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WitchDoll〜傀儡人形は夢を見る〜  作者: うつろ
Chapter-6【ロドモンテ編】

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〈6-3〉接触

ロドモンテに来た本来の目的。


それは、裏切り者であるヴェルテクスとメルゴ、そしてゲラーテを含むセフィラの魔術師達との交戦。

だが、その幕開けはあまりにも突然だった。


突如として始まった戦闘に、周囲に集まっていた人々は悲鳴を上げながら蜘蛛の子を散らすように逃げていく。


ほんの数秒前まで人で埋め尽くされていた広場には、今や三人しか残っていなかった。

リゼット、ラミア、そしてヴェルテクス。


「……やってくれましたね」

ヴェルテクスが壇上から二人を見下ろす。


声は穏やかだったが、その瞳には明確な殺意が宿っていた。

先程まで人人に向けていた柔らかな笑みはもう、どこにもなかった。


「………………ラミア、いける?」

リゼットが小さく問いかける。

「はい」

ラミアは静かに頷いた。

「再会を喜びたい気持ちは山々ですが、タイミングが最悪すぎました。まさか、セフィラ第一席が敵になるなんて」


二人の視線の先。

ヴェルテクスの周囲に、眩い光が集まり始める。

その光は刃の形となり、二人へと矛先を向けた。


対するリゼットも人形を展開する。

次々と複製された人形が宙へと浮かぶ。

ラミアもまた自らの指先を僅かに傷つけ、滲み出した血が宙へと浮かぶ。


そして、三つの魔法が衝突するその寸前だった。

「…………っ!?」


強大な魔力。

リゼット達三人が、ほぼ同時にその気配に反応する。


次の瞬間、巨大な氷柱が三人の間へ出現した。


三人は咄嗟に後方へ跳ぶ。

冷気が広場を這い、空気そのものが白く染まっていく感覚。


「これほどの氷を生み出せるのは……」

リゼットが氷柱の先へと視線を向け、その姿を見た瞬間、僅かに目を細めた。


「…………ゲラーテ」


そこに立っていたのは、一人の女性。

かつてのエウケー魔法学園教師であり、リゼット達が追い続けている人物。


セフィラの魔術師第二席【氷晶の魔術師】ゲラーテ。


「この人が……リゼットさん達の探していた人ですか」

「…………うん」

リゼットはゲラーテから目を逸らさないまま答える。

しかし、奇妙な事にゲラーテから殺気を感じない。

ゲラーテはリゼット達ではなく、ヴェルテクスへと視線を向ける。


そして

「作戦中止だ」

冷たい声で告げた。

「……どういうことですか」

「各地で問題が起きている。恐らく、何者かがこちらの動きを妨害している。予定通りに進めるのはもう無理だ」

ゲラーテは冷たい声で言い放つ。


セフィラと接触した人物。それは、リゼットとラミアだけでは無い。

偶然か、それぞれが別のセフィラと遭遇していた




────────────────────────




「スピカ!!アーカーシャ!!アーカーシャ教団だっ………むぐぐぐぐぐ!!」

「黙りなさいシキ!!今ここでバレたらまずいわ!!」

シキの口を両手で塞ぎながら、スピカが必死に声を潜める。


「誰だおめぇら」

シキとスピカが遭遇した相手。それは、セフィラの魔術師第四席【雷帝の魔術師】トルポル。

彼はシキとスピカへ鋭い視線を向ける。

その周囲には、先程まで彼の演説を聞いていた大勢の人達がいた。


「…………」

スピカの瞳が一瞬で冷静なものへと変わる。

「皆さん!!今すぐここから離れてください!!」


スピカの叫びに人々がざわつく。

「な、なんだ!?」

「よくわかんないけど逃げろ!!」


不穏な空気を察知した者から、次々とその場を離れていく。


「シキ!」

「わかってる!!」

シキとスピカが構える。


対するトルポルはニヤリと口角を吊り上げると

「殺る気か……」

二人を見下し、そしてその身体に雷を纏わせた。




───────────────────────




「な、なんでアンタがいんのよ!!」

「えっ……ば、バレてる……!?」

ヴェーターが遭遇した相手。それは、つい先日戦ったばかりの相手。セフィラの魔術師第五席【濁水の魔術師】メルゴだった。


「全く!!なんでこう面倒な奴がいるのかしら……!」

メルゴはそう言うとその手をヴェーターの足元へと向ける。

次の瞬間、ヴェーターの足元に水が広がった。

「や、やばっ!」

空気中が深海の世界へと変わり、周囲の人々ごと呑み込まれていく。


「きょ、拒絶魔法!!」

「なっ……!」

一度経験した魔法。それを察知したヴェーターは即座に魔法を発動した。

彼の魔法が周囲を囲み、深海の世界を拒絶する。

「ほんっと……厄介なのよ、あんた……!」

メルゴが目を見開く。


「誰も、誰も沈ませない!」

ヴェーターの瞳には既に、戦う勇気が宿っていた。




────────────────────────




「テメェ、今なんて言った」

「あぁ?」

男が振り返る。

「アーカーシャ教団幹部、テンペスだっつったんだよ耳かっぽじって聞けやボケ」

「アーカーシャ教団……だと?」

「そうだっつってんだろボケ。風にかき消されちまってんのか?俺の声はよぉ」


アルケーが遭遇した相手。それはセフィラの魔術師第六席【戦風の魔術師】テンペス。


「ボケボケうっせぇな」

アルケーの拳に炎が灯る。

「ぶち殺す!!!」


アルケーは思い切り地面を蹴ると、そのままテンペスへと突っ込んでいく。

「ボケが、いきなり殴ってくるとかマジの大ボケだなぁ!!!」


テンペスもまた、周囲に暴風が巻き起こし迎え撃つ。


炎を纏った拳と全てを吹き飛ばす暴風が衝突しようとしていた。




────────────────────────




そして

「ここまで追ってくるとは思わなかったよ」

メルティが静かに微笑む。

「偶然だと言っても、信じてもらえないだろうね。君の頭は氷みたいにカッチカチだし」


彼の視線の先には、ゲラーテが立っていた。


「感動の再会、と言いたいところだが」

ゲラーテは周囲へ目を向ける。

「私も暇ではなくてね。悪いが、遊びは今度にしよう」

そう言うと、彼女はそのまま人混みの中へと紛れ込んだ。


メルティは咄嗟に追おうとするが、余りの人の数に彼女を探すことは困難だと判断。

魔法を放とうとも、ここでは何人もの人間を焼き殺すことになる。


「キツいな、これは」

メルティは小さく息を吐く。

「また会えるって、信じることにするよ」

そう言うと彼もまた、その場を離れた。




────────────────────────




その日の夜。


「メルティ!!?ラミアちゃんもいる!!!みんな久しぶりぃぃいいい!!!!」

「わっ!」


偶然の再会に感動し、声を上げるシキ。

次の瞬間には、ラミアへと抱きついていた。

「ラミアちゃぁぁぁぁん!!!」

「あ、あの、シキさん。ちょっと苦しいです」

そんな二人を見て、スピカが深くため息を吐く。


「離れなさい、ラミアに嫌われるわよ」

「やだぁぁぁぁ!!嫌われたくない!!!!」

「なら離れなさい」

スピカはシキの服を掴み、そのままずるずると引き剥がしていく。


「いやぁぁぁぁぁ!!」

「げ、元気ですね」

ラミアは少し困ったように微笑んだ。


「そ、それにしても、意外と早かったね」

「もうちょい苦労すると思ってたけど、まさかこんなところで合流するとはな」

「…………久しぶり」

リゼット達もまた、再会した二人に声をかけた。

「はい。お久しぶりです」


短い別れだったけれど、再び顔を合わせられたことがどこか嬉しかった。

しかし、その穏やかな空気は長く続かなかった。


「さて」

メルティが口を開くと、嬉々としていた空気が変わり始める。

「全員がセフィラと接触した。これは事実でいいんだね?」

メルティの問に全員が頷く。


「私とリゼットさんは、第一席のヴェルテクスと会いました」

「うちとスピカは雷の人!!なんかめっちゃ強そうだった!!」

「ぼ、僕はメルゴだったよ。あの場は何とかなったけど、まさか向こうから気付かれるなんて……」

「俺は風の野郎だな。ぶっ殺すつもりだったんだが、途中で邪魔が入って休戦状態だ」


「そうか。接触したのが僕だけじゃなかった、という事ね」

それぞれの話を聞いたメルティが小さく呟く。


全員が違う場所で、違うセフィラと遭遇していた。


メルティは目を閉じ、少し考えると

「さて」

ゆっくりとその目を再び開く。


そして、小さく開かれた口で六人に告げた。

「作戦会議を始めようか」

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