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WitchDoll〜傀儡人形は夢を見る〜  作者: うつろ
Chapter-1【エウケー入学編】
5/11

〈1-4〉朝の陽光

今日もまた、学園での一日が始まる。


教室の扉を開いた瞬間、周囲の視線がリゼットへと向けられた。

その綺麗でどこか儚い容姿。そして、昨日の魔法能力テストで見せた実力。

既に彼女は、このクラスどころか学園中で噂になっている存在だった。

「……………………」

リゼットは何も言わず、自分の席へ座る。

隣ではヴェーターが机へ顔を伏せていた。

「ぅぅ…………視線が痛い…………帰りたい…………」

ぼそぼそと呟く声。

リゼットはそんな彼を静かに見つめる。


すると

「あぁぁーーー!!!いたぁぁぁぁぁあああ!!!!」

勢いよく教室の扉が開かれた。

教室全体へ響く大声に、周囲の生徒達が驚いたように振り向く。

「スピカの言った通りだ!!この時間なら絶対いるって言ってたんだよね〜!!」

現れたのは、紫色の髪を揺らした少女。

シキだった。


彼女はリゼットとヴェーターを見つけた瞬間、一直線に駆け寄ってくる。

「ねえねえ!!昨日はやばかったね!!」

シキは机へ身を乗り出す。

「えっと……リゼットだよね!君凄いよ!魔力測定とか何あれ!?測定不能って初めて見たんだけど!!」

「あと君!えっと…ヴェーター!の魔法!!あれどうなってるの!?無敵!?ずるくない!?」

一気に押し寄せてくるシキに、リゼットは驚いた様子で僅かに目を見開いた。

アンティークドールを抱く手が、ほんの少しだけ緩む。


一方、ヴェーターはというと

「ぅぁ…………」

シキと目が合った瞬間、再び机へ顔を伏せた。

「恐い…………距離近い…………」

「わっ、ごめん!!」

シキは慌ててその身を引く。

「いきなり来すぎたよね!?えっと、改めて!」

彼女はぱっと笑うと

「うち、シキ!霊魂魔法使ってるんだ!よろしくね!」

そう言って、二人へ手を差し出す。

その手を見た瞬間、リゼットの胸が小さく揺れた。

誰かから向けられる、純粋でまっすぐな好意に。


恐い。

でも、どこか暖かかった。

沈黙の彼女を見ると、シキは少し首を傾げる。

「……もしかして、びっくりしてる?」

「……………………」

「でも、なんか寂しそうだったからさ!」

シキは屈託なく笑う。

「でもほら!うちら似たもの同士なんだしさ!!仲良くしようよ!!」

その言葉に、リゼットの指先が小さく震えた。


『同じ人間とは思えないわ』


昨日の声が、脳裏を過る。

でも


『似たもの同士』


その言葉が、静かに胸へ落ちていく。

自分は普通じゃない。ずっとそう思っていた。でも、今はその気持ちがどこか軽くなっていくように感じた。


「……………………似たもの…………」


唇が小さく動く。


もし、この手を取れたなら……。

もし、この暖かさを信じられたなら……。


リゼットはゆっくりと顔を上げる。

シキの瞳は、ただ真っ直ぐだった。

そこには恐怖も、拒絶も何一つ無い。ただ純粋に、友達になりたいという感情だけが確かにあった。


リゼットの睫毛が、微かに揺れる。


そして……

「………………うん……」

小さく頷き、そっとシキの手を取った。

「やったぁあーーー!!!これでうちら友達だね!!」

シキが嬉しそうに声を上げる。


その瞬間、リゼットの心に、何か暖かいものが広がった。


シキはそのまま、隣へ視線を向ける。

「ヴェーターも!!」

「えっ、ちょ………………」

そのまま勢いよく、強引にその手を掴まれる。

ヴェーターは反射的に拒絶しようとしたが、何故かそれを止め、されるがままに手を取る。

「縮こまってないでさ!仲良くしよーよ!」

「ぅぅ………………」

ヴェーターは視線を逸らす。

怖かった。でも、不思議と嫌ではなかった。

ちらりと隣を見る。

そこには、ほんの少しだけ笑って見えたリゼットがいた。


その姿を見て、ヴェーターは少しだけ肩の力を抜く。

「う、うん……」

小さな声。でも、それはどこか安心したような声だ。

「やったぁーーー!!!」

シキは満面の笑みを浮かべた。

「これで一年異常組結成だね!!」

その言葉に、リゼットは少しだけ目を丸くする。

『異常』

本来なら、怖い言葉のはずだった。

自分が恐る、もう聞きたくない言葉のはずだった。

でもシキは、それをまるで“普通”のように笑う。

その瞬間、昨日まで胸を締め付けていた孤独が、ほんの少しだけ薄れていく。


自分だけじゃないのかもしれない。

そう思えた瞬間だった。

リゼットの口元が、ほんの僅かに緩む。

そして、本人ですら気付かない間に、さっきまでの小さな手の指の震えは止まっていた。



そして、少しした後……

「シキ〜」

不意に美しい声が教室へ響いた。

「そろそろ始まるわよ。戻りましょ」

教室の入口には、水色の髪の美人がいた。

「あっ、スピカ!!ごめん待って!今行くー!!」

そう答えると、再び二人へ笑いかけた。

「じゃあまたね!!今度スピカのことも紹介するから!」

そう言い残し、シキは慌ただしく教室を飛び出していった。


静寂が戻る。

「…………なんか、すごい子だったな…………」

ヴェーターがぼそっと呟く。

少し震えながら、自分の手を見ていた。


リゼットもまた、静かに自分の手を見つめた。

そこには、確かに彼女の温もりが残っていた。

そして、その手をそっと自分の胸元に寄せた。



教室の窓から、陽の光が差し込む。

昨日まで、ただ痛いだけだったその光。

けれど今は、その光がほんの少しだけ暖かく感じた。

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