〈2-3〉解への迷宮
「リゼットーーー!!鍵どこにあるのぉーー!!うち全っっ然見つからないよー!!」
「……………………わからない」
迷宮内に響き渡るシキの声に、リゼットは静かな声でそう返す。
二人は迷宮を歩き回りながら、考え得る限りの方法で鍵を探していた。
壁の隙間を覗き、床を叩き、瓦礫を退け、岩を砕き…。
リゼットもまた、傀儡魔法を使って人形を動かし探し回る。
だが、どれだけ探し回っても一向に見つかる気配が無かった。
「うぅ……ほんとにあるのかなぁ……」
シキが頬を膨らませる。
その時
「どうしたのー!?」
突然、シキが誰もいない空間へ向かって声をかけた。
そして数秒後、その視線はリゼットへと向けられる。
「リゼット!左の方から別チーム来てるって!!今この子が教えてくれた!!!」
「………………わかった」
リゼットは即座に方向を変える。
二人はその場の探索を切り上げ、反対側の通路へと走り出した。
実は、シキは生まれつき霊感が強い。
そのため、幽霊を視認し交信することができるという特殊な力を持っている。
この迷宮探索でリゼット達が敵チームとの遭遇を避け続けられたのも、シキが幽霊と交信し、周囲を漂って近くに来ている敵チームの位置を教えてくれていたからである。
敵を避ける、探索する、また避ける。その繰り返しをしながら探索を続けてきた。
だが…
「………………………」
長時間迷宮を歩き続けても、鍵は見つからなかった。
それどころか、他チームが鍵を見つけたという知らせすら一向に流れてこない。
リゼットはその場に立ち止まり考え込む。
そして、彼女の瞳がゆっくりと迷宮内を見渡した。
「リゼットどうしたのー!?」
「…………………変」
「え!?変!?どこが!?」
シキは慌てて周囲を見渡す。
だが何か気になるような箇所はどこにも存在しない。
「……………………鍵、多分無い」
「えぇっ!?どういうこと!?」
「……………………探しても見つからない」
リゼットは静かに指揮を見つめる。
「……………………多分、別の方法」
その言葉と共に、リゼットは一つずつ情報を整理していく。
そして、リゼットはある一つの”違和感”に気付き始めた。
未だ誰一人として鍵を発見していない現状。
おかしい。
二人と別れて長い時間が経つが、誰一人として鍵が一向に見つけられていない。
運が良い者や探索能力に長けた者であれば、既に一つくらい見つかっていてもおかしくない。
なのに、誰も見つけられていない。
つまり……
”探す”という行為そのものが間違っているのではないか。
「…………………………」
リゼットの脳裏に、試合開始前の言葉が蘇る。
『鍵を入手し、出口を見つけ脱出する』
その瞬間、何かに気が付いたかのようにリゼットの目が見開かれる。
「…………………………入手」
そう。あの教師は一度も、”鍵を見つけろ”なんて言っていなかった。
鍵は探すものではない、探したところでどこにも見つからない。
別の手段によって”入手する”ものだと。
「リゼット!何かわかったの!?」
「……………………うん」
リゼットは静かに頷く。
「…………鍵は探せない。でも、鍵はどこかにある」
「え!?え!?どういうこと!?」
「……………………………」
だが、そこで言葉が止まった。
違和感には気付けた。しかし、その先が見えない。
見つからない鍵を、どうやって入手するのか。
まず”作る”という方法だが、鍵を完全再現するには材質も構造もわからず、何より見た目以外の情報が無さすぎる為不可能。
探知して探せるものではない。隠し部屋がある様子は無い。
ならばどうやって入手するか。
リゼットが再び思考を巡らせる。
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────────────………………
「…………………魔法」
再び何かに気が付いたリゼットが小さく呟く。
この迷宮探索、本来なら魔法など必要無くても突破できる内容なのだ。
鍵を手に入れ、出口を見つけ、脱出する。
それだけなら、魔法が無くても身体能力や洞察力だけでも成立してしまう。
しかし、今行われているのは魔法大祭。
魔法が不要な内容など、あり得るだろうか。
「…………………シキ」
「なになにー!?」
「………………多分、魔法」
シキが目を丸くする。
「魔法!!?」
「…………何か魔法を使う」
その考えが正しいという保証はなかった。それでも、バラバラだった情報が少しずつ一つに繋がり始めている感覚は確かにあった。
「魔法かぁ〜!!なんの魔法がいいんだろうね!!!」
シキは目を輝かせながら、”魔法を使う”想像を膨らませる。
リゼットは沈黙の表情で、更に考え続ける。
魔法を使うことはわかった。
だが、何をする?
鍵を探す魔法でも、作る魔法でもない。
「…………………………」
リゼットの考えは、確かにあと一歩のところまで来ていた。
だが、決定的な答えに辿り着くまでは、あと一つ。何かが足りない。
リゼットは静かに目を閉じ、再び思考を巡らせた。
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一方その頃
「……あの二人、ちゃんと鍵見つけられるかしら」
迷宮のスタート地点で待機を続けるスピカが、小さく呟いた。
静寂に包まれる中、彼女は壁へ寄りかかりながら天井を見上げる。
「リゼットはともかく、シキは勢いで動くタイプだから少し心配になるわ……」
流石のスピカも、少し心配の様子だ。
「き、きっと大丈夫……だと思う」
ヴェーターが不安の混じった声で控えめに返す。
その言葉を聞くと、スピカは小さく息を吐いた。
自分が立てた作戦。
全てが噛み合えば、ほぼ完璧に近い作戦。
しかしそれは、逆に言ってしまえばどこか一つでも崩れればその瞬間全てがドミノ倒しのように崩れて行く。
成功する確証無い。今の自分に出来ることは、二人を信じること以外に無かった。
「……そうね」
スピカは静かに目を閉じる。
「あの二人、強い子だから」
そう呟くと、彼女はそっと自分の胸元に手を置いた。




