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WitchDoll〜傀儡人形は夢を見る〜  作者: うつろ
Chapter-6【ロドモンテ編】

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〈6-16〉獄炎と氷晶

時は少し遡る。


北の街オルランド。

静かに青く光る月光の下で、二人は視線を交わし合う。


「やっと来てくれたか、待ちくたびれたよ」


そこで待つメルティの元へ飛ばされたゲラーテ。

二人は互いに、静かに言葉を交わす。


「しつこいやつだな、お前も」


「執念深さには自覚あるからね。それに……」

メルティは微笑みながらも、その眼光を鋭くしてゲラーテへと視線を向ける。


「ゲラーテ。君を倒すためにここまで来たんだから」


「それが出来ずにここまで来ちゃったの間違いでは?」


ゲラーテはメルティの視線を、軽く嘲笑うかのような瞳で返した。

そして少しの沈黙の後、二人は同時に魔法を放つ。


炎魔法イグニス獄炎ノ滅却(ヘルトルオ)

氷魔法グラキエース氷晶ノ滅却(クルストルオ)


巨大な炎と巨大な氷の魔法。二つの魔法がメルティとゲラーテの間で衝突する。

二人の周囲に小さな火花と氷の結晶が宙を舞う。


二人は衝突した魔法の中で再び視線を交わすと、それぞれ左右に走り出した。


炎魔法イグニス獄炎ノ銃弾(ヘルプルンブム)!」


メルティは周囲を走りながら炎の銃弾を作り出し、ゲラーテへと放つ。


氷魔法グラキエース氷晶ノ銃弾(クルスプルンブム)!」


ゲラーテもまたメルティと同様に周囲を走り、氷の銃弾を放った。


互いが互いの魔法を真似するかのように衝突し合う。

炎と氷の銃弾。その一つ一つが二人の間で小さくぶつかり合う。


「お前の魔法くらい既にたかが知れている。この程度で私に敵うと思うな」


ゲラーテは周囲に氷の礫を形成し、その矛先をメルティへと向ける。

透んだ水色に輝く氷の数々は、無慈悲にメルティを襲う。


氷魔法グラキエース氷晶ノ礫(クルスラピルス)!」


ゲラーテの周囲から放たれたその氷の礫の数々を見ると、メルティは静かに瞳を閉じ、小さく笑う。


「舐められたものだね。僕は君を倒しに来てるんだ、負けるはずが無いだろう?」


メルティは自身に炎を纏い、放たれた氷の礫を全て溶かしていく。


「さて、そろそろ本気で行こうか」

メルティは静かにゲラーテを見つめ、小さく口を開いた。

炎魔法イグニス獄炎ノ理想郷(ヘルユートピア)


その瞬間、周囲が灼熱の地獄へと化す。

大地には炎が迸り、まるで地面がマグマになったかのような熱さがゲラーテを襲う。


メルティが本気を出した。しかし、それはゲラーテも同じだった。


「はぁ、君に魔法の使い方を教えたのは誰だと思ってる」

ゲラーテは小さくため息をつきながら言うと

氷魔法グラキエース氷晶ノ理想郷(クルスユートピア)


その瞬間、灼熱に染まっていた世界へ白い冷気が漂う。

炎の海を侵食するように空気が凍りつき、白く結晶化していく。

まるで全てが凍りつきそうな程の冷気が、メルティの肌を刺した。


そこに立つことすらままならぬ灼熱の大地と、そこに居ることすらままならない絶対零度の空間。


「めんどくさいなぁ」

メルティは足から炎を噴射し、勢いよく上空へと舞い上がる。

「なんだ、逃げの一手か?」

ゲラーテもまた氷で足場を形成。まるで氷の上を滑るかのように、空へと舞いメルティを追いかけた。


空中を旋回するように飛び回る二人は、互いに魔法をぶつけ合う。


炎魔法イグニス!!」

氷魔法グラキエース!」


二人は互いの魔法を相殺しながら、どんどん上空へと上がっていく。

周囲に広がる螺旋のような氷の道を、灼熱の炎が溶かしていく。


メルティは炎の出力を上げ、その速度を加速させながら遥か上空へと上がると


炎魔法イグニス

その下でメルティを追いかけるゲラーテへとその手を向ける。

獄炎ノ豪魔(ヘルディアボロルム)!!」


空気すら焼けるような程の巨大な炎。

絶対零度と化した空間を全て溶かすような彼の獄炎の魔法は、メルティを追いかけるゲラーテへと向けて一直線に放たれる。


しかし

「なら私も最高火力でいこうか。氷魔法グラキエース氷晶ノ零絶(クルスアブソリュート)!!」


メルティとは相反する巨大な氷の一線。

それは灼熱の地獄すらも凍てつかせる程の冷気を放ち、息を吸うだけで肺が刺さるように痛む。


互いの最大級の魔法をぶつけ合い、二人の間で衝突し爆発する。


オルランド全体へと広がるほどの大規模な爆発により、周囲は小さな火花と氷で埋め尽くされていた。


憎いほど美しい光景の中、メルティとゲラーテは再び視線を交わす。

しかし、その表情はまるでこの戦いそのものを楽しんでるような笑みを浮かべていた。




──────────────────────────




数年前

「お前が最近暴れてるって言う魔術士か?」

「何、君も僕に喧嘩を売るわけ?」


これはまだ、メルティが十歳の頃の話。


彼は無造作に炎魔法を使い、周囲を焼き尽くす危険人物として認定されていた。

しかし、それと同時に彼の才能そのものは誰もが憧れる程のものだった。



「そんなに暴れたいなら、私と共に来い」


そんな彼の前に、一人の女性が姿を現す。


「なんで君みたいなおばさんについて行かなきゃいけないんだ、冗談は死んでから言えよ」


「やれやれ、口の悪い小僧だね。少しばかり分からせてやる必要があるなこれは」


「死んでも知らないよ」


「お前じゃ私に勝てないよ」


言葉を交わすと、二人は互いに魔法を放つ。

氷と炎が入り交じる中、メルティもゲラーテもお互い譲らない戦いを繰り広げた。


その戦いは数時間にも及んだ。


「ふぅ、手こずらせやがって。でも、言っただろう?お前じゃ私に勝てないって」

「ちっ…………」


ゲラーテは氷でメルティの手足を拘束。

メルティにはもう残された魔力は無く、敗北を認めるしか無かった。


鋭い眼光を向けるメルティに対し、ゲラーテは冷たく息を吐く。

「お前の負けだ。私と共に来い」

「ちっ。くそっ……」

メルティは小さく舌打ちすると、そのままゲラーテの言いなりになるかのように彼女の背中を追った。



これが、後に師弟となり、同じセフィラの魔術師となるメルティとゲラーテの出会いの始まりだった。

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