↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WitchDoll〜傀儡人形は夢を見る〜  作者: うつろ
Chapter-11【マンブリーノ編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

125/127

〈11-6〉重力の脅威

突如として発動された重力魔法。

そして、ただならぬ魔力。

街の人々が倒れる中、リゼットはその方角へと向かう。


時間停止を使う方法もある。しかし、それだと魔力の流れも止まってしまうため探すのが困難になる。

上空から探すしか手は無い。


探す対象、それは唯一この中で立っていられる者。


「………………いない…」


リゼットはそれを見つけることが出来なかった。

たしかに魔力のある上空へとたどり着いている。しかし、立っている者などどこにも存在していなかった。


「………………重力……」


リゼットは考える。

重力魔法、それは文字通り重力を操る特異魔法の一つ。


自分ならどう使うか。

重力を操れるのなら、自分ならこの状況をどう打破するか。


建物の中に隠れるか、自分も重力魔法にかかったフリをするか。

いや、どれも違う。

これほど広範囲に広がる重力魔法を使える者が、そのような姑息な手を使うはずが無い。


リゼットは上空でただひたすら考え、そして

「……………まさか」

何かを思いついたように目を丸くする。


その瞬間

「もう気付いたんだ。凄いよ君」

声は、頭上から聞こえた。

「…………っ!?」

見上げるよりも早く、凄まじい圧力がリゼットの身体を捉える。


次の瞬間、彼女は地面へと叩き落とされていた。


「………………うっ…」

リゼットは再び演算反転を自身にかけ、何とか立ち上がる。

そして上空を見上げると、彼はそこに浮いていた。


「…………やっぱり、無重力」

リゼットは既に暴いていた。

重力を操れる、それはつまり無重力の状態にもできるということ。

自分だけを無重力の状態にし、既に宙へと浮かんでいたことを。


「初めまして」

彼はリゼットを見下ろしながら声を放つ。


「僕の名前はアディシェス。年齢は三十一歳で血液型はA型。身長は百六十七センチで体重は五十三キロ。アーカーシャ教団第三組織、クリファの魔術師の第四席だ。趣味は特にないし、好きな物も嫌いな物も特に何も無い。得意な魔法は重力魔法。ここまでは覚えてくれたかな?」


長ったらしい自己紹介を前に、リゼットはまるで耳から耳へと流すようにポツンとした表情を向けた。


「あれ、もしかして聞いてなかったかな。じゃあもう一回言うね。大事なことだからちゃんと伝わるまで言わないといけないからね。僕の名前は……」


「………………もう、覚えた」


そう言うとリゼットはただ静かにアディシェスを見つめる。

たしかにあの長々とした自己紹介を全て覚えてる訳でもないし、ほとんど聞いていない。


ただし、たった一つだけ聞き捨てならない言葉があった。


クリファの魔術師。


セフィラの魔術師を奪われ、オルド国王を倒されたアーカーシャ教団は、既に新たなる下部組織を設立させていた。


「そうかそうか、それは良かったよ。君は人の話がちゃんとに聞ける人で僕はすごく助かった。すごく助かるし、君ができた人なんだってすごくわかるよ。うんうん、そうだよそうだよ、君は素敵な人だよ」


「……………………なに、この人」


まるで意味がわからない。

ただ自分のことをベラベラと喋るだけで、それを聞いているだけでやたらに褒めてくる。


変わった人だ。

だがそれ以前に、彼はアーカーシャ教団の者でもある。


リゼットはアディシェスを睨みつけると、上空にいた彼の表情が変わった。


「なになになになになになになに?その目、なに?まるでこれから僕のことをぶっ殺してやろうみたいな目してるけど、もしかしてここで僕と戦おうとでも思っているのかい?こんな街の中で、こんなに沢山の人がいる中で、僕とぶつかるつもりかい?それはやめておいた方がいいと思うけどな、君にとっても、僕にとっても。利益なんて何もないよ」


アディシェスは途端に表情を変え、言う。

しかし、そんな彼の言葉など流し、リゼットは人形を展開した。


「………………傀儡魔法《ネウロパトゥス》・時ノ停止(テンプスマネット)」


リゼットは時間を停止させる。

止まった時間の中で動けるのはリゼットだけだ。


そして、三十体の人形から複数の魔法が同時に放たれる。

各属性の魔法が、停止したアディシェスの直前で止まる。


「………………解除」


その言葉と共に、時間は再び動き出した。

しかし、アディシェスへと向けられた魔法は全て四方八方へと飛び散っていってしまった。


「……………………えっ」

時間は止めた。三十もの魔法を彼の直前にまで放っていた。

それなのに、時間が動き出した瞬間、その魔法はまるで跳ね返るかのように逆方向へと飛んでいく。


そのいくつかはリゼットの複製された人形に当たり、五体ほどの人形は消滅してしまう。


「僕はやめといた方がいいって言ったんだけど、もしかして聞こえてなかったのかな。まぁ仕方ないか、人間失敗することなんてよくあるよね。うんうん。それじゃあもう一回言うよ、今度はちゃんと聞いてね。君はここで僕と戦うべきじゃない。ここじゃ色んな人に被害が出ちゃうし、そもそも君じゃ僕に勝てないからだ」


リゼットはアディシェスの話など微塵も聞いていない。

あの時なぜ魔法が跳ね返されたのか、ただそれを考えていた。


しかし、答えはすぐに見つかるものだった。

それはとても単純なもの。重力魔法で自身へと向けられた攻撃は全て逆方向へと向かうように、自身の周囲に自身とは逆向きに強い重力を放っていた。


それならば、まず重力魔法を何とかしなければならない。


「………………演算反転」


リゼットはアディシェスの纏っている魔法を消すと

「あへ?」

と、魔法を解除されたアディシェスはそのまま地面へと落下して行く。


しかし、彼はすぐさま再び重力魔法を展開し、地に着く前に再びその身体を浮かせた。


演算反転は魔法演算を逆算して消滅させるだけのリゼット特有の技。つまり、魔法そのものを封印する訳ではなく、例えそれを食らったとしても魔法は何度でも放てる。


「ふぅ、危ない危ない。君、今のは流石に危険だよ、このまま僕が地面に落下して死んだりでもしちゃったらどうするのさ?僕には大切な仲間が沢山いるって言うのに、君は僕を殺すことでたくさんの人を悲しませることになるんだよ?そういうことはちゃんとわかった上で行動して欲しいな」


「………………なら、重力魔法、解除して」


まるで自分のことしか考えていないようなアディシェスの言葉に、リゼットはただ一言を返す。

しかし、彼はリゼットの言葉など受け入れるつもりすらなかった。


「この魔法を解除して欲しい?何を言っているんだい君は、この魔法は僕が大切な大切な仲間にやってほしいって頼まれたからやってるんだよ。この魔法には誰かの思いが乗ってるんだよ、わかるかな?これは僕一人の独断専行じゃないの。みんなの思いを背負った魔法なの。それを解除しろだなんて、心優しい僕に出来るわけないじゃないか」


眉を顰め、首を横に振りながら告げるアディシェス。

そして目付きを変え、再びリゼットを見下した。


「むしろ、そういう君の方が僕は悪人だと思うんだけどな。それにさっきから人の言葉を理解してくれないし、言ったことを守ってすらくれない。僕はみんなのことを思って言ってるのに、君はそれを受け入れない。僕目線で申し訳ないけれど、万死に値するよ、それは」


そう言うとアディシェスは両手を広げ、そして思い切りその両手を合わせた。


「………………っ!?」


瞬間、リゼットは左右からとてつもなく大きな何かが迫ってくる感覚に襲われた。

大きな重力が、リゼットを推し潰そうとしていた。


「………………重い……」


リゼットは辛うじて指を動かし、人形を自身の周囲へと配置して防御魔法を展開する。

しかし、強力な重力魔法を相手に効力は薄く、リゼットはただ左右から来る魔法に押しつぶされていく。


「ほらほらほらほらほらほらほら、僕の言うことを聞かないからこうなるんだよ。あーあ、このまま君は押しつぶされておしまいってわけだ。あ、そうだ。殺す前に君の名前だけでも聞いておきたいな。君、なんて名前なんだい?」


「………………あなたに教える名前なんて、無い」


リゼットはそう答えると、左右からの魔法に演算反転をかける。

だが、アディシェスは既に対策していた。

消された直後、間髪入れずに重力魔法を重ねていたのだ。


演算反転で魔法を消したところで再び次の重力魔法が彼女を襲う。


「……………………っ」


リゼットを襲う重力魔法が彼女を押し潰すまで、もう長くはないだろう。

このままでは身体が壊れてしまう。


耐えきれない程の重さに必死に耐えながら、リゼットは考える。

演算反転も無駄、本体を攻撃しようにも重力によって跳ね返される。


時間魔法で時を止めることも考えた。だが、そもそもここから抜け出すこと自体が難しい。


リゼットはこの状況を打破することを考えるだけで精一杯だった。

どの魔法を使えば抜け出せるか。

どの方法を使えばこの状況を打破できるか。


万策が尽きたと思われた、その時


そして

「………………あっ」

リゼットは一つの方法を思いた。


今まで試したことの無い方法。けれど、これが出来るのなら状況は一瞬にしてひっくり返るものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。