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WitchDoll〜傀儡人形は夢を見る〜  作者: うつろ
Chapter-2【魔法大祭編】
17/34

〈2-7〉最初の攻略者

迷宮初期地点。

そこにはスピカとヴェーターがいる。

周囲には二人を狙いに来たであろうチームの生徒数名が宙に浮かび、まるで円周を移動するかのように回っていた。

そして、スピカの手の中には今、リゼットとシキが入手した鍵が握られていた。

「やっぱり、推測通りね」

スピカは静かに微笑む。

「す、すごいや……。鍵を持った瞬間、突然転送が始まるなんて」

スピカの推測は、最初から最後まで全て正しかった。

観測者としての瞳、魔法の性質、そして彼女の情報整理能力。

スピカは、試合が始まる前から既に未来を見据えていたのだ。


「さてヴェーター、会場に戻るわよ」

「やった、一位通過だね…!」

二人の身体が光に包まれる。

そして、そのまま迷宮から消えた。



─────────────────



「どういうことだ無表情女!説明しろ!!」

「…………………無理」

リゼットは即答する。

「なら転送される前に殺らせてもらうよ!」

メルティが即座に魔法を展開する。

だが

「うちらを倒しても無理だよ!!だってうちら鍵持ってないもん!!!!!」

シキが叫ぶ。

その瞬間、メルティとアルケーの動きが止まった。

「なるほど……してやられたってわけか」

メルティは苦笑し、炎を消す。

鍵を持っていないと言う発言、出口が見当たらないのに突然始まった転送。

この状況を彼はすぐに理解した。

「どうやら一位通過は君たちみたいだね。さて、僕は鍵を探しに戻るとするよ」

そう言い残し、迷宮の奥へ消えていく。


「ふざっけんな!!!」

アルケーだけが叫んでいた。

「鍵も出口も無ぇのに出れるわけねぇだろうが!!!一位になるのは俺だ!勝手に出ようとしてんじゃねえっ!!!」

彼はなおも二人に、勝利に喰らいつこうとする。

だが、もう遅かった。

アルケーの魔法が届く寸前、リゼットとシキの姿は光と共に消えた。


静寂の中、取り残されたアルケーは、その場で拳を握り締める。

「………くそが!!!!」

行き場のない感情が彼の心を締め付ける。

震える拳を、彼はただ空へ叩きつけることしかできなかった。




───────────────




魔法大祭会場。

巨大なモニターに映し出される迷宮内部。

「さて……そろそろだな」

その光景を見つめていた女性教師が口元を歪める。

スピカの知力、シキの直感、リゼットの判断。

そしてメルティの実力。

その全てを見届けていた。


突如、会場中央に巨大な魔法陣が浮かび上がる。

「おっ!?来たぞ!!」

「攻略者だ!!」

観客席がざわめく。

教師は即座に表情を変え、声を張り上げた。

「ついに来ましたぁぁぁぁ!!!!」

歓声が爆発する。

「この難解な迷宮を攻略し、最初にここへ辿り着いたチームはぁーーー!!!!」

魔法陣が眩く輝き、その中央が光に包まれる。

「このチームだああぁぁぁぁ!!!!」


その瞬間、光の中から四人の生徒が現れた。

リゼット、シキ、スピカ、ヴェーターの四人だ。

「やったぁぁぁ!!!!!一番だよ!!一番!!!!!!」

シキが飛び跳ねる。

「う、うん……!」

ヴェーターも思わず笑顔になる。

「ふぅ……上手くいったわね」

スピカが微笑む。

「……………………うん」

リゼットも小さく頷いた。


その瞬間、会場は歓声に包まれた。

「すげぇええ!もう攻略したのか!?」

「何者なんだあいつら、一年だろ!?」

「化け物じゃねぇか!!」

観客達は興奮し、ざわめく。

だが、その中には別の視線も存在する。

弟子を探す魔術師、大陸各地の研究者、そして……

魔法の頂へ辿り着いた者達。

彼らは歓声を上げず、ただ静かに四人の実力を見つめていた。




────────────────────




迷宮内部。

「さて、そろそろ出ようか」

メルティは既に鍵を持って初期地点まで到達していた。

そこには満身創痍のアルケーの姿もある。

どうやら二人はここで戦闘になったらしい。そして、この状況からわかる通り、アルケーはメルティに手も足も出なかったようだった。


膝をつき、拳を握り、ただメルティを睨みつける。

「くそ!!くそが!!!!何なんだよテメェ!!!」

ただ怒鳴るアルケーに、メルティは静かに答える。

「何って言われても、君が襲いかかってきただけじゃないか?だから僕もそれに答えた。それだけだよ」

「くっ……」

悔しさに歯を食いしばるアルケーに、メルティは続ける。

「君は自分を過信しすぎだ。もっと頭を冷やしなよ、慢心ばかりしていたら、届くものも届かないよ?」

そう言い残すと、メルティのチームは光に包まれて消えた。


静寂の中、再びアルケーだけが残る。

リゼットにも、メルティにも届かなかった。

自分は天才だと、誰よりも優れていると、ずっと確信していた。

だから自分は一番だった。入学したその時から、永遠にこの学園の頂点に立つ存在だと思った。

でも、現実は違った。

どれだけ自分が天才と呼ばれていたとしても、その先を進む者達が残酷な程にそれを教えていた。


「過信してるのも……俺が弱ぇことも……」

アルケー拳を握りながら呟く。

その拳には、ゆっくりと血が滲んでいた。

「自分が一番よく知ってんだよ……」


彼は震えた足で立ち上がる。もう歩くだけで倒れそうな身体を、無理矢理にでも動かす。

「終われねぇ……」

悔しさも、惨めさも、全部抱えたままアルケーは前を見る。

「超えるんだよ!!」

リゼットも、メルティも、全員を超えて一番になる。

誰よりも高く、誰よりも先へ。

その瞳に再び闘志の炎を灯し、アルケーは一人迷宮の奥へと歩き出した。

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