↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/42

第10話 「処分の日」

巨大な影が空に立っていた。


灰色の雲のさらに上。


輪郭すら曖昧。


だが。


見ているだけで分かる。


格が違う。


怪物より。


記録者より。


監査官より。


何もかも。


レインの背中を冷たい汗が流れる。


妹は震えていた。


「……あれ」


声が掠れる。


「世界の外にいる」


誰も意味が分からない。


だが。


記録者だけが目を閉じた。


「見られたか」


それだけだった。


その一言で十分だった。


あの存在を。


知っている。


そして。


恐れている。


初めて。


記録者が。


恐怖した。


その瞬間。


怪物が咆哮する。


無数の腕。


全方位。


地面を埋め尽くす。


クロウが叫ぶ。


「来るぞ!」


レインは前へ出る。


もう迷わない。


守る。


それだけだ。


「交換」


能力発動。


腕。


腕。


腕。


全ての位置を交換する。


怪物の攻撃が。


怪物自身を貫く。


轟音。


崩壊。


連鎖。


さらに交換。


落下する瓦礫。


怪物の腕。


地面。


全て利用する。


今までで最大規模。


圧倒的反撃。


リズが笑う。


「やっとだな!」


クロウも驚く。


交換能力。


ここまで成長していた。


怪物の身体が崩れる。


膝をつく。


初めてだった。


怪物が押される。


読者が初めて見る光景。


勝てる。


そう思った瞬間。


記録者が言った。


「まだだ」


怪物の胸部が開く。


鎖。


人影。


そして。


無数の手。


閉じ込められた者達の手。


全てが胸部へ吸い込まれる。


怪物が再生する。


いや。


進化する。


レインの表情が変わる。


記録者は静かだった。


怒りもない。


悲しみもない。


ただ。


壊れている。


「忘れられたくない」


それだけ。


リズの言葉も。


レインの覚悟も。


届いていない。


理解できない。


だから怖い。


本当に。


壊れている。


その時だった。


クロウが前へ出る。


「もうやめろ」


全員が振り向く。


クロウは記録者を見ていた。


「覚えている」


「お前を」


記録者の動きが止まる。


初めて。


完全に。


止まる。


クロウの拳が震えていた。


「二十年前」


「俺が署名した」


沈黙。


レインも。


リズも。


妹も。


動けない。


クロウは続ける。


「価値ゼロ」


「処分対象」


「不要人員」


「そう判断した」


唇を噛む。


血が流れる。


「俺だ」


空気が凍る。


クロウだった。


記録者を。


処分したのは。


クロウだった。


記録者は何も言わない。


ただ見ている。


クロウを。


ずっと。


二十年間。


待ち続けていたように。


レインは理解する。


これが罪だ。


逃げただけでは消えない。


その時。


頭痛。


再び。


白い世界。


今度は違う。


誰かの手ではない。


泣いている。


自分が。


幼いレインが。


そして。


目の前の誰かに叫んでいる。


『行くな!』


そこで途切れる。


レインは膝をつく。


また一つ。


新しい記憶。


今までとは違う。


悲しみ。


喪失。


別れ。


感情を伴った記憶。


記録者が見ている。


静かに。


「思い出しているな」


レインは立ち上がる。


笑う。


「全部取り戻す」


初めて。


記録者の目が揺れた。


その瞬間。


空の巨大な影が。


ゆっくりと。


こちらへ顔を向けた。


世界が震える。


怪物が怯える。


記録者も。


クロウも。


全員が凍る。


格が違う。


存在そのものが違う。


そして。


妹だけが。


その顔を見てしまう。


絶望したように。


呟く。


「……お兄ちゃん?」


レインの思考が止まる。


巨大な影。


自分。


妹。


記憶。


全てが繋がりそうになる。


第二章最大の真実が。


すぐそこまで迫っていた。


(第11話へ)

読んでいただきありがとうございます。

感想・評価励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。