屋根の上に戻る。
「敵襲!敵襲!みんなおきて!」
鉄を打ち鳴らし、叫ぶ。来い!
さっきと同じ方から飛んで来た矢を、盾ではじく。見つけた、弓のやつ。
見つけたんだけど、どうやって攻撃しよう
アイアンハンマーはちょっと投げるのには向いてないかなあ。
ああ、そうか、無いなら作ればいいんだ。
魔法を使うのは集中力、わかりやすい。
やりたいのはアイツに思い知らせる事
アイツが青毛にした痛いよりいっぱい痛いにする!
「痛みよ!」
手のひらの上にチカラが集まる、まだ足りない。
「痛みよ、痛みよ、痛みよ、痛みよ……」
上に向けた手のひらに伝わってくる重み、よし。
わたしの魔法は大きすぎて飛ばない、それを更に大きくしたんだから、自分では飛んでいかない。
なら投げればいい、小石を投げるのと同じ事、いっぱい練習した。
力を込めすぎない、抜きすぎない、狙いを定めて、投げる!
ワタシが一回しか騒がなかったから、倒したと思ってたんだと思う。
完全に油断していたアイツに、直撃する痛みの塊。
パパパパパンッパパパパパパパパパパ
モズさんが見せてくれた花火の魔法の種類のひとつ、かんしゃく玉
投げたら爆発する、べんりな魔法。
ひとつひとつの威力は弱いけど、いっぱい投げればーー
アイツが、くろくろ焦げの、チリチリパーマになって倒れているのを確認して
気が済んだワタシは、いつの間にか窓からのぞいてた青毛の所に帰った。




