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WitchDoll〜傀儡人形は夢を見る〜  作者: うつろ
chapter-3【裏切りと旅立ち編】

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34/45

〈3-4〉衝突の果て

その出来事は、まるで突然夢から覚めるように訪れた。


闇の奥からゆっくりと歩いてくるゲラーテ。

彼女は指導者としての鋭い瞳をこちらへ向ける。


「君達には学園への侵入は禁止と命令したはずだが?」

氷のように冷たい声でゲラーテは言葉を刺す。

リゼット達が今学園にいるのはお忍び。誰かに見つかることは許されない。

それが、よりにもよってゲラーテに見つかってしまった。


「こんばんは教授。そんなあなたこそ、何故ここに?」

言葉を返したのはスピカだ。

しかし

「質問に答えろ。何故ここにいるかと聞いている」

スピカはその強い言葉に怯み、考える。

言葉の強さにでは無い。

彼女はゲラーテが犯人である可能性を感じているからこそ、この場をどう乗り切るか考えていた。


「答えないのなら、お前達にはそれなりの罰を……」


そうゲラーテが言いかけた時


「少しばかり三人で散歩をしてまして。それで、しばらく学園に来れないから一目見ておこうと思ったんですよ。たしか、学園への侵入は禁止とする…でしたよね? 私達は学園を見に来ただけであって侵入したわけではありませんよ」


軽い微笑みを向け、スピカが答えると

「そう、三人で…ちょっとね」

「………………うん」

リゼットとヴェーターも彼女に続いた。


その言葉にゲラーテは納得したかのように軽く息を吐き、ふふっと笑った。

スピカはその表情に安堵し、張り詰めた空気がいつもの静寂へと変わる。


「三人で、ねぇ………」

ゲラーテは再び三人を見つめる。

柔らかい瞳、だがその声は未だ冷たい。

「君達も非道になってしまったのかい?君達はいつも四人でいただろう。まさか一人だけ仲間はずれにするなんて」


安心した空気が、再び張り詰めたものへと変わる。


「それとも、学園の中にいるのかい?あの子なら好奇心で中に入ってもおかしくないが、それとも………」


ゲラーテは全てを見透かすような視線を向け、凍り付くように冷たく、そして鋭く口を開く。


「─────メルティに頼まれて犯人探し…とか?」


その瞬間、三人の肩がぴくりと上がる。

ゲラーテの憶測でしかない。しかし、例えそれが憶測だったとしても、その言葉は三人に充分な反応を与える力があった。


「なるほど。その顔を見れば充分さ……」

全てがバレた。侵入も、犯人調査も。

「あなたは知ってるんですか?犯人を」

ならば何もしないより、ここで直接聞いた方が良いと判断したスピカ。

ここで会話を続けることで時間稼ぎをする作戦だ。


「……………………」

ゲラーテはスピカを睨みつける。

彼女もまた、スピカの観察力を警戒していた。

事実、スピカは魔法大祭の迷宮攻略戦で大きな戦果を出している事をゲラーテは知っている。

そのため、表情や発言には細心の注意を払っていた。


「知ってる…と言うのは少し違うかな」

ゲラーテは少し考えた後、スピカの問いに答える。

「実は私もとある人を探していてね、それでここに来たんだ。そしたらまさか君達に出会うとはね。偶然か、それとも必然か。どちらにせよ、君達がいたのは好都合だ」


その言葉に再びスピカが返す。

その時、三人の背後から冷たい風が吹いているように感じていたが、三人とも緊迫した空気の中でそれを気にしている余裕など無かった。


「好都合?どうしてですか?」

スピカが言うと、ゲラーテは不敵な笑みを浮かべ、告白する。


「厄介な奴から、先に殺りたかったからさ」


その言葉と圧に三人は即座に反応し、魔法を準備する。

傀儡魔法、天球魔法、拒絶魔法。

それぞれが自身の魔法を発動し、戦闘態勢に入ろうとした。


しかし

「もう遅い」

背後から伝わる冷気が強くなっていることに気付く。

しかし、気づいた時には既に手遅れだった。


三人の背後に現れた郡の氷柱が勢いよくその身体を貫こうとする。

まるで学園長を殺害した時のように、その鋭い氷の柱は三人の身体へ向けて勢いよく放たれる。


魔法を使う暇もない。間に合わない。

絶体絶命。


炎魔法イグニス獄炎ノ滅却(ヘルトルオ)!」

氷柱が放たれた瞬間、突然地面から獄炎の炎が出現する。

炎に焼かれた氷は、リゼット達の体を貫く寸前で炎によって溶かされていた。


「…………………………………っ!」

「よ、良かった……」


リゼット達が後ろを振り向くと、そこには既に学園内で調査を終えていたメルティ達の姿があった。


「あーーーーーーー!!!犯人の先生だ!!!!!!」

シキが叫びながら指差すと、ゲラーテは大きな舌打ちをする。

「まさか来ていたとはね…」

「こっちのセリフよ。どこまでもしつこい男だこと」

メルティの言葉にゲラーテが返すと、メルティはそのまま言葉を続ける。

「裏切り者がいるってのは勘付いてたけど、まさか君だとは思わなかった。僕もまだまだだね、一番親しい君に少しでも情が湧いていたみたいだ。もっと疑うべきだったよ」


メルティの言葉に、ゲラーテはニヤリと笑みを浮かべる。

「馬鹿だね。裏切り者は…一人ではない」

その告げると同時に、ゲラーテは再び氷魔法を放つ。


氷魔法グラキエース氷晶ノ崩壊(クルスルイナ)!」

ゲラーテがそう唱えると、リゼット達を大きな影が覆い尽くす。

彼女はリゼット達の頭上に巨大な氷を生成した。

そしてそれは空中で割れ、その鋭い欠片がリゼット達を襲う。

スピカは天球魔法で、ヴェーターは拒絶魔法で氷を受け止める。

そしてリゼットもまた傀儡魔法で人形を複数展開し、光魔法を集約させて相殺しようとした。


だが、突如彼女の脳裏に浮かんだのは決勝の時の記憶だった。

リゼットの指が小さく震える。

彼女は咄嗟に魔法を変え、防御魔法でその身を防ぐ。


「ど、どうしたのリゼット」

リゼットの変化にヴェーターが心配するも、彼女はただ黙って軽く首を振った。

「……………………大丈夫」

その声は恐怖に満ちていた。

またあの時のようになるのが怖かった。本気で戦うのが怖かった。


「三人とも離れて!」

瞬間、背後から聞こえるメルティの声に反応し、三人はすぐ左右に退ける。

炎魔法イグニス獄炎ノ豪魔(ヘル・ディアボロルム)!!」

メルティから放たれる獄炎の魔法。

それは、あの大会では見せなかった彼の最高火力とも言える程の凄まじい威力だった。

触れてすらいないのに身体が焼けるように熱い。まるで、炎の海に飛び込んだかのような感覚が全員を襲う。


「厄介ね。氷魔法グラキエース氷晶ノ零絶クルス・アブソリュート

ゲラーテはメルティに対抗し、こちらも最高火力とも言える程の氷魔法を放つ。


二つの強大な魔法が爆発し、まるで全てが吹き飛ぶほどの爆風が五人を襲う。

「やあぁぁあああああああああ!!!!」

「うぐっ!!!!」

シキとアルケーは学園の柱にしがみつく。

リゼットは防御魔法でスピカごと爆風から守り、ヴェーターは拒絶魔法を使いそれを無効化。

吹き荒れる砂煙がその場にいる全員を包み込んだ。


「…………………………」


沈黙の中、砂煙が徐々に晴れてゆく。

その時には既に目の前にゲラーテの姿は無かった。


「……今日はもういいわ。メルティ、あなたまでいるとなると正直厄介だし」

空高くから聞こえてくる声。上を見上げると、ゲラーテは空中に氷を形成し、そこに佇んでいた。

月光が彼女の姿を怪しく照らす。


「最後に一つだけ伝えておこう」

そう小さく口を動かすと、ゲラーテは三人を怪しく見つめ続けた。



「君達の"果て"は、もうそこ来ている………」




そう告げると、彼女は夜の闇へと消えていった。

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