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WitchDoll〜傀儡人形は夢を見る〜  作者: うつろ
Chapter-2【魔法大祭編】
20/32

〈2-10〉推測と解析

魔法大祭第二回戦、トーナメント戦。

参加者たちは次々と激闘を繰り広げ、勝者は次のステージへと進んで行く。

シキ、ヴェーター、アルケー、メルティ。彼らもまた、己の力を示し、次のステージへと駒を進めていた。



そして

「さて、次は私たちの番ね」

「…………うん」

静かに立ち上がるリゼットとスピカ。

二人は互いに視線を交わすと、それぞれの入場口へ歩き出した。

「がんばれぇぇぇぇ!!リゼットーー!!スピカーーー!!」

「ふ、二人とも頑張ってね」

シキとヴェーターの声援を背に、二人は控室を後にする。


「お待たせしました!!」

ゲラーテの声が会場に響き渡る。

「魔法大祭第二回戦!今回の対戦はこの二人だ!!」

歓声が爆発する中、互いに向かい合う二人。

誰よりもずっと近くに居た友達、だからこそ知っている。

相手がどれほど恐ろしく、そして未知の存在なのかを。

「では、魔法大祭第二回戦Gブロック。試合開始だ!!」


「…………傀儡魔法」

「行くわよ。天球魔法」

試合開始の合図とともに、二人は互いの魔法を展開する。

リゼットは手に持った人形を十体に複製させ、彼女の周りに配置され、スピカは魔法を展開するとその身体がふわりと宙に浮き上がった。


「…………行くよ」

先に動いたのはリゼットだ。

彼女は六体の人形を同時に動かし、そして指示を送る。

炎魔法。風魔法。土魔法。氷魔法。水魔法。光魔法。

六属性の魔法が一斉に放たれ、スピカを四方八方から包囲した。

「なっ、同時詠唱だと!?」

「しかも六つ同時に……バケモンかよ!」

観客席が響めく。普通の魔術士であれば、魔法の同時詠唱など不可能に等しい。例え高度な魔術士でも、せいぜい出来て二つか三つまでだ。


六つの同時詠唱をたった一人で防ぐ術なんてあるはずがない。そう思われた。

しかし次の瞬間、スピカを囲んでいた魔法は、彼女の目前で大きく軌道を逸らした。

当たっていない。いや、届いてすらいない。

まるで見えない壁でも存在するかのように、リゼットの魔法はスピカの元へ届くことなく彼女の周りを浮遊するだけだった。


「全部止めた!?」

「いや、止めたんじゃない……届いてない!!」

この一瞬にして、会場全体の空気が変わる。

リゼットは僅かに目を細めた。

「…………厄介」

「ええ、すごく厄介な魔法でしょ?」

スピカは優雅に微笑む。

「私の魔法は重力魔法だとか宇宙魔法だとか色々言われるけれど、そんな単純なものではないわ」

その笑みは揺るがない。あのリゼットの同時詠唱を見てもなお、彼女は最初から一切表情を変えなかった。


「今度は私の番ね」

無数の氷刃が空中へ現れる

リゼットも即座に人形へ指示を送り、自身の元へと戻そうとする。

「させないわよ」

指先を動かし人形を戻そうとした瞬間、スピカに接近していた三体の人形が動かせなくなっていることに気付く。

「…………え」

操れない、指示すら通らない。まるで糸が切れてしまったかのように

そして、その一瞬の動揺を突いたスピカの一撃がリゼットを襲う。

氷魔法グラキエース

無数の氷の刃がリゼットへと放たれる。

「…………炎魔法イグニス

動かせる人形を使った辛うじて迎撃。ギリギリのタイミングで攻撃を防ぐことはできた。

防ぐので精一杯だった。


攻撃は届かない。人形は三体封じられた。

(…………このままじゃ押し切られる)

リゼットは冷静に考える

スピカの魔法はおそらく攻撃型じゃない。防御に特化したタイプの魔法だ。

そして、それはスピカから一定の範囲内に入った瞬間強制的に発動する。


リゼットは解析する。

(…………前線に出せる人形は四体。三体は既に封じられた。なら、条件を変えて)

「…………ここ」

人形を一体、スピカの真上へ配置。そのまま土魔法を叩き落とす。

「まぁ、普通に上から来るわよね」

しかしそれもスピカの予想範囲内。当然彼女に届くはずもなく、魔法は軌道を逸らした。

(…………次)

スピカが上からの攻撃に気を取られた瞬間、死角の三方向からの追撃。更に今回は時間差を用いての攻撃だ。

炎魔法、風魔法、光魔法の同時攻撃。

条件を少しずつ変えながら複数の魔法を放つ。


「試すのはいい事だわ。けれど、まだ私には届かない」

しかし、魔法は全てスピカを前にして軌道を逸らす。

スピカの表情には、焦りなど一切ない。逆に、まるで余裕すら感じさせる笑みがあった。


一方で、リゼットもまた表情一つ変えなかった。

彼女はただ勝とうとしているのではない。

攻撃は全て実験。魔法は全て分析材料。

彼女の攻撃はスピカに攻撃を当てるためではなく、天球魔法そのものを解析するために放たれていた。




「やっぱスピカ強いよ!!リゼットの攻撃、全然当たってない!!!!」

シキが興奮気味に叫ぶ。

「流石に……スピカが勝つんじゃないかな……。」

ヴェーターも呟く。

二人だけではない。観客席の誰もが、スピカ優勢を疑わなかった。

だが



(天球魔法。攻撃は届かない、人形は支配される、だけど……)

リゼットは思考を巡らせる。

人形を動かし、魔法を撃つ。しかしスピカには届かない。

また撃ち、また封じられる。

幾度と無くリゼットは魔法を繰り返していた。


その全てを記録し、比較し、そして分析する。

「無駄打ち……ではないわね」

スピカが軽く微笑む。

それでもリゼットは止まらない。

「………………何か、ある」

多方向から、条件を変えながら放たれたリゼットの魔法。その過程でたしかに違和感があった。

スピカの天球魔法、それは一見重力を操っているか、もしくは当たらないようにする魔法のように見える。


しかし、リゼットは気付き始めていた。

天球魔法。その完全無欠に見える魔法に隠された、たった一つの法則に。

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