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WitchDoll〜傀儡人形は夢を見る〜  作者: うつろ
Chapter-6【ロドモンテ編】

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〈6-19〉新たなる魔術師

メルティは暫くその場を動かなかった。

落ちていく氷の結晶の中、彼は静かにゲラーテの姿を見つめる。


静かに涙を流しながら、ゲラーテの胸を貫いた氷へと視線を落とす。


「………………………………」


ちょうどその時、リゼットはメルティの元へと辿り着いていた。


「………………………あっ」

彼女は地へ足を降ろして声をかけようとするが、メルティからこぼれ落ちる涙を見て、声を飲み込んだ。


ただ、静かにその光景を見つめていた。


空を舞う氷が落ち、いつもの空気が周囲を包むと


「来てたんだ」

メルティは初めてリゼットの存在に気付き、視線を向ける。


「………………うん」

リゼットは小さく返事をすると、メルティはゲラーテに背を向け一歩を踏み出す。


「帰ろっか」


そう言うと、二人はホテルへと戻って行った。




─────────────────────────




「あ!!!!!」

リゼットが扉を開けると、ただいまの挨拶を言う前にシキが大きく声を発する。


「戻ってきたぁぁああああ!!!!!」


リゼットとメルティの帰還にシキが飛び跳ねると


「うるせぇぇええええ!!!」

「うっさいのよ!!!!」

と、目を覚ましたアルケーとメルゴの二人から怒りの言葉をくらう。


そんなやり取りをやれやれと見つめながらメルティは部屋へ入る。

先程までの表情はもう消え去り、いつもの笑顔が戻っていた。


「ごめん、遅くなった。それで……」

メルティはベッドの上にいるテンペスとメルゴを見つめると

「なんで君達もいるんだい?」

と、純粋な疑問を口にする。


「俺はこいつとダチになった!!なっ!!!」

テンペスは体を起こすと、隣にいたアルケーの腕を強引につかみ、肩を組む。

「なってねぇよ!つか離せ!!」

そんな彼の腕をアルケーは無理やり引き離した。


「アタシは助けられたのよ。こいつに」

メルゴはそう小さく声を漏らすと、ヴェーターを指さす。

そんなヴェーターは頬を軽く掻きながら小さく微笑んだ。


「なるほど。まぁ…大丈夫そうだしいいか」


メルティは無理矢理この状況を承諾すると、窓際の手すりに腰をかける。

暫く目を瞑り考え、そして静かに口を開く。


「メルゴ、テンペス。君達二人は今日をもってセフィラの魔術師から抜けてもらう」


メルティは鋭い視線で二人を見つめる。

その視線と声には微かに冷たさが宿っており、まるでゲラーテの面影を感じるかのようだった。


「まっ!しゃーなしだな!」

「アタシは最初からそのつもりよ。散々なことしてきたわけだし、お咎め無しじゃ話にならないでしょ?」


二人の承諾に、メルティは小さく頷く。


「リゼット、シキ、スピカ、ヴェーター、アルケー、ラミア」


次にメルティは六人を見渡しながらその名を呼んだ。

突然名を呼ばれた六人は、一斉にメルティへと視線を向ける。


「君達が、新しいセフィラの魔術師だ」


突然の一言だった。

あまりの衝撃からか、少しの間沈黙の空気が走る。


そして

「えええぇぇぇぇえええええええ!!!!!!」

「はぁぁあああああああ!!!!??」


シキとアルケーが同時に声を上げた。

あまりにも大きな二人の声に、メルティは無意識に強く目を瞑る。


「私が…セフィラの魔術師…………」

「ぼ、僕なんかがセフィラだなんて…」

「まさかこんな結果になるなんて、さすがに予想できなかったわ」

「………………………」


リゼット達もまた、その驚きを隠せず声を漏らす。

そんな六人の反応にメルティは過去の自分を思い出す。


ゲラーテにセフィラの魔術師として迎え入れられた時を。


そんな思い出に軽く浸りながら、再びその口を開いた。


「魔術師名と席ももう決めてあるんだけど、その前にもう一つ。皆に言わなきゃいけないことがある」


そう告げると、メルティは左手から氷の塊を形成し始めた。


「そ、それって!!」

「お前!氷魔法も使えたのか!!!」


メルゴとテンペスがその光景にすぐさま反応する。


メルティはそんな二人の声に首を振ると、自身の本当の魔法について明かした。


本来の魔法は略奪魔法という魔法であり、それは他者から一つ魔法を奪えること。

今まで使ってきた炎魔法は育ての親のものであり、この氷はゲラーテのものであること。


そして、それは奪ったものではなく、継承したものとしてこの身に宿していくことを。


メルティは、これまで隠していたことを全て明かした。


それを聞いていたリゼット達は、ただ黙ってメルティを見つめていた。

何一つ言葉を漏らすこと無く、ただ静かに。


「これが、僕の全てさ」

メルティが言葉を終わらせると

「継承、ね。素敵な魔法じゃない」

初めに声を発したのはスピカだった。


「きっとあなたの中には二人の意思が眠っているんでしょうね。そして、この二人の魔法を選んだってことは、きっとあなたにとって二人は特別な人だったということでしょ?」


その言葉に、メルティはおおきく瞳を輝かせる。

まるで零れ落ちそうな涙を抑えるように天上を見上げると、小さく息を吐く。


「さて」


彼はそっと涙を堪え、再びリゼット達へと向き直る。


「新たなるセフィラの魔術師を発表する」


そしてメルティは一人ずつその名と魔術師名、そして席を口にした。




───────────────────────




そして翌日、新たなセフィラの魔術師の誕生は、世界各地に大きな反響を巻き起こした。


その名は瞬く間に世界全土へと知れ渡っていた。

そしてそれはエウケー魔法学園が存在するアストルフォも例外では無い。


「こ、こいつらって……」

「あの異常者達じゃねぇか!!」

「なんか知らない子もいるけど、どういう関係?」


それぞれの家に届いた新聞。

その内容を、皆が目を丸くし、大きく口を開きながら読み上げる。


その記事にはこう書かれていた。


───────────────────────────


セフィラの魔術師であるヴェルテクス、ゲラーテ、トルポルが死亡。

メルゴ、テンペスが脱退を決意。


それと共に、新たなるセフィラの魔術師が誕生


第一席【傀儡の魔術師】リゼット

第二席【霊魂の魔術師】シキ

第三席【継承の魔術師】メルティ

第四席【操血の魔術師】ラミア

第五席【無限の魔術師】アルケー

第六席【天球の魔術師】スピカ

第七席【拒絶の魔術師】ヴェーター

第八席【冥淵の魔術師】アビス


以上八名を、新たなるセフィラの魔術師として任命する


───────────────────────────


「早速記事になってるわね」

新聞の記事を見つめるスピカが声を落とす。


「セフィラの魔術師が生まれた時って大体こんなもんさ。僕の時だって次の日には有名人みたいになってたから」


「うちら有名人だって!!!」

「俺がセフィラの魔術師か。つか、なんでこいつが二席なんだよ!!リゼットはともかく、こいつが二はおかしいだろ!!」


新しい席順に納得のいかないアルケーが、シキの頬をグリグリと指差しながらメルティへ文句を垂れ流す。


メルティはそんな彼に小さくため息をつく。


「それはいずれわかるよ」


そう言葉を濁すと、アルケーは不満そうな顔で大きく舌打ちをした。


「さて、話を変えるわよ」

二人の会話に割り込むように、スピカが声を発する。


「メルゴ、テンペス。あなた達が知っているアーカーシャ教団についての情報を吐いてもらうわ」


その瞬間、その場にいた全員が大きく息を飲みこんだ。

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