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WitchDoll〜傀儡人形は夢を見る〜  作者: うつろ
Chapter-1【エウケー入学編】
3/12

〈1-2〉魔法能力テスト

エウケー魔法学園第一演習場。

そこに、様々な感情を抱えた新入生徒達が集められていた。

中央で、ウィンヴェルが振り返る。


「さて、お前ら。これから魔法能力テストを始める」


生徒達の間にそれぞれ、緊張が、期待が、不安が走った。

ウィンヴェルは軽く片手を挙げ、杖を振る。すると、演習場の中央へ巨大な水晶柱を出現させる。

透き通る程の綺麗な結晶。しかし、その内部では淡い魔力光が脈動している。

「まずは魔力量測定だ」

ウィンヴェルは水晶柱を軽く叩く。

「やることは単純。この水晶に触れて魔力を流し込む。すると、数値化された魔力量がそのまま表示される」


教師の言葉に、生徒達は小さく息を呑む。

「まぁ気楽にやってくれ。これは魔力を測るだけのもの、君達の魔法の才能テストと言うよりかは、まぁ身体測定みたいなもんだ」

そう笑うウィンヴェル。

しかし、生徒達を観察するように静かに見据えていた。


「……で、誰から行く?」

そう言った瞬間だった。

「どけ、俺が先だ」


邪魔だと言わんばかりに周囲の人間を乱暴にどかし、一人の少年が前へ出る。

紺色の髪をオールバックに整え、自信たっぷりな表情で先頭へと立つ高圧的な少年。

「おぉ、随分自信満々だな。確か名は……アルケー。だったな?」

「当然だ。そこら辺の無能共に、この俺の才能を見せるいい機会だ、お前らは挫折する奴が現れねぇことだけ祈ってろ」


周囲が揺れる。

アルケーはそれを意に介さず、水晶柱の前へ立った。

そのまま片手をかざし、水晶へ触れた。


──────瞬間


膨大な魔力が水晶へ流れ込んだ。

空気が震える。

白銀色だった水晶が、みるみるうちに深い紺色へ染まっていく。


そして……

────────【358】

巨大な数字が空中へ浮かび上がった。


「さ、さんびゃくごじゅぅう!?」

「う、うそだろ……!?」

生徒達が一気にざわめき始める。

しかし、その大衆の反応をもろともせずアルケーは鼻で笑った。

「当然だ」


彼は我が物顔で元の場所へと戻っていく。

周囲の視線など、最初から気にもしていない。 むしろ、当然の反応だとすら思っている。


(普通の魔術師の平均魔力量は100から150程度。350超えなんて、化け物クラスじゃないか……)

誰かが心の中で呟く。

この魔法世界は、通常の魔術師、更に学生となると100〜150程度が普通と言われている。むしろ150付近もあれば優秀な数値とも捉えられる。


(なんて奴だ……。セフィラの魔術師の平均魔力量は400前後。アルケー…こいつぁとんでもない逸材になりそうだ)

教師の一人が呟く。


セフィラの魔術師。

それは、都市を滅ぼした実績のある、この世界では頂点とされる八人の魔術師。

その領域へ、彼は既に片足を踏み入れていた。


ウィンヴェルは小さく目を見開く。

(すげぇのが来たな……)

驚きと同時に、静かに口角が上がる。


そして静かに、次を促した。

「次」

それから測定は淡々と進んでいった。

118。

82。

99。

103。

平均付近の数値が並ぶ。


そんな中

「はーい!じゃあ、次いきまーす!!」

元気な声と共に、軽やかな足取りで一人の少女が前へ飛び出した。

華奢な身体に紫色の髪。そして金色フレームの丸メガネ。しかし、その文学少女のような容姿とは裏腹に雰囲気は明るい。


彼女はくるりと振り返りながら見えない誰かへ話しかけ、笑う。

「大丈夫大丈夫!それに、どうせやんなきゃいけないし」

周囲の生徒が見えないものに話しかけている彼女の姿に少し不思議そうな顔を浮かべるが、当の彼女はそのまま水晶へ手を触れた。


───────瞬間


紫色の光が水晶内部へ広がる。


────────【338】


「っ!?」

ざわめきが広がる。

「また……300超え…………」

「さっきの俺様男のレベルがもう1人!?」

アルケーの時と同様、周囲がざわめく。

その反応に、彼女は「えへへー」と、まるでアルケーとは対照的な姿で少し嬉しそうに笑いながら戻っていく


続いて

「そろそろ行こうかしら」

静かな声。

水色の美しい髪を揺らしながら、一人の少女が前へ出た。

凛としており、歩くだけで空気が静まるような、不思議な存在感。

彼女は水晶を一度見上げると、そのまま静かに水晶へ触れた。

そして

宇宙を思わせる程の深く、そして美しい紺色の光が水晶全体を包み込む。


───────【382】


空気が止まった。

「は……?」

「また300超え……あの俺様男を上回る数値じゃねぇか…………」

誰もが驚愕し、震える。

彼女は騒ぎなど気にも留めず、ただ静かに元の位置へ戻っていった。


「ねえねえ!!」

紫髪の少女が元気で、でもどこか不思議そうな顔で一人の少年を見つめる

「行かないのーー!?」

「ぅ……ぼ、僕……?」

縮こまっていた少年が、びくりと肩を震わせる。

リゼットの隣の席で震えていた少年だ。


「む、無理だ……絶対変な数字出る…もう早退したい……」

ぼそぼそと呟きながら、しかし断りきれない性格の彼は恐る恐る前に出る。

周囲の誰もが、その姿に「大したことないだろ」と言うような表情を浮かべていた。


彼は少し震えた手で恐る恐る水晶に触れる。

次の瞬間、灰色の光が水晶へと広がった。


────────【347】


「また300超え!?」

「今年どうなってんだよ、化け物だらけじゃねぇか……!」


しかし、他の生徒達よりも彼が一番驚いていた。

「ひっ…み、みんなが見てる…………」

そのまま逃げるように元の位置へ戻っていく。


そして淡々と測定は続き、最後

「………………」


静寂のまま、リゼットが前へ出る。

歩くだけで空気が静まる。

誰もが、無意識に彼女を見ていた。

リゼットは何も言わない。表情も変わらない。

ただ静かに、水晶へ手を触れた。


その瞬間、恐ろしくも凄まじい程の、そして透き通るような綺麗な黄金色の光が噴き上がった。

空気が震える。

水晶全体へその光が走る。


そして──────

バキッ

水晶柱へ亀裂が走った。

リゼットは少しだけ口を開くが、ただ黙って亀裂の入った水晶柱を見つめていた。


誰も声を出さない。いや、声すら出せなかった。

生徒達だけではなく、五人の教師達すらもその光景にただ沈黙を貫くことしかできなかった。


つまり、測定不能レベルと言うことだ。

この水晶が測れる魔力量上限は500、つまり、それ以上。

「……は?」

誰かが呆然と呟く。

教師ですら言葉を失っていたが、次第に我に返る。


「測定不能!?」

「やっぱおかしいだろ……!今年の奴ら何者なんだよ!!」

その異常な光景に、再び周囲がざわめく。

(今年は豊作だな……。アルケー、シキ、スピカ、ヴェーター、そしてリゼット。150は愚か、まさか300超え、しかも一人は測定し切れないレベルのやつまでいるとは。………………こりゃ面白くなりそうだ)

ウィンヴェルが驚きと期待の表情を浮かべる。


しかし

ただ一人、アルケーだけは違った。

「…………チッ」

と、強く舌打ちする。

その視線は鋭く、リゼット達を睨みつけている。


(ふざけるな………………)


拳を強く握り、震える。


(俺の他に天才がいるだと? 天才が、四人も………………)


シキ

スピカ

ヴェーター

そしてリゼット


(しかも、あの女二人の魔力量は俺以上。更にはあの金髪の無表情女の魔力量は測定不能レベルだぁあ……?)

アルケーの表情が歪む。

悔しさ。

苛立ち。

嫉妬。

そして同時に、強烈な対抗心。


(ふざけんじゃねぇぞ……俺は……俺なら………………!!!)


その瞳には、既に敵を見るような色が宿っていた。


「これで全員測ったな」

ウィンヴェルは静かに呟く。

「じゃ、全員測り終えたところで次のテストだ!」


演習場全体へ巨大な魔法陣が展開される。

床が光り、空間そのものが歪み始める。

そして、まるでどこか別の場所に転送されたかのように景色が切り替わった。


生徒達の視界に広がったのは、広大な別の演習場。

教師の一人による空間魔法だ。

ざわめく生徒達を見渡しながら、ウィンヴェルが口元を吊り上げる。


「さて」

彼は次の試験内容を告げようと口を開いた。

「二つ目のテストは…………!!」

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