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WitchDoll〜傀儡人形は夢を見る〜  作者: うつろ
Chapter-1【エウケー入学編】
2/11

〈1-1〉エウケー魔法学園

「楽しみだなぁ!どんな人がいるんだろうね!」

「ぅぅ……人が多い……やっぱ学校って苦手だ……」

「この空気、予測通りって感じね」

「どけ。そこは俺が通る道だ」


春の朝。

エウケー魔法学園へと続く道を、 多くの新入生達が歩いていた。

見えない誰かへ話しかける、華奢な文学少女。

人混みを避けるように、気配を消して歩く陰気な少年。

全てを見透かしたような瞳で学園を眺める、美しい少女。

そして、人波を割るように堂々と進む高圧的な少年。

彼らは皆、 今日からエウケー魔法学園へ通う魔術士の卵達だ。


リゼットもまた、その中を歩いていた。

淡い金髪を風に揺らしながら、ただ静かに学園を見つめる。

彼女は何も語らず、ただ沈黙の中で運命の先へ導かれるように、 静かに歩みを進めていく。


───────────────


入学式。

巨大な講堂には、 数十名の新入生達が並んでいた。

静まり返る空間。

その最前列で、一人の女性教師が新入生達を見渡している。

「エウケー魔法学園へようこそ。まずは、ここへ辿り着いた君達を賞賛しよう」

教師は静かに拍手を送る。

しかし、やがてその口元に不敵な笑みが浮かんだ。

「さて、本題だ」


その瞬間。

講堂の空気が、僅かに張り詰める。


「ここはエウケー魔法学園。魔法を学び、魔法を極め、魔法で生きる場所だ」

「魔法世界の卵達よ――学べ、励め、そして魔法に生きろ!」

教師は叫ぶ。そして、新入生達の未来を煽るように。

「君達は、この世界に“生きた証”を残していけ」

と強く叫んだ。


そして最後に、その女性教師は先程までの声とは打って変わって静かに告げる。


「――君達の“果て”を、楽しみにしている」


その言葉だけを残し、 彼女は壇上を去っていった。


その後はクラス発表や担当教師等の説明が淡々とされ、流れるように入学式を終えた。



───────────────



一年B組。

リゼットが教室の扉を開けた瞬間。

ざわり、と空気が揺れる。

「見て、あの子……めちゃくちゃ綺麗……」

「いいなぁ……あんな顔に生まれたかった……」

「……あまりにも美しい顔。俺でなきゃ惚れちゃうね」


教室のあちこちから、 小さなざわめきが漏れる。

校門をくぐった時から、 既に彼女は目立っていた。

透き通るような白い肌。

淡い金髪。

そして、 ガラス細工みたいに儚いコバルトブルーの瞳。

その姿は、他の生徒達にとっては強く印象に残っていたようだった。


リゼットは周囲の視線を気にすることもなく、静かに自分の席へ腰を下ろした。

その隣には、一人の少年が小さく身体を縮こませるように座っている。


「こ、こんな綺麗な人が僕の隣だなんて……あぁ、もう穴があったら入りたい……」


弱々しく声が漏れる。


薄い灰色の髪には、直しきれていない寝癖が残っており、鋭い三白眼に、うっすらと浮かぶ目の下の隈。

近寄り難いような雰囲気を纏っている反面、その姿はどこか小動物のように怯えて見えた。


少年は俯いたまま、自分の足元を見つめている。

リゼットは無表情のまま、不思議な生き物でも見るように彼を見つめた。


――その時。


勢いよく教室の扉が開かれた。

「全員いるかー!?」


瞬間、 騒がしかった教室が静まり返る。

現れたのは、一人の男性教師だ。

教師は教室を見渡しながら、生徒達の顔を確認する。

「よし。じゃあまずは自己紹介から始めようか」

そう言うと、教師は小さな杖を軽く振った。

空中に黒板が浮かび上がり、白い文字が刻まれていく。


「今日からこのクラスの担当教師になったウィンヴェルだ。よろしく頼む」

簡潔な挨拶をし、そのまま続ける。

「入学式でも言ったが、ここは魔法に生きる場所だ。魔法を学び、魔法を極め、そして――魔法で自由になる場所でもある。つまり………………」

そこまで話したところで、ウィンヴェルはふと口を止めた。

「……いや、長話はやめておくか。退屈されるし」

と、ウィンヴェルはボソッと呟く。


生徒達の間から、小さな笑いが漏れる。

しかし次の瞬間、ウィンヴェルの表情が僅かに鋭く変わった。


「さて。授業は明日からだが、その前にやってもらうことがある」

教室の空気が軽くざわつく。


そしてウィンヴェルは、口元を吊り上げながら生徒たちに告げた。

「――魔法能力テストだ」

その瞬間。

教室が一気に騒がしくなる。

期待、不安、興奮。

様々な感情が入り混じる中、ウィンヴェルが軽く手を叩いた。


パンッ!


その音だけで、生徒達はぴたりと静まる。


「話を続けるぞ」

教師はゆっくりと教室を見渡した。

「君達には、自分の魔法を見せてもらう。そして、その力を五人の教師達が直々に評価する」


静かな緊張感が、教室を包み込む。



「つまり、君達の“今の実力”を見せてもらうってことだ」

ウィンヴェルは不敵に笑う

「全員ついてこい!」

そう言い残すと、ウィンヴェルは教室を後にした。

生徒達もまた、その背中を追うように席を立つ。


期待に目を輝かせる者。

不安げに俯く者。

静かに闘志を燃やす者。

それぞれが、ウィンヴェルの背中を追うように歩み始める。

そしてリゼットもまた、何も語らぬまま静かに、沈黙の表情で歩き出した。

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