〈5-9〉始まりの幕開け
「これが、アーカーシャ教団についてボクが知ってる全てさ」
突如明かされたアーカーシャ教団の真実。
スピカはエメリアの表情や声色を注意深く観察していたが、そこに嘘をついているような素振りは一切見えなかった。
しかし、一つだけ疑問があった。
「アーカーシャ教団についてはわかったわ。けれど今、セフィラの魔術師は内輪揉め状態にある。聞く限りだと、冥淵の魔術師も裏切り者として考えていいと思うけど……」
「それは違うんだ」
そうスピカが言いかけると、エメリアはそこに割り込んで口を挟む。
「何故セフィラの魔術師が内輪揉めしてるのか。それは、アビスは始祖側の考えだったからだよ」
エメリアの発言に、五人は共学の反応を示す。
そんな五人を見ると、彼はそのまま話を続けた。
「冥淵の魔術師アビス。彼女は始祖側の考えでありながら、司祭長についた。そして彼女はセフィラの魔術師に配置されたんだ。つまり、始まりのセフィラは彼女ということになる」
「じゃ、じゃあアビスってのは……」
「あぁ、世界最古のセフィラだよ。とは言っても、放浪癖のある彼女は基本的に顔を出すことはないし、なんなら行方不明扱いまでされてるけどね」
どうやらアーカーシャ教団の下部組織であるセフィラの魔術師は、今の教団の在り方と反対にあるらしい。
今はヴェルテクスが第一席としてまとめているものの、元々は第七席のアビスがまとめていたという。
しかし、なぜ内輪揉めになったのか。
何故裏切り者が現れるようになったのか。
「でも……ど、どうして裏切りなんて」
気になったヴェーターがエメリアに問う。
「それは、裏切り者である五人のセフィラを任命させたのは司祭長本人だからなんだ。司祭長はアビス一人しかいなかったセフィラの魔術師の人数を保管しようと、六人の魔術師を配置した。それがヴェルテクス、ゲラーテ、トルポル、メルゴ、テンペス、そしてルーペスだ」
「…………………………メルティは?」
「後から加入した子だね。多分アビスかゲラーテあたりが加入させたんだと思うけど、彼に関してはボクもよくわからないんだ」
メルティはそっと瞳を閉じると、少しばかり申し訳なさそうな表情で視線を落とす。
しかし、彼の情報はリゼットたちにとって十分すぎるほどであった。
アーカーシャ教団、セフィラの魔術師、オルド大国。
いきなりアーカーシャ教団を倒しに行くのは無理な話だ。事実、あのヴェルテクスを前に何も出来なかった。
その更に上と言うのであれば、今の自分たちには何も出来ないだろうと理解していた。
ならば一つずつだ。
「セフィラの魔術師。まずはそいつらからぶっ殺す」
アルケーは両手の拳を叩きつける。
瞳に闘志を宿す、いつものアルケーの目だ。
「………………私も」
リゼットもまた、沈黙の表情でアルケーに乗る。
「うちも!!!!」
「ぼ、僕も」
「もちろん私もよ」
シキ、ヴェーター、スピカもまた、それぞれがアルケーの言葉に乗っていく。
そんな彼らを見て、エメリアはどこか羨ましそうな瞳でリゼットたちを見つめた。
そして目を閉じ、思い返す。
彼の中にある記憶を。
「よし」
エメリアは五人に視線を向けさせる。
「ボクからアドバイスだ。もしセフィラの魔術師を探すのなら、ロドモンテに向かうといい。少なくともヴェルテクスとメルゴはそこに向かったはずだ」
そして彼は視線を真剣なものへと変える。
「そして、他のセフィラもそこに集まると予想している。もしセフィラを穿つなら、そこがベストだ」
空気が緊迫したものへと変わる。
セフィラの魔術師との戦い。リゼット達は知っている、彼らの実力とその恐ろしさを。
勝てないかもしれない。死ぬかもしれない。けれど、倒すと決めた以上、引き返す選択肢なんてどこにも無かった。
「じゃあ決まりね」
スピカはそう言うと、五人を見つめる。
五人の瞳の中には恐怖があった。拳を震わせる者もいた。
けれど
「うん!!うちはもちろん行くよ!!!」
と、いつもの笑顔でシキが言う。
その笑顔が空気を緩ませたのか、それとも共に行く仲間がいる心強さからか、恐怖の心は段々と勇気へと変わっていく。
「それじゃあ次の目的地はロドモンテよ。みんないいかしら?」
スピカの言葉に、四人が大きく頷く。
「なら出発は明日の朝。全員、セフィラの魔術師との戦いに備えること」
そして五人はそれぞれ、明日の出発に向けて準備を整える。
スピカは地図を確認し、シキはすぐさまベッドで横になり、ヴェーターは震える拳を握りしめ、アルケーは一人外の空気を吸いに出る。
そしてリゼットはそっと瞳を閉じ、これからについて考えた。
翌日。
「色々感謝するわ」
「うん。また会った時はよろしく頼むよ」
ガヌロン王国の入口にて、エメリアと別れの挨拶を済ませると、リゼットの傀儡魔法で五人は空へと舞い上がる。
「エメリアー!!!またねぇえええ!!!!」
「ま、また会おうね!」
それぞれがエメリアに手を振り、そしてガヌロン王国を後にする。
次の目的地、ロドモンテに向けて五人は前へと進む。
セフィラの魔術師との戦い。その覚悟を胸に、ただ前へと進み続けた。
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一方その頃
「やっと集まったわね」
「遅ぇじゃねぇか第一席様よ、社長出勤ってやつか??」
大都市ロドモンテの中央広場にて、セフィラの魔術師が集結していた。
「すまない、一悶着あったものでね」
「ケッ!お前なら余裕で国一つ潰せるくせに何言ってんだよ」
ヴェルテクスの発言に、テンペスが言葉を刺す。
そんな彼らを見て、ゲラーテは深くため息を着いた。
「はぁ……全く。少しは落ち着け」
そう言うと彼女は再び四人を鋭い視線で見つめた。
「ヴェルテクス、メルゴ、トルポル、テンペス。あなた達の役割はちゃんとわかっているわよね」
その言葉に四人は軽く返事をする。
そして、ヴェルテクスは空を見上げて呟く。
「夢の果ても、もうすぐそこに来たのか……」
彼の言葉の声色は、どこか寂しくも感じられた。
彼の見上げる空には雲ひとつない青い空が広がっている。
どこまでも続く青い空は、これから起こる果てしない夢への道を表しているようでもあった。
そして……
リゼット達とセフィラの魔術師達との戦いの幕が開かれようとしていた。




