〈5-2〉城内へ
翌日。
「さて、まずはアーカーシャ教団について調べる必要があるわね」
スピカは昨日貰った紙を見ながら呟く。
今回の作戦はアーカーシャ教団を名乗り、城内へ侵入すること。そのためには、アーカーシャ教団そのものについて知る必要があった。
「じゃあ!!また情報収集する!?!?」
「ま、それが手っ取り早いけどな」
シキの発言にアルケーは賛成の意を示す。
「……………………私も、そう思う」
「ぼ、僕も」
リゼットとヴェーターも二人に続くように口を開く。
「そうね、ではまずはアーカーシャ教団について情報を集めるところから始めましょ」
「おぉおおおお!!!!!」
五人は宿を出ると、それぞれに別れてアーカーシャ教団についての情報収集へと動いた。
「……………………」
「な、なにか良い情報見つかるといいね……」
リゼットとヴェーター二人は街を観光しつつ、情報を得られそうな場所を探していた。
しかし、基本無口なリゼットと他者を怖がるヴェーターは上方収集という役割には適していない。
だからこそ、スピカはこの男を付かせた。
「お前らダメすぎだろ……もっとこう、ガっていきゃいいんだよ」
「………………それが出来たら、苦労しない」
「やれって話だよ!!」
そう、アルケーだ。
二人だけだと心配だと感じたスピカは、リゼットとヴェーターにアルケーを付かせる事にしていた。
「はぁ……とりあえず片っ端から声掛けてくぞ」
そう言うとアルケーは街歩く人に話しかけていく。
「す、すごいな……」
そんな彼の姿を、尊敬の眼差しで見つめるヴェーター。
彼が夢見る勇気のある人。
それは、アルケーのような男なのかもしれないと内心思っていた。
そんなヴェーターの眼差しを、どこか羨ましそうにリゼットは見つめていた。
一方シキとスピカはというと……
「こんにちは!!うちはシキって言います!!!聞きたいことがあるんですけど!アーカーシャ教団って知ってますか!!!!」
シキは見境なく色んな人に話しかけていた。
それを半分呆れた表情で見つめるスピカ。
彼女はただ純粋な気持ちで聞いているのであろうが、あまりの危機感の無さにスピカは心配の視線を向ける。
「あのねぇ……」
スピカはため息を着くように言葉を吐く。
「あんたはもっと危機感ってのを持ちなさい。元気なのはいい事だけど、それが逆に最悪の事態を招くこともあるのよ」
「はーい!!!」
わかっているのだかわかっていないのだか分からない返事。
しかし彼女のそんな笑顔に、スピカは半ば諦めたように微笑む。
「さて、次は向こうの方で情報を集めましょ」
「わかった!!!!」
ある程度の情報を集めると、二人はまた別の場所へと向かった。
そして、情報を手に入れた五人が宿の前で集まる。
「アーカーシャ教団についてだけど……」
まず始めに口を開いたのはスピカだ。
「入団する儀式とか、そういうのは特に無いみたい。本当に個人の自由って感じね」
「俺が聞いた限りでも同じだな。入ってる奴入ってねぇ奴がいたけど、どうも何かひっかかるんだよな……」
アルケーは自分が手に入れた情報に、どこか違和感を感じていた。
普通、教団への入団となるとそれなりの経緯が必要になるはずだ。しかし、アーカーシャ教団にはそのようなものが一切ない。
むしろ、勝手に名乗っても平気なくらいだ。
「…………………………何か、ありそう」
その考えはリゼットも同じだった。
そこはかとない違和感に五人は頭を抱える。
「とはいえ、今考えてる暇は無いわ。とりあえずお城に入ってみましょ。これで入れたら私達の考えすぎってことになるし、入れなかったら別の方法を考えればいい話よ」
スピカがそう言うと、五人は大きく頷す。
そして、ガヌロン城へ向けてその足を踏み出した。
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ガヌロン王国 ガヌロン城。
濁水の魔術師メルゴがその玉座に座る、王国を象徴する城である。
「何者だ貴様らは」
「ここから先への侵入は禁止されている!」
リゼット達が城に近付くと、当然のごとく傭兵たちに止められる。
「初めまして。私達はアーカーシャ教団の者です」
「なに?アーカーシャ教団だと?」
スピカの言葉に、傭兵たちは反応する。
やはりアーカーシャ教団のガヌロン王国は何かしらの繋がりがあるようだ。
「少し待たれよ。女王様に確認を取りに行く」
そう言うと、傭兵の一人は場内へと入っていった。
「…………………………大丈夫かな」
少し心配なリゼットに、スピカが視線を向ける。
「ええ。きっと大丈夫よ」
スピカは軽く微笑むと、リゼットは静かに瞳を閉じ心を落ち着かせた。
暫くして、先程場内へと入っていった傭兵が戻ってくる。
「お前達の城内への入場を許可する。この私に付いてきたまえ」
どうやら女王からの許可が降りたようだった。
「感謝致します」
「やったぁああ!!お城だぁあああ!!!!」
「静かにしろ騒音バカ」
リゼット達は傭兵に導かれるままに、その背中を追う。
「どうやら、上手く行けたみたいね」
囁くような声でスピカが五人に話しかける。
多少の違和感はあったものの、城への入場という目的は達成できた。
あとはここの女王である濁水の魔術師に会うだけだ。
初めての城内。エウケー魔法学園やラミアのいた屋敷とは比べ物にならない程の広大な城内の景色に、それぞれが感銘を受け、目を見開く。
「す、すごいや…………」
「でっけぇなぁ。さすがお城って感じだな」
「おっしっろ!!!おっしっろ!!!!」
初めての城に興奮する五人。
声を出し、その興奮を露わにする者もいれば、ただ静かに瞳を輝かせて城内を見学する者。
それぞれが興奮を抑えきれなかった。
「ここから先は女王の玉座になる。くれぐれも、粗相のないようにな」
そうこうしているうちに、ついに玉座の間へとたどり着いていた。
「な、なんか怖いな」
「…………………………」
「なんだか緊張するね!!」
大きな扉を前に、五人は身震いをする。
「さ、入るわよ」
スピカはその大きな扉を身長に開けると、その先には玉座に座る一人の女性がいた。
「……あんた達ね」
青いツインテールに、まるで水着姿のような衣装にローブを羽織った姿をした女性がそこに座っていた。
ただならぬ雰囲気、強者としてのオーラ。
メルティやゲラーテとはまた違う、その雰囲気に五人は唖然とした表情で立ちすくむ。
「うわぁあ、ハレンチな人だ……」
その姿に、ヴェーターが思わず顔を隠す。
「何を今更。シキなんてしょっちゅう見えっぱなしじゃない」
「え!?!?そうなの!?!?そういうのはちゃんと言ってよぉおおおお!!!!」
赤面するヴェーターに、スピカが軽く突っ込む。
ちなみにシキはヴェーター以上に赤面していた。
「ようこそ、ガヌロン城へ。私がこの国の女王であり、セフィラの魔術師第五席【濁水の魔術師】メルゴよ」
そう言うと彼女は、リゼット達の前へと近づいた。




