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WitchDoll〜傀儡人形は夢を見る〜  作者: うつろ
Chapter-2【魔法大祭編】
27/34

〈2-17〉超えられぬ恐怖

メルティとシキの試合が終わり、トーナメント戦はついに準決勝へ。

少しの休憩を挟み、そして再び次の試合が始まろうとしていた。



「…………………」

とある控え室にて、アルケーは静かに息を吐く。

誰よりも一番で無くてはならない。

その為にも、次の試合は絶対に負ける訳にはいかない。


彼の脳裏に鮮明に映し出される、リゼットとメルティの二人の姿。

「絶対に…」

震え上がる拳を強く握りしめ、ゆっくりと立ち上がる。

「絶対に、負ける訳にはいかねぇ……」

そう呟くと、彼は鋭い眼差しで控え室を後にする。




「さぁ!トーナメント戦もついに準決勝へ!!!残す試合もあと三つ!次はどんな戦いを見せてくれるのか!!」

全体にゲラーテの声が響き渡る。


「さぁ、準決勝に勝ち上がった最初の二人はこいつらだ!!!」

その声と共に入場する二人。

威圧されてしまいそうな眼光で相手を見つめ、一歩、また一歩と足を踏み入れるアルケー。


そして、そっと目を開き、軽やかな足で会場へと歩み行くメルティ。


「ちゃんと勝ち上がってくれてよかった。楽しみにしてたよ、君との戦い」

メルティは静かに微笑み、声をかける。

しかし、アルケーのその瞳は獲物を狩る虎のように鋭い眼差しのまま、ただ一言言い放った

「俺が勝つ」

「無理だよ」

即答。メルティは既に、自身の敗北はありえないと確信していた。


そんな二人を見つめ、そっと笑みを浮かべる。

「それじゃ……初め!!」


「オラぁぁあああ!!!」

開幕と同時に放たれたアルケーの炎魔法。

複数の炎の中、彼は大地を強く蹴り飛ばし、メルティの元へと走り行く。

「浅はかだね」

そんな彼に対し、メルティもまた炎魔法で全て打ち返す。

「黙れや!!俺はテメェと無表情女倒して、一番になんなきゃいけねぇんだよ!!!!!」

アルケーは拳に炎を宿し、メルティの頬へとその拳を入れようとした。


しかし、その拳はメルティには届かない。

炎魔法イグニス獄炎ノ銃弾(ヘルプルンブム)

アルケーの炎魔法は全て、メルティによって打ち消される。

そしてアルケーが拳を入れようとした瞬間、側面から放たれた炎の銃弾が彼に直撃した。


「うぐっ……」

もろに攻撃を食らったアルケーは、地に膝を着く。

メルティはそのまま軽やかな足で背後へと下がる。


「言っただろう?浅はかだと」

まるで跪く少年を見下すかのようなその瞳に、アルケーは再び鋭い眼光で返す。

「うるせぇよ…余裕ぶっこいてんじゃねぇよ……」

アルケーは再び立ち上がると、次は巨大な炎を生成。火力で潰す作戦に出る。


炎魔法イグニス獄ノ劫火(インフェルノ)!!!」

大量の魔力を込めた巨大な炎は、メルティへ向け一直線に放たれる。


だが、メルティにとってそれは、ただの偽りの炎でしか無かった。

炎魔法イグニス獄炎ノ劫火(ヘルインフェルノ)

一見すればアルケーと同じ技。

しかし、魔力も、火力も、全てを上回る一撃。

当然アルケーの炎は掻き消され、そして無慈悲にも残ったメルティの炎がアルケーを襲う。


「…っ!!!無限魔法!!!!!」

咄嗟に発動した無限魔法により、なんとかその場をやり過ごす。

しかし、メルティの攻撃はまだ終わっていなかった。

「それで止めたつもり?」

巨大な炎の後ろから、再び炎の銃弾が放たれる。


「ふざっけんな!!!!!」

止まらないメルティの猛攻に、アルケーは炎魔法と無限魔法を駆使し続ける。

しかし、圧倒的な火力と技術を前に、彼の攻撃が届くことは無かった。

何度も何度も攻撃をくらい続け、何度も膝をついては何度も立ち上がる。


「君の敗因を教えてあげようか」

メルティは不敵に笑いながら告げる。

しかし、その言葉がアルケーの逆鱗に触れる。


「敗因?ざっけんな、まだ終わってねぇんだよ!!!!」

アルケーは再び強く血を蹴り、メルティの元へと直進。

炎魔法イグニス獄炎ノ放射(ヘルエミッター)

しかし、正面から放たれた彼の炎に、ただ退くことしかできなかった。

その拳も、その体も、メルティの元へと辿り着くことはできない。


「周りが見えてないんだよ。君は」

「何が言いてぇ」

メルティの言葉に、アルケーは問う。

「敗因って言っただろう? 君は何故だか一番に執着しているみたいだけど、それは言い換えれば、一番になることしか見えてないんだよ」


その言葉に、アルケーは再び拳を強く握りしめる。

「当たりめぇだろうが…この俺が一番になんなきゃいけねぇに決まってんだろうが!!!」

アルケーはただ叫んだ。

一番でなくてはならない。この先もずっと、負けることは許されない。

まるで呪縛とも呼べるその執念が、彼の心を覆い尽くす。


「じゃあ聞くけれど、どうして一番じゃなきゃいけないんだい?」

「…………っ!!」


その言葉に、アルケーは息を呑む。

「……………」

その瞬間、先程まで鋭い猛獣の様だった眼光が泳ぎ始めた。

「それは…」

アルケーはそっと口を開き、話し始めた。




─────────────────




アルケー。

彼は名門の家系に生まれ、裕福な環境と生まれつきの才能に恵まれて、育ってきた。


「アルケーすごいね!!」

「アルケー!また魔法教えてよ!!」

小さい頃、彼はみんなの憧れとして君臨していた。

誰よりも一番優れており、誰よりも一番強かった。


彼はこのままずっと、恵まれた人生を送っていく


───────はずだった。




それは、彼がまだ十歳にも満たなかった頃。

「貧弱ぅー!!」

「お前みてぇな奴はいなくなればーか!!」

「お、アルケー!お前も来いよ!こいつの魔法くっそちっちゃくて弱ぇんだぜ!!エリート魔術士様の実力をこいつに見せてやれよ!!」

アルケーが不意にも見つけてしまった光景。

それは、才能のない者が虐げられ、傷つき、そしてその身体を地に伏せる姿。


今まで自分の周りには無かった事、いや、有るはずのなかった光景を目にした彼に現れた感情。


それは、恐怖だった。


もしこれが自分だったら。名門に生まれた自分が、もし一番じゃなかったら。

きっと今、彼のように地に顔を打ち付けられ、同じ結果になっていたかもしれない。

その恐怖だけが、彼の感情を埋め尽くしていた。

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― 新着の感想 ―
XのRT企画から伺わせていただきました! 思いの外しっかり目に学園異能モノっぽい王道のラノベ感を感じる作品だと思いました! たぶん主人公のキャラクターで今後他作品との差別化を図っていくのかなと思うの…
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