〈2-7〉最初の攻略者
迷宮初期地点。
そこにはスピカとヴェーターがいる。
周囲には二人を狙いに来たであろうチームの生徒数名が宙に浮かび、まるで円周を移動するかのように回っていた。
そして、スピカの手の中には今、リゼットとシキが入手した鍵が握られていた。
「やっぱり、推測通りね」
スピカは静かに微笑む。
「す、すごいや……。鍵を持った瞬間、突然転送が始まるなんて」
スピカの推測は、最初から最後まで全て正しかった。
観測者としての瞳、魔法の性質、そして彼女の情報整理能力。
スピカは、試合が始まる前から既に未来を見据えていたのだ。
「さてヴェーター、会場に戻るわよ」
「やった、一位通過だね…!」
二人の身体が光に包まれる。
そして、そのまま迷宮から消えた。
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「どういうことだ無表情女!説明しろ!!」
「…………………無理」
リゼットは即答する。
「なら転送される前に殺らせてもらうよ!」
メルティが即座に魔法を展開する。
だが
「うちらを倒しても無理だよ!!だってうちら鍵持ってないもん!!!!!」
シキが叫ぶ。
その瞬間、メルティとアルケーの動きが止まった。
「なるほど……してやられたってわけか」
メルティは苦笑し、炎を消す。
鍵を持っていないと言う発言、出口が見当たらないのに突然始まった転送。
この状況を彼はすぐに理解した。
「どうやら一位通過は君たちみたいだね。さて、僕は鍵を探しに戻るとするよ」
そう言い残し、迷宮の奥へ消えていく。
「ふざっけんな!!!」
アルケーだけが叫んでいた。
「鍵も出口も無ぇのに出れるわけねぇだろうが!!!一位になるのは俺だ!勝手に出ようとしてんじゃねえっ!!!」
彼はなおも二人に、勝利に喰らいつこうとする。
だが、もう遅かった。
アルケーの魔法が届く寸前、リゼットとシキの姿は光と共に消えた。
静寂の中、取り残されたアルケーは、その場で拳を握り締める。
「………くそが!!!!」
行き場のない感情が彼の心を締め付ける。
震える拳を、彼はただ空へ叩きつけることしかできなかった。
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魔法大祭会場。
巨大なモニターに映し出される迷宮内部。
「さて……そろそろだな」
その光景を見つめていた女性教師が口元を歪める。
スピカの知力、シキの直感、リゼットの判断。
そしてメルティの実力。
その全てを見届けていた。
突如、会場中央に巨大な魔法陣が浮かび上がる。
「おっ!?来たぞ!!」
「攻略者だ!!」
観客席がざわめく。
教師は即座に表情を変え、声を張り上げた。
「ついに来ましたぁぁぁぁ!!!!」
歓声が爆発する。
「この難解な迷宮を攻略し、最初にここへ辿り着いたチームはぁーーー!!!!」
魔法陣が眩く輝き、その中央が光に包まれる。
「このチームだああぁぁぁぁ!!!!」
その瞬間、光の中から四人の生徒が現れた。
リゼット、シキ、スピカ、ヴェーターの四人だ。
「やったぁぁぁ!!!!!一番だよ!!一番!!!!!!」
シキが飛び跳ねる。
「う、うん……!」
ヴェーターも思わず笑顔になる。
「ふぅ……上手くいったわね」
スピカが微笑む。
「……………………うん」
リゼットも小さく頷いた。
その瞬間、会場は歓声に包まれた。
「すげぇええ!もう攻略したのか!?」
「何者なんだあいつら、一年だろ!?」
「化け物じゃねぇか!!」
観客達は興奮し、ざわめく。
だが、その中には別の視線も存在する。
弟子を探す魔術師、大陸各地の研究者、そして……
魔法の頂へ辿り着いた者達。
彼らは歓声を上げず、ただ静かに四人の実力を見つめていた。
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迷宮内部。
「さて、そろそろ出ようか」
メルティは既に鍵を持って初期地点まで到達していた。
そこには満身創痍のアルケーの姿もある。
どうやら二人はここで戦闘になったらしい。そして、この状況からわかる通り、アルケーはメルティに手も足も出なかったようだった。
膝をつき、拳を握り、ただメルティを睨みつける。
「くそ!!くそが!!!!何なんだよテメェ!!!」
ただ怒鳴るアルケーに、メルティは静かに答える。
「何って言われても、君が襲いかかってきただけじゃないか?だから僕もそれに答えた。それだけだよ」
「くっ……」
悔しさに歯を食いしばるアルケーに、メルティは続ける。
「君は自分を過信しすぎだ。もっと頭を冷やしなよ、慢心ばかりしていたら、届くものも届かないよ?」
そう言い残すと、メルティのチームは光に包まれて消えた。
静寂の中、再びアルケーだけが残る。
リゼットにも、メルティにも届かなかった。
自分は天才だと、誰よりも優れていると、ずっと確信していた。
だから自分は一番だった。入学したその時から、永遠にこの学園の頂点に立つ存在だと思った。
でも、現実は違った。
どれだけ自分が天才と呼ばれていたとしても、その先を進む者達が残酷な程にそれを教えていた。
「過信してるのも……俺が弱ぇことも……」
アルケー拳を握りながら呟く。
その拳には、ゆっくりと血が滲んでいた。
「自分が一番よく知ってんだよ……」
彼は震えた足で立ち上がる。もう歩くだけで倒れそうな身体を、無理矢理にでも動かす。
「終われねぇ……」
悔しさも、惨めさも、全部抱えたままアルケーは前を見る。
「超えるんだよ!!」
リゼットも、メルティも、全員を超えて一番になる。
誰よりも高く、誰よりも先へ。
その瞳に再び闘志の炎を灯し、アルケーは一人迷宮の奥へと歩き出した。




