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〈0-1〉だれかの夢の果て
もし、普通に生きることが出来たのなら、それはどれほど幸せなのだろうか。
もし、普通に死ぬことが出来たのなら、それはどれほど救いなのだろうか。
そんなことを想いながら、少女は静かに窓の外を見つめていた。
光を透かすような淡い金髪。
ガラス玉のように澄んだコバルトブルーの瞳。
そして、人形を思わせるほど白く美しい肌。
窓から差し込む朝の陽光が、その儚い姿を淡く照らしている。
少女の名は、リゼット。
今日から魔法学園へ通うこととなる、一人の魔術師だ。
リゼットは小さく目を擦り、説明会の際に支給された制服へ袖を通す。
鏡に映る自分の姿を見つめながら、彼女はぽつりと呟いた。
「……エウケーに行けば、きっと……」
その言葉の続きを、彼女は胸の奥にそっと秘める。
薄い表情のまま、両手でアンティークドールを抱いてリゼットは静かに部屋の扉へ手をかける。
――今この瞬間。
少女の“夢”と“運命”の物語が、静かに幕を開けた。




