表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WitchDoll〜傀儡人形は夢を見る〜  作者: うつろ
Chapter-4【マルフィーザ編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/59

〈4-4〉二年前の出来事

それは今から二年前の出来事。


マルフィーザの屋敷には一人の伯爵とその娘ラミアが暮らしていた。

伯爵の名はコメス。

コメスは今から数年前、遠い異国の地からこの街へ移住してきた貴族であり、この街の奥に屋敷を建てて暮らすことをになったらしい。


「コメスさんこんにちは」

「今日も差し入れ持ってきましたよ!ラミアちゃんの分とちゃんとあるぜ!」

「お茶しようぜコメスさんっ!」

コメスは街の人々からの人望も厚かった。彼自身がとても紳士的であり、移住してから街の人たちに受け入れられるのもそこまで時間はかからなかった。


毎日誰かが屋敷に来て、お茶を飲んだり話をしたり、時には街に出て市民の生活を嗜んだり。

そんな平和な日々が、ずっと続いていた。



しかし、とある来客によってその運命が大きく変わる。



突如、一人の魔術師が屋敷の扉を開く。

「へぇ、ここがあの屋敷か。思ったより広いじゃねぇか」

屋敷の中を一通り見回すと、扉の開く音が屋敷に響いていたのか、コメスが姿を現した。

「あら、初めてのご客人でしょうか。少々広すぎるかと思いますが、ごゆっくりしていってください」

「お、ありがとな。噂を聞きつけて来たんだけど、俺の想像以上だ」

「そう言っていただけて何よりです。おっと、申し遅れました。私はここの屋敷の主人をしているコメスと申します」

「俺ぁヴェルムだ」

二人は軽い挨拶を済ませたあと、コメスの案内で屋敷の奥へと歩みを進める。


小さく開いた扉の隙間から、幼いラミアがその様子をじっと見つめていた。


そして二人は他愛のない会話を繰り返す。

ヴェルムはどうやら長旅の中ここの噂を聞きつけてやってきたそうで、コメスはその旅の話を静かに聞いていた。

コメスも自身の故郷の話をすると、ヴェルムは興味深そうな顔でそれを聞く。


「んじゃ、今日はありがとな。また来るぜ」

「えぇ。いつでもいらっしゃってください」

そう言うと、コメスは屋敷を後にするヴェルムを見送った。


「案外チョロそうなやつだったな………」

ヴェルムは帰り際、誰にも聞こえないよう小さく呟く。

口角が小さく上がり、その顔はまるで何かを企んでいるような表情をしていた。



それから二日後、再び屋敷の扉が開く。

「おーい!コメスさーん!遊びに来たぜーー!!」

ヴェルムの声が屋敷全体へと響く。

「あらヴェルムさん。案外早い再開でしたね」

その声を聞いたコメスもまた、万遍の笑みでヴェルムを迎えようとした。

しかし、彼の背後にいる二十人の怪しい人影を見てその瞳を豹変させる。


「こちらの方々は?」

「俺の仲間さ。ちと多いけど、こんな広い家なら問題ねぇだろ?」

たしかにコメスの屋敷の広さであればこのくらいの人数を入れるくらい容易いことではある。

しかし、問題はそこではなかった。

コメスは後ろにいる怪しい集団から僅かに漏れる殺気を感じ取っていた。

黒いコートに深くフードを被り、そして顔にはマスケラを装着している。

その怪しすぎる集団の風貌と殺気にコメスは警戒していた。


「今日は何をしに?」

「決まってんだろ?お茶会だよ、仲間達にもコメスさんの話を聞いてもらおうと思ってさ」

まるで古い友達のように接するヴェルム。しかしその顔は何かの企みに満ちた目付きをしていた。


「申し訳ございませんが、本日は立て込んでおりまして。また後日ご来客していただけると幸いです」

コメスは紳士的な振る舞いを崩さずにヴェルム達が屋敷に入るのを拒んだ。

その途端、ヴェルムの表情が変わる。

尋常ではない程に溢れ出る殺気と、その強者のオーラにコメスが構える。


「………お父様…?」

扉の隙間から見ていたラミアが声をかけると

「ラミア、今日は部屋にいなさい。決して部屋から出ることは許しません」

と、コメスは厳しい目付きでラミアに返す。

その表情に何かを感じ取ったラミアは、そっと部屋の扉を閉める。


「まぁそうなっちまうよな。でも、最初っからこれが目的だから文句ねぇよな!!」

ヴェルムは全身に雷を纏い、高速でコメスに接近する。

そして手のひらに収縮させた雷をコメスの胸に放出させた。

「ふんっ!!」

しかし、コメスもまた雷魔法で相殺。

衝突した二人の雷が屋敷全体へと散らばる。


「やるじゃねぇか…っ!!なら全員でやるぞ!!!」

「…………」

ヴェルムは仲間を引き連れ、全員でコメスへかかる。

コメスもまた、彼らに引けを取らぬ程の実力を発揮し、交戦を繰り返した。


十数時間は経ったであろうか。

二人は呼吸を荒くし、全身の力を使って踏ん張らなければ立っていられない程に披露していた。

ヴェルムの二十人の仲間は既に果てており、その死体が屋敷の床全体を埋め尽くすように倒れている。

「はぁ…はぁ……まさかここまでやるとはな………」

コメスはこれでもマルフィーザでは一番の魔術師だ。

その実力をヴェルムは認め、賞賛する。


「まだ…やりますか……?」

コメスの挑発。しかしコメスもまた満身創痍であり、もうほとんど戦える魔力は残っていなかった。


「あぁ、でもこれで最後にしようぜ!!!」

ヴェルムが高速でコメスに近づく。

またあの雷魔法。コメスはそれを見切り、同じ雷魔法で対抗しようとした。


しかし、ヴェルムの雷は放たれる瞬間にその形を変えた。


雷魔法トニトルス撃雷ノ槍(イクトゥハスタ)!!」

手の中に収縮されたヴェルムの雷が槍の形状となり、コメスの腹部を貫く。

そして、彼の内側から強力な雷を流し込んだ。


「あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"!!!!」


内側から流れる雷の激痛を受けたコメスの断末魔が屋敷に大きく響き渡る。

(ラ……ミア…………)

全身黒焦げとなったコメスは、最後に娘のことだけを思いながら、崩れ落ちるようにその場へ倒れた。


「……あばよ、コメスさん。これで任務完了だぜ」

足元に倒れるコメスにそう言い放ち、屋敷を出ようとする。

「お、父…様………」

微かに聞こえた幼い少女の声に、ヴェルムはその足を止める。

屋敷に響いたコメスの断末魔に異変を感じたラミアが、部屋から出てきてしまっていたのだ。


床に倒れ、血を流す父親の姿。その光景にラミアはただ絶望に満ちた表情をしていた。


「お父…様………!!」

ラミアに現れた感情、それは悲しみよりも先に怒りの感情だった。

「よくも…よくもお父様を!!!」

ラミアは怒りに満ちた顔で単身ヴェルムに立ち向かう。

しかし、齢十歳の少女が魔術師相手に叶うはずもなかった。


「うるせぇよ、ガキ」

「っ……………!!」

ヴェルムは雷の斬撃でラミアの体を切り裂いた。

あまりにも深いその傷口から、大量の血が溢れ出る。


「あっ…あっ………」

声に出せないほどの痛みがラミアを襲い、その場に倒れる。

そんな彼女を、ヴェルムは呆気ない者だったと見下して屋敷を去っていった。



(死ぬんだ……)

(もう、普通には生きられないんだ…………)

ラミアの心に、ただ絶望だけが溢れ出る。

ヴェルムに切り裂かれた深い傷は、幼い彼女にとって致命傷だった。

「もっと……もっと、生きたかったな………………」

朦朧とする意識の中、ラミアは父親と共に過ごした時間を鮮明に思い浮かべていた。


しかし

「………………え?」

今にも消えそうなラミアの意識が徐々に戻っていき、霞んでいた景色が段々と鮮明になっていく。

「なんで………」




それは、彼女だけの魔法が初めて発現した瞬間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ