〈6-1〉大都市ロドモンテ
大都市ロドモンテ。
空から舞い降りたリゼット達の瞳に映るのは、高くそびえ立つ建物の数々が遠く広がる都市。
そして、裏切り者であるセフィラの魔術師達が集まる可能性が高い場所だ。
セフィラの魔術師との戦い。
メルゴ、ゲラーテ、そしてヴェルテクス。今知ってる者達を思い出すだけでも身体が僅かに強張った。
メルティも含め、自分達が今まで戦ってきた者とは何もかもが違うと理解させられた。
リゼット達の瞳には、これから起こる戦いへの覚悟が宿っていると思われた。
しかし
「……………ここが、ロドモンテ…」
「ええ。本来であれば少しばかり観光をしていきたいところね」
「うちもうちも!!マジックアトラクション施設とかあるかな!!!とりあえず走りたい!!!!」
「ぼ、僕は疲れたから宿で休みたいな………」
「んな暇ねぇだろ、とっととセフィラの奴らを探すぞ」
今まで見たことの無い景色に目を奪われるリゼット達。
その景色を見た途端、まるでこれから大きな戦いが起こることを忘れてしまったかのような表情に変わる。
「すっっっごぉぉぉおおおおいいいい!!!!」
天にも届きそうな叫び声を上げ、シキが走り出す。
「見て見て!!お店!いっぱいあるよ!!!あっちもこっちもお店お店!!!」
あまりの興奮にそこら中を走り回り、指立てたその手を振り回しながら叫び回る。
そして、そのままどこか遠くへ行ってしまいそうなシキ。
そこへ
「待ちなさい!!」
スピカが慌ててシキの服を掴む。
「ぐえっ」
「私達が何をしに来たのか忘れたの?」
真剣な瞳でスピカが問う。
「セフィラを倒しに来た!!!!」
「そんな大声で言うんじゃねぇ!」
ゴンッ!
「いだいっ!!!」
直後、アルケーの拳がシキの頭へと落ちた。
そんな四人の少し後ろを、リゼットは静かに街を見渡していた。
「………………大きい」
ロドモンテを一通り見渡した彼女が淡々と呟く。
人の多さ、街の数々、どれもガヌロン王国以上だ。
大通りを歩く大勢の人達、声掛けをするお店の看板娘、華やかに彩られた建物、そして平和に会話をする人達の話し声。
どこにでもある平和な場所のように見えた。
「………………平和」
「え?」
隣を歩いていたヴェーターが、小さく呟くリゼットを見る。
「……………………もっと、怖い場所だと、思ってた」
「た、たしかに…」
ヴェーターも街を見渡す。
これからセフィラの魔術師達と戦う場所。それぞれが戦う覚悟を決めてきた場所。
しかし、目の前に広がっているのは何の恐怖も危機感も無いただの平和な都市。
何も知らなければ、有名な観光地と言ってもいいくらいだ。
「だからこそ気を抜かないことね」
「……………え?」
スピカが二人の会話に割り込む。
「ここにセフィラがいるという情報が本当なら、つまり私達は既に敵の懐にいるということ。こういう場所が恐怖に陥れられた時は一瞬よ。だからこそ、いつ何が起こってもいいように心の準備をしておくことが大切よ」
スピカの言葉で、ヴェーターの表情が少し強張る。
「まぁ、そんなこと微塵も考えてないような人が若干一名ほど居るんだけどね…」
そう言うと、スピカは呆れたような顔で一点を見つめた。
何も考えず、ただ楽しそうにはしゃぎ回るシキと、それに連れ回されるアルケー。
リゼットはそんな二人を見ると、少しだけ口元を緩ませた。
「とは言ってもよぉスピカ」
会話を耳にしていたアルケーが、シキを引きずりながらリゼット達の元へと戻ってくる。
「はなしてぇええ!はーなーしーてぇぇえええ!!!!」
「うるせぇ!テメェは少し落ち着け!!」
ゴンッ!
「いだぁい!!!!」
暴れるシキにさっきよりも重い拳が落ちた。
「戦うっつってもこの有様だしよ、そもそも俺たちはセフィラの奴らがどこにいるのかすらわかんねぇ。こっちから変に行動を起こしたら帰って不利になるんじゃねぇか?」
たしかに、現状のロドモンテはあまりに平和すぎる。
セフィラの魔術師が既に行動を開始していれば話は別だが、周りを見る感じそのような傾向は見られない。
つまり、相手側から行動を起こさない限りこちらが動くことは出来ないということだ。
「たしかに、僕たちが先に動いたら怪しまれちゃうかも…」
「二人の言う通りね。向こうは私達が追ってきていることは知らないはず。私達の方から動いてしまったら返ってこちらが怪しまれる結果になるわ。それに、待ち伏せしている可能性もある。なら今は普通の観光人を装う方が得策ね」
スピカの言葉にリゼット、ヴェーター、アルケーが頷く。
そしてシキはと言うと
「やったぁぁああああ!!!遊んでいいんだね!!!!」
ただ一人、両手を空へと上げて喜んでいた。
「はあぁ………」
スピカがこれでもかと言うほどの深いため息を着く。
その表情はもはや何もかもを諦めたような顔をしていた。
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「さぁて。宿も取れたし、街を観光でもしましょっか」
「やったぁぁああああ!!!」
スピカの言葉にシキが嬉々とした声を上げる。
エウケー魔法学園を出てからこれまでゆっくりとした時間は無かった故か、シキだけでなくヴェーターやアルケーも表情を崩していた。
「じゃあ行ってくるーー!!!!!」
シキはそのまま一人で走り去っていった。
「はぁ……、もういいわあの子は。とりあえずシキのお説教は私がしとくから皆は各自行動、夕方に宿で集合ね」
ため息とともに放たれるスピカの言葉。それを聞いた後、それぞれが自身の行きたい場所へと向かった。
ヴェーターは本屋へ、アルケーはトレーニング場へ、スピカとシキは三十分近くに渡る説教の後、都内中をフラフラと観光して周った。
そしてリゼットが向かった場所、そこはドールショップ。
様々な可愛い人形達が並ぶその光景に、リゼットは瞳を輝かせる。
「…………………かわいい」
「………………この子も」
「あっ…………こっちの子の、お洋服、好き」
アストルフォの何倍の数も並ぶ人形達を次々と見ると、その可愛さに声が漏れる。
彼女はかれこれ一時間近くはドールショップで人形を見ていた。
リゼットが人形に目を奪われてる時、店の外側からふと聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「今は観光しよっか。派手に動くとアレだし」
「い、いいんですか……?」
「うん。僕もちょっと休みたいからね」
どこかで聞いたことのある二人の声。まるで自分達が探している少年と、どこかで出会った少女の声。
その声にリゼットは店の外側へ視線を向けるが、声の主の姿はどこにも見えなかった。
「…………………気のせいか」
リゼットは沈黙の表情のまま人形へと視線を向け直した。
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一方その頃
「さて、そろそろ動こうか」
リゼット達が観光してる中、セフィラの魔術師達が動き出そうとしていた。




