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WitchDoll〜傀儡人形は夢を見る〜  作者: うつろ
chapter-3【裏切りと旅立ち編】
33/37

〈3-3〉月光に映る影

夜。


月明かりが静まり返った学園を淡く照らす。

人の気配は無く、風の音だけが静かに校舎を撫でていく。


そんな約束の場所に、リゼット達は集まった。


「みんな揃ったね」


メルティが静かに口を開く。

その表情は朝出会った時とは違い、再びあの穏やかな顔をしていた。

「さて、始めようか」

その一言に五人は表情を引き締める。

夜の静けさの中、静かに吹く風がリゼット達の髪を揺らす。


「結論から言うと、僕は犯人を既に大体特定している」

「は?」

「ぇえ!?」」

メルティが告白すると、シキとアルケーがつい声を漏らす。

事件が起こったのは今日の朝。この短期間がメルティが既に犯人の手前まで来ていたことに驚きを隠せなかった。


「けど確信が持てたわけじゃない。君達に協力して欲しいのは、それを確信へと変えるための行動なんだ」


そう告げると、次にスピカ声を発する。


「なら学園に入る人達と学園の外で待つ人達、二手に別れた方がいいわね」

「うん、僕もそう思っていたところなんだ」

スピカの言葉にメルティは肯定するも

「理由は?」

と、アルケーが腕を組みながら口を挟んだ。

スピカはそんな彼に視線を向けて言葉を返す。


「証拠は必ずしも学園内だけにあるとは限らない。それに、私達が今していることはお忍びでもあるのよ?全員が固まってたら、もし偶然誰かと出会ってしまった際に怪しまれるわ」

「……なるほど、一理あるな」

その言葉に、アルケーは納得した表情で言う。


「じゃ、じゃあ僕は外組で」

ヴェーターが真っ先に手を上げる。

「だってなんか、夜の学園とか怖いし………」

誰よりも臆病な性格の彼は、自ら学園外に残ると言う。


「なら私も外ね。誰かの侵入を防ぐという目的でも、私は外の方が適任だと思うわ」

ヴェーターに続いてスピカがそう告げると、その視線をリゼットへと向ける。

「リゼット、あなたも外にいてもらえないかしら。万が一戦闘になった時にあなたがいてくれれば心強いわ」

「………………………うん」

その要望に、リゼットは黙って頷く。


これで待機組の三人はリゼット、スピカ、ヴェーターの三人で決定した。


「最初からそのつもりだったが、俺は侵入組だな」

アルケーは自信に満ち溢れた表情で言葉を発する。

「うちも!!夜の学園徘徊だね!!!」

「状況を考えなさい」

バシッ

「いたっ」

緊迫した状況の中、一人だけ楽しんでそうなシキにスピカのデコピンが飛ぶ。

そんな二人のやり取りに、どこか張り詰めた空気が和らいだように思えた。


これで侵入組の三人はシキ、アルケー、メルティの三人で決定した。


「それじゃあ始めようか」

メルティが五人を見つめ告げると、その身体を学園長へと向けた。

「───作戦開始だ」

そう言うと、侵入組の三人は静かに夜の学園へと足を踏み入れ、待機組はその背中を見送った。




───────────────────────




夜の学園内。

昼間とは違う静寂の空気の中、足音だけが静かに廊下へ響く。


「実際入ってみると割と雰囲気感じるな…。なんか寒気してくるぜ」

夜の学園に入るのは初めてだ。そのため、空気の違いにアルケーは戸惑う。

「ね!!夜の学園って感じするね!!!」

アルケーとは逆に、シキはむしろ楽しんでいた。


そんなやり取りをしながらメルティについて行くと、彼がふと一つの扉の前で立ち止まる。


「二人とも、まずはここに入って欲しい」


そう言うと、彼は重い扉を静かに開く。

部屋へ足を踏み入れた瞬間。

「うわっ!なんか寒くねぇか!?」

「わかる!!冷たい風がぶわってくる感じ!!」

シキとアルケーが突然放たれた冷気に肩を震わせる。

肌を刺すような冷たい風。まるでここだけ別の空間では無いかと思ってしまう程だった。


「ここが事件のあった学園長室。ここに入って欲しい」

その言葉に、二人は息を飲む。

「行くよ」

その言葉のともに学園長室へと入っていくメルティの背中を追い、二人とも部屋へと入っていく。


そして、部屋に入ってから数歩歩いた先でメルティは立ち止まり、腰を下ろした。

「ここだよ」

メルティの指差した場所には、乾いた血痕がかろうじて残されている。

掃除したか、あるいは乾いてしまったのか、その血痕は朝メルティが確認しに来た時よりも大分小さくなっていた。


「ここで学園長は殺された」

そう言いながらメルティは静かに床へ触れる。

部屋の空気がさらに重くなる。

「朝、君達と別れた後に一度ここへ来たんだ。その時にこの痕跡を見つけた」

メルティはその手に付着した冷気でアルケーの手に触れる。

「つめたっ!」

まるで痛いと思えるほどに鋭い冷たさがアルケーの掌に伝わる。


メルティは静かに立ち上がると、窓の外を見て口を開く。

「これは僕の推測でしか無いけれど、おそらく犯人は…………」

その瞬間だった。


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!」

シキが突然、学園中に響く程の大きな叫び声を上げる。

「どうした!?」

「まさか犯人か!ぶっ殺す!!」

シキの叫びに、二人はすぐさま戦闘態勢に入る。

しかし彼女の前には誰もおらず、気配も無い。


「ほ、本当なの!?!?本当に本当にあの先生がやったの!!!?」

そう何度も確認した後、シキは目を丸くしたままメルティへと詰め寄る。

「犯人!!分かったよ!!!!」

何が起きたのは分からないメルティとアルケーは、戸惑いの表情でシキを見つめる。

「あの先生だって!!あの銀髪の!!!えっと、朝に話してた先生!!!」


その言葉を聞いたメルティは咄嗟に表情を変える

それは確信を持った者の顔だった。

しかし、シキの体質を知らないメルティは彼女の言葉に疑問を感じる


「どうやってわかったの?」

「ゴーストちゃんが教えてくれたの!!犯人はあの人だよって!!!」

「なるほど、そういうことか」

メルティの目が一瞬見開く。

彼は魔法大祭でシキと一戦を交えている。だからこそ、彼女の言うことが嘘では無いと信用できる。


「ありがとう、君のおかげで確信が持てたよ」

メルティはシキに告げると、ゆっくりと顔を上げ二人へと視線を向ける。

「これで、犯人が確定したね」

メルティは少しだけ寂しそうな瞳で窓の外を見つめた。


「なら早速外の奴らに報告しに行くぞ。犯人がわかった以上、どうここに用はねぇからな」

「そうだね」

そして、三人はそのまま学園長室を後にした。

外にいるリゼット達に犯人の正体を告げるため、一直線に三人の元へ向かった。




─────────────────────




その頃、待機組は

「………………………」

学園入り口の壁でリゼットが腰掛ける。

「三人とも大丈夫かな………」

「大丈夫よ。メルティもいるんだし」

学園内に入った三人を心配するヴェーターに言葉を返すスピカ。

しかし彼が心配するのも無理は無い。事実、犯人が学園内に居たとしてもおかしくは無いのだ。


「今はゆっくり待ちましょう。それに、私達だってお留守番でここにいるわけじゃないんだから」

「う、うん………」

スピカの言葉にヴェーターが深く頷く。

そして、静寂の中三人の帰りを待っていた。


その時だった。

「そこで何をしているのかしら?」

突如聞こえてきたその声に、三人は危険を察知した顔で振り向く。

暗闇から近づいてくるその影は、雲の隙間から静かに顔を出す月の光によって少しずつ映し出される。



何度も見てきた姿。そして何度も聞いた声。

月が完全に顔を出したと同時に、その姿は三人の目に鮮明に映し出された。



三人の元へと歩み寄る、ゲラーテの姿が。

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