表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WitchDoll〜傀儡人形は夢を見る〜  作者: うつろ
Chapter-4【マルフィーザ編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/75

〈4-8〉それぞれの道へ

『一人じゃない』

それは、あの日の彼女が一番欲しかった言葉。


父親を失い、街の人達から忌み嫌われ、魔女と恐れられた彼女が心の底から願った一言。

二年間ずっと一人で生きてきた幼い少女にとって、それは他の何よりも大きな輝きを放っていた。



「私はもう、一人じゃない………」

まるで街の中で起きた出来事を、あの呪いを吹き飛ばすかのように輝きを放つ笑顔が、彼女を覆う闇を消していく。

「………うん」

リゼットも同じだった。

あの日、リゼットも一人だった。


けれど

シキが友達と呼んでくれた。

スピカの言葉が勇気をくれた。

ヴェーターと心を分かち合った。

アルケーが本気で向き合ってくれた。


あの日の幸せが、温もりが、ずっと胸の中に刻み込まれている。


「……………ラミアも、同じ」

「……え??」

リゼットの言葉に、ラミアが不思議そうに見つめる。

「……………普通に生きたいから」

ラミアの瞳が大きく揺れる。

リゼットの言葉がラミアの心を大きく動かし、そして彼女の背中を押す。


リゼットという光に導かれるように、彼女は小さな手で差し伸べられたリゼットの手に触れる。

彼女の手は冷んやりとしているのに、何故だか伝わってくるのは温かさだった。


二つの小さな星が重なり合うように、二人の夢が大きく、そして眩しく輝く。

まるで目の前にいるのが自分自身であるかのような感覚だった。


「リゼットさん、皆さん、ありがとうございます」

ラミアは涙で溢れたその目を軽く擦り、五人へと視線を向ける。

彼女には五人の姿が、自分を照らす太陽のように見えていた。

「私、決めました。 私は───────」



決意の眼差しでラミアが告げた一言に、五人は軽く目を見開いた。




──────────────────────────




翌日。


「本当にいいの!?屋敷は!?!?」

シキがラミアの姿を見て言う。

「大丈夫です。屋敷に入る人はいないでしょうし、いずれは戻ってくることになると思います」


ラミアの告げた一言

『私は、夢を追いかける旅に出ることにします』

それは、彼女にとっての第一歩だった。

リゼット達の優しさが、そしてその夢の輝きが何よりも眩しかった。

だからこそ、自分も自分の道を歩みたい。今を諦めて閉じこもって生活するのではなく、孤独を感じる誰かに手を差し伸べられるような人になりたい。


それが、ラミアの夢だった。


「でもお前まだちいせぇだろ。俺達と来た方がよくねぇか?」

「う、うん。僕達と一緒の方がいいと思うんだ…」

一人で旅立つ決意をするラミアに心配するヴェーターとアルケー。


しかし

「お気遣いありがとうございます。ですが、大丈夫です。私は私の力で夢を追いかけて行きたいので」

その言葉に、二人の心配する表情が軽くなる。

そんな二人を見て、ラミアは言葉を続けた。

「それに…また皆さんに会った時、その時は皆さんの隣に立てるくらいになりたいんです」


芯の籠った彼女の瞳が二人の表情を和らげる。

ラミアはもう、ただの魔女と恐れられる幼い少女なんかじゃない。

自分だけの夢を持つ一人の人間なんだと感じさせられた。



「ラミアちゃぁあああん!!またいつか!絶対に会おうね!!!絶対だよ!!!!」

屋敷の入口でラミアに飛びつくシキ。

「何やってんのよ。気持ちはわかるけど、少し落ち着きなさい」

そんなシキをスピカが服を掴んで引き離す。


そんな光景に少しばかり戸惑うも、ラミアは前を向く。


「それではみなさん、またいつか」

そう言うと、ラミアは血で羽を作り出して空へと飛び立って行く。

遠く遠く、その姿が見えなくなるまで五人はその背中を見送った。



「さて、私たちも次の街へ行くとしましょ。もうここには用はないし」

この街で出来ることを全て終え、スピカが旅立ちを告げる。

「とっとと出るぞ。二度と来たくねぇこんなとこ」

「うちも!!」

アルケーとシキは、ラミアの一件もありこの街にはもういたくないと告げる。


その気持ちはリゼット達も同じだった。

二人の言葉に何も言わず黙って頷くその瞳には、静かな怒りが籠っていた。


「まぁ、そうよね」

スピカは静かに目を閉じ、声を落とす。

「なら行きましょう。次の目的地はガヌロン国よ」

彼女の言葉に四人は小さく頷き、そして再びリゼットの傀儡魔法で空へと舞い上がる。



リゼット達はマルフィーザの街を決して振り返らなかった。

まるで全てを捨てて行くかのように、ただ真っ直ぐに行く先だけを見つめていた。



──────────────────────────




その日の夜。


「おい、来てやったぜ魔女さんよぉ」

誰もいない屋敷の扉が蹴り飛ばされる。

蹴り飛ばされた扉の前に立っていたのはヴェルムだった。


「ぁあ?いねぇのか??」

人気の無い屋敷の内部を見渡し、屋敷の中を探し始める。

「おいおい!隠れてねぇで出てこいよ!!」

一部屋、また一部屋とその扉を開けて中を荒らす。


「チッ、ガチで出て行きやがったんか」

ラミアがこの場から去ったことを悟ったヴェルムは、地を踏み潰すかのようにある気、屋敷を出る。


「トルポルさんに叱られちまうじゃねぇか。クソ、めんどくせぇけど探しに行くか………」

そう言うとヴェルムはこの街を離れた。



屋敷を去り、遠くへと旅立ったラミアを探しに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ