表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WitchDoll〜傀儡人形は夢を見る〜  作者: うつろ
Chapter-1【エウケー入学編】
6/10

〈1-5〉天才の葛藤


あの時の光景が、未だに頭から離れない。

あの時の屈辱が、未だに胸から離れない。


アルケーは静かに、そして強く拳を握り締めていた。

あの時の苛立ちが未だに収まらない。

脳裏に焼き付いたあの光景が、未だに頭から離れてくれない。



─────────────────


「なんだよあれ……!」

時は、魔法能力テスト模擬戦

生徒達はただ一点を見て圧巻していた。

「こんな魔法……見たことない……」

空中を漂う複数の人形。

そこから一斉に放たれる魔法陣。

その光景は、静かで、美しくて、それであって圧倒的だった。

「傀儡魔法…」

リゼットの魔法は、戦場そのものを支配していた。

彼女だけではない。

「なんだこれ、宇宙空間かよ……!」

スピカが空間ごと重力を歪める。

「っていうか何なんだよ幽霊のやつ!?!?」

シキが複数の幽霊を呼び出し、操る。

「こいつの魔法どういう原理だよ!無敵かよ!?」

ヴェーターが飛来する魔法全てを拒絶する。

誰もが常識外れの異常者だった。

そしてアルケーもまた、その光景を見ていた。


─────────────────



(ふざけるな…………)

自分は特別だと思っていた。

誰より優れていて、誰より才能があって、ここの誰よりも上に立つ存在。

そう信じていた。

だからこそ、許せなかった。

自分と並ぶ存在がいることが。

自分より上の存在がいることが。

いや、本当に許せなかったのは、自分が一番じゃない事に気付いてしまったことなのかもしれない。

「一番になるのは…俺なんだ…………!」

誰にも聞こえないほど小さな声で彼は呟く。


その瞬間……

彼の前に、忘れられないあの姿が映る。

「…………っ!」

廊下を歩いていたのは、リゼットだった。

朝の陽射しが、淡い金髪を照らす。

その横顔は、今にも壊れそうな程に儚かった。

そして、まるで何かに絶望しているような、そんな瞳を映し出していた。


瞬間、アルケーの眉が歪んだ。

俺より強いくせに……

俺より天才のくせに……

俺より注目されてるくせに……

アルケーはただ、黙ってその背中を睨むことしか出来なかった。


─────────────────


「っらぁああああ!!!」

轟音が響き渡る。

魔法実践授業。彼の魔法で、演習場全体が揺れる。

アルケーの放った魔法が標的を跡形もなく吹き飛ばした。

「す、すげぇ……」

「レベル違いすぎだろ……」

周囲の生徒達が息を呑む。教師ですら、その凄まじい才能に目を見開いた。

確かにアルケーは天才と言える程強かった。他の生徒からすれば、それはもう圧倒的な程だ。

一年生の中では、間違いなく頂点クラス。

けれど……


(足りねぇ……)

アルケーは拳を強く握る。

脳裏に浮かぶのは、またあの四人。

リゼット

シキ

スピカ

ヴェーター

あの姿が、あの光景が、一向に頭から離れない。

(こんなんじゃ…………!)

気付けば唇を強く噛み締めていた。

彼の唇から一滴、血がぽたりと落ちる。

「やっぱすげぇなアルケー!」

「今度魔法教えてくれよ!」

周囲の生徒達が集まってくる。

羨望、尊敬、憧れ…………

それら全部が、自分へ向けられていた。

なのに、彼の心は何一つ満たされなかった。


「…………ちっ」

アルケーは舌打ちすると、そのまま人混みを抜けて歩き去っていく。

残された生徒達だけが、呆然とその背中を見つめていた。


─────────────────


放課後

「では、気を付けて帰ってくださいね」

担任教師、アシュリーの声が響く。

アルケーは何も言わず席を立つ。

今日一日、誰ともまともに話していない。

あれ以降、誰も彼に近寄ろうとしなかった。

「……くそが…………」

吐き捨てるように呟き、教室を出る。


その時だった

視界の先に、見覚えのある四人の姿が映る。

「…………あ」

思わず声が漏れてしまう。

そして、その声を聞き逃さなかった少女がいた。


「あぁぁぁあああああっ!!!!!!」

学園中に響き渡るような大声に、周囲の生徒達が一斉に耳を塞ぐ。

「アルケーだよね!?本物だよね!?やっと見つけたあぁぁ!!!!」

紫色の髪を揺らしながら突撃してきたシキが、勢いのままアルケーの手を掴む。

「ちょっ…………!」

「会いたかったんだよ!!」

後ろでは、スピカが呆れたように溜息をついていた。

ヴェーターは少し離れた場所で縮こまる。

リゼットは、ただ黙って静かにこちらを見ていた。

「やっと見つけた!!ねえねえ、あれ凄かったね!!!」

シキは満面の笑みを浮かべる。

「うちらさ、異常者じゃん??うちも、スピカも、リゼットも、ヴェーターも、そしてアルケーも!!だからさ、うちら全員友達になろうよ!!!」

その言葉に、アルケーの眉がぴくりと動いた。

「ね!いいよね!!よし!これで五人揃ったね!!チーム名どうする!?【異常五人衆】!?【ヤバスギーズ】!?あ、でもセフィラの魔術師にちなんで……【クリファの魔術師】とか!!!」

シキはアルケーの反応など気にしようともせず、勝手に話を進める。


「…………ふざけんな」

低い声に、一瞬で空気が止まる。

アルケーはシキの手を勢いよく振り払った。

「俺はテメェらと馴れ合う気も、仲間になる気もねぇ!!」

「俺をテメェらみてぇな連中と一緒にすんじゃねぇよ」

そのまま彼の視線が、リゼットへ向く。

彼女のその壊れそうなほど綺麗な瞳に目を向けると、アルケーは奥歯を噛み締めた。

「…………絶対に……超えてやる…!」

そう小さく、吐き捨てるように言い残してそのまま背を向ける。

その背中を、決して誰も引き止めなかった。



─────────────────



夜。

「何が異常だ……」

アルケーの自室に鈍い音が響く。

彼の拳が、部屋の壁に叩き付けられた。

「何が特別だ……!!」

「何が天才だ!!!!」

異常、特別、天才。

それは、きっと自分を誇らしくしていた言葉だった。

なのに今は違う。

その言葉が、自分を縛っていた。

最強でいなければならない。そうでなければ、自分には何も残らない。

荒い呼吸の中、脳裏に浮かぶのはあの四人だった。

「………………」

アルケーは、ただ強く拳を握る。

「ぜってぇに超えてやる………………!!」

その呟きを残し、彼は静かに部屋を飛び出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ